4日、エブリーが東証グロース市場に上場した。公開価格の230円を27.83%上回る294円の初値を付け、240円で引けた。吉田大成社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

―初値の受け止めは
初値が公開価格を上回る結果になったことは、投資家から一定の期待を寄せてもらった証だと受け止めている。この期待に応えられるよう、引き続き事業成長と収益拡大により一層取り組んでいきたい。
―IPOに何を期待しているのか
資金調達手段の多様化や、知名度向上による競争力の強化、社会的信用の獲得による取引先との関係性強化が主な狙いだ。特に、成長戦略の1つであるリテールメディアの領域は、拡大領域だと見ている。食品卸や小売との長期的な連携を前提とするなかで、上場企業の透明性や信頼性が、企業間の取引をより一層スムーズにすると考えている。
―調達資金を採用活動費および人件費に充てるということだが、今後どのような人材の採用を強化し、それによってどのように成長へ繋げていくのか
営業とエンジニアの2つの職種を特に強化していく。各種広告商品の拡販や提案力の強化が売上成長の肝になるという意味で営業職。エンジニア職は、データ基盤の拡大や新たなソリューションとプロジェクトの開発を強化していくことによって、他社にはない優位性を作っていける。
―上場を意識したのはいつごろか。また、上場するに当たって特に注力したことは
上場については常に意識していた。本格的に意識し始めたのは2年ほど前。当初いろいろ計画があるなかで、「デリッシュキッチン」のサービスをまず展開してきた。ただ、広告主のニーズとしても、オンライン上で広告を出稿するのであれば、購買証明でオフラインとデータを突合することなどを求められることが多かった。6年前ぐらいからリテールメディアを特に強化してきた。
そのなかで、オンラインとオフラインの領域で一定の基盤を作ることをやり切ろうと考えて、2年ぐらい前にスーパーからPOS(販売時点情報管理)のデータをもらった。基盤の成果が出始め、そこから売上成長もさらに一段上がってきており、しっかり収益化していけると見たタイミングで、上場を意識し始め、より強化した。
―生成AIが人々のレシピ検索の仕方を変えているなかで、どのような施策を打ち出していく予定か
生成AIを基にしてレシピを検索する人、それ以外の料理全般のことを検索する人も増えてきているのは、足元のデータでも見えている。一方で、データ自体の強み(があり)、プロが作ったコンテンツで、ユーザーからも評価されているし、AIからも高い評価を得ている。こういったAIフレンドリーなサイトであることは、どちらかに分散するというよりは、両立する部分だと思っている。引き続きレシピを強化していきたい。
一方で、レシピを探す人の多くが、レシピ名や食材で検索する。今後は、生成AIのアプリ上で検索する人からは、より複雑なキーワードでレシピを探したいとか、栄養素まで考えて検索したいというニーズが増えてくると見ている。我々としても、サービスがほかに流れないように自社の「デリッシュAI」で、生成AIのプラットフォームを上回るような回答をしていけるかが肝だと考えている。
この肝となる部分について、1つは多くのユーザーのたくさんの行動データを持っていることだ。例えば、普段かさまし料理を気に入っている人について、それ以外でも「こういう料理が好きである」などのデータを我々は持っているが、生成AIは持っていないため、このような過去のデータ資産が使える。
もう1つは、ユーザーのファーストパーティデータ。ピーマンが苦手であることや、家族の構成をいちいち生成AIに覚えさせる前に、我々のところに入れてもらうことによって、それに基づいて最適な回答を出すことができるだろう。皆1人1台スマホを持っているが、そのなかに料理の専門家が1人いる世界観を作りたい。料理のプロに相談したいときには「デリッシュキッチン」のアプリを立ち上げてもらう世界を作ることによって、ほかの生成AIのアプリとの違いをしっかり明確に打ち出していきたい。
―顧客単価が1000万円以上のロイヤル顧客をどう増やしていくのか。また、継続的に活用してもらうことが重要になると思うが、競合との差別化をどのように伸ばしていくのか
独自の食生活行動ビッグデータが我々の強みだ。オンラインのデータの所有に加え、オフラインについては、各店舗との連携で購買データを直接もらっている。全量データをもらっているサービス会社はいない。このような状況下で、全てのデータを基にしながら広告効果を可視化でき、広告主が安心して出稿してもらえることが強みだ。効果を、POSデータと突合しながら見られるプラットフォームであり、それを多くのユーザーのデータを基にして検証できるのが1番の優位性になると思う。
