24日、フラーが東証グロースに上場した。初値は付かず2691円の特別買い気配となっている(14時37分現在)。山﨑将司社長と渋谷修太会長らが東京証券取引所で、同日午前に上場会見を行った。

―デザインと企画力に強いアプリを開発するとのことだが、IT領域にあまり詳しくない人向けに、その強みを聞きたい。例えば、見やすい、使いやすい、1日に何回も開いてしまう、継続的に改善を行うなどいろいろな言い方ができるだろう
デザインと言っても、もちろん見た目の良さもあるが、使い勝手の良さもある。そうしたデザインの良さが数値として定量的に最もよく示されるのが、アプリの場合はユーザーのレビューだ。アプリをインストールする際に、「このアプリは4点以上の評価が付いていて良さそうだ」とか、「2点が付いている、ちょっと悪そうだ」と考えることがあるかもしれない。
アプリは、ユーザーの反応が即座に返ってきて凄く分かりやすい。そうした市場に対して、フラーは良いデザインで提供することで、アプリの多くが非常に高い点数となっていることが強みとして挙げられる。
―アプリの提供と一緒にリアル媒体での販促支援もしているが、新聞広告などのデザインも行い出稿しているのか
具体的に伝えると、東急も中日新聞もそうだが、関東を中心に展開している寿司チェーン店の銚子丸が1番分かりやすい。このアプリを我々が手がけており、店内で使われるプロモーション施策である三角柱型のPOPやポスター、WEBサイトに至るまで様々な物を手掛けている。

櫻井裕基CDO (Chief Design Officer):普通はUIデザイナーやUXデザイナーというように区切られるが、いわゆる画面だけを作る“デザイナー”という括りをしておらず、かなり幅広くデザインできる人材がいる。だからこそPOPや画面、電車広告媒体でもデザインをすることが我々の強みとなっている。
―これから電通グループといろいろな協議をしていくなかで、デジタルではなく、リアルの領域に関してデザインなどで協力するような機会はあるか
山﨑社長:これからの取り組みで、基本的にはまずデジタルを中心に取り組んでいく。その先で周辺領域も含めて、顧客のビジネスを成功させるためであれば、多くの領域に対してデザインを届けていきたい。
―東証の方針で、2030年までに上場企業の時価総額が100億円以上であることが要求されているが、今後5年の間でどのような戦略で株式の流動性を高めて、時価総額を育てていきたいのか
渋谷会長:5年で100億円ということだが、基本的な戦略は3つほどある。1つは、成長の基盤としての人材採用の加速。直近でも新卒採用が非常にうまくいっており年に20~30人を採っているが、今後は規模が拡大するにつれてもう少しぺースを上げることができると見ている。

もう1つがAIだ。AI活用と非常に相性の良い事業で、エンジニアリングもそうだが、デザインや企画のディレクションに至るまで様々な分野で、1人当たりの生産性を上げる観点でAIを活用する。人材採用のスピードが上がって1人当たりの生産性が上がると考えると、今までより速いスピードを目指せるのではないか。
3点目が、「グロース100億の壁」で、スタートアップ企業は、この10年ほどで東京だけでなく我々が会社を置いている新潟を含めていろいろな地方でも増えてきた。そういったスタートアップ企業が、今後、エグジットとしてIPOではない選択肢を取ることが増えていくのではないか。我々はM&Aなどの選択も視野に入れながら目指していきたい。
―上場でより多くの人に会社が知られるようになって、資金面でもできることが増えていくだろうが、今後どうしていきたいのか。伸ばさなければならない課題は
山﨑社長:1つ目は資金使途のことだろうが、新卒採用が凄くうまくいっている一方で、採用市場での競争激化が続いている。主に採用関連費用に充てたい。うまくいっている状況をもっと加速させたいので、引き続き注力したい。
―フラーは渋谷会長が起業して新潟にUターンして上場に至っており、国や県が推進している若者による起業や、「UIターン」の好事例と言えるだろうが、今後起業を考えている人や、新潟も含めた地方で起業したばかりの人、UIターンを考えている人に先駆者としてどんなことを伝えたいか
渋谷会長:これまでも創業してから15年ほどで得た知見や経験を、できる限り後世の起業家たちに還元する活動を様々やってきたが、今回の上場が、新潟県内では初めてのグロース市場で、非常に話題性があると考えている。新潟のみならず、首都圏だけではなく、挑戦する若者や起業を志す人たちが全国で増えていき、日本全体の活性化に繋がると思っている。地方にいる挑戦したい若者たちの励みになるようなことは積極的に行っていきたい。
―2年越しの上場だが、それを達成した所感を渋谷会長と山﨑社長それぞれに聞きたい
仲間たちと始めてきた会社で、最初は本当に何もないところから、資金もなく顧客もなく、ただ一緒にやってくれる仲間たちがいた。
そういう仲間たちと一緒に15年間かけてやってきたことが、上場という形で1つの存在証明のようなものができたことが何よりも本当に嬉しいし、ここまで支えてくれた仲間たち、たくさんの株主や地域の皆さんもそうだし、いろいろな人たちの支えでここまで来ることができたので、今日はその感謝の気持ちを何よりも伝えたい。
山﨑社長:渋谷と同様で、ここまで長く支えてきてくれた株主も顧客も、そして何より長く働いてくれている従業員に、本当に改めて感謝を伝えたい。そして私の立場で言うと、途中で社長を引き継いで、その際には新潟本社をちょうど移転して、新潟と柏の葉(千葉県柏市)の2本社体制を取ったところだった。私も渋谷と同様に新潟出身で、今回上場することで地元の新潟に恩返しをできることが非常に嬉しい。私達が新潟本店を持った会社として上場することで、まず新潟を元気にして、地方から日本全国を元気にしていければという気持ちを持って上場日を迎えている。
―初値が付いていないが、市場からの高い評価についてどう受け止めているのか
株価については特に答えることはできないが、非常に高い評価と期待を得ていることを受けとめて邁進していきたい。
―2本社体制によるメリットとデメリットは
渋谷会長:1つは採用の観点での棲み分けが大きい。創業時から培ってきた柏の葉という拠点では、特にコロナ禍以降が大きいが、職住近接というか、「首都圏ではなく郊外の住みやすい街で生活をしたい」という人たちが柏の葉という場所にある会社として集まってくれるのが大きなメリットだ。
一方、新潟の場合は、今日に至るまでたくさんの人々が、転職組がUターンで新潟に戻ってきてくれた。地域にとってもそういった人材が戻る場所があるのは大きなメリットで、特に新潟に関しては従業員の定着率が非常に高い。「仕事があれば地元に戻ってきたかった」と考える人たちが定着して、新潟という自分の故郷で仕事をしてくれる。これが非常に意味のあることだと思う。
山﨑社長:コロナ禍の前から新潟に拠点を置いていたこともあり、非常にスムーズにリモートワークの体制を取ることができた。現在も2本社体制であり、それぞれの拠点で仕事の役割が違わない。
エンジニア、デザイナー、ディレクター、どの職種でも、好きな拠点を選べることを従業員に提供している。例えば、「明日新潟に行きたい」と言ったら新潟に行ってもらっても構わない状況を提供している。そうしたことが定着率の高さに繋がっているのではないか。
渋谷会長:