2つ目が、オンラインのメディアのみならず、オフラインの領域でのデジタルサイネージの活用だ。我々は大型のサイネージを各店舗に導入している。その高い視認性が、大きな違いとなっている。我々のサイネージに(広告を)出すと店舗でも売上がしっかり伸びることを確認できている。同じようなソリューションがあるが、データに基づきながら分析できるかと、効果を出せるアセットをしっかり持っているかが大きな違いになると考えている。
―2026年から営業利益が黒字だが、今後の利益成長のイメージについて
足元の2期の販管費は、社内の一定の規律に基づいてほぼフラットな状態で、売上成長を実現できている。今後も販管費は、一定のコントロールをして、引き続き高い売上成長を作っていく。近い将来、営業利益率20%を標準として定めている。
―大きい投資は一巡したのか
そうだ。上場の手前でしっかりプラットフォームとしての基盤を作り切っていることが大きな要因となっている。その結果として、全体の人件費に対する売上生産性が高まり続けている。顧客単価の増加に伴って、売上生産性も上がっている状況だが、さらに拡大を目指していけると感じている。社内でもAIの利活用が進んでおり、それに伴って工数を圧縮しながらできているのが大きなポイントだ。
―株主との関係についてだが、KDDIや伊藤忠食品などの事業会社とは、これまでどういう関係があり、今後どのようになるのか。また、有力なベンチャーキャピタルは、どのように取り入れることができ、当社の成長にどのような貢献をしてくれたのか
企業については、伊藤忠食品や加藤産業などを中心とした食品卸と、KDDIなどの大きく2つに分かれる。伊藤忠食品や加藤産業などの食品卸は、足元のリテールメディアの拡大に向けて、全国のスーパーとの営業網を使わせてもらっている。小売のDX化、リテールメディア化の支援と、デジタルの販促をより一層マーケット拡大していくことをパートナーシップを組みながら、継続していきたい。
KDDIについては、当初、KDDIのECサイトにおけるライブコマース事業において、ライブコマースの共同運営という形で出資してもらった。これは2026年9月末でサービスをクローズする予定になっているが、引き続き、KDDIとはそれ以外の領域についても、新たなアライアンスを組んだり、連携を強化していくという話を進めており、引き続き事業連携を模索していく。
ベンチャーキャピタルについては、創業当初にまず出資してもらい、その後に事業会社に出資してもらった。「デリッシュキッチン」のサービス拡大に向けた様々な知見やアドバイス(の提供)など、大手の企業とのアライアンスの窓口のように支援してくれた。引き続き、事業の拡大についてもアドバイスをもらえる状況となっており、これからの成長も期待してくれている。それに応える形で、さらに事業成長に取り組んでいく。
―KDDIのグループ会社との取引が大きかったと思うがその背景と、大きい取引先への依存度を減らすことについて考え方は
KDDIの売上に関しては、マーケティングソリューションとかコンシューマーではなく、「その他売上」に入っている。2026年9月30日をもってKDDIとの取引は終了するので、この売上は、この後乗ってこなくなる。事業の方向性などを検討するなかで、先方の事情で終了することになったのが、元々の背景だ。
一方で、1社の売上に依存したり、「その他」は一定の売上になっていた部分がかなり大きかった。足元はマーケティングソリューションがしっかり効果証明を示し、売上も伸びているため、そちらにフォーカスしていきたい。売上効果も示し、どんどん積み上げて伸びてきているので、「その他」の部分を減らし、人員的にもマーケティングに寄せていく方針だ。1社依存を無くしながら、効果証明に基づいた売上成長を作っていく。
―株主還元についての考え方は
株主への利益還元は、重要な経営課題の1つだと認識している。ただ、足元は成長投資の資金の確保という意味で、上場直後は無配当を想定している。ある程度安定的に利益の創出ができたタイミングで、キャッシュアロケーションを明確にしたうえで配当の実施を検討していければと考えている。
[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]
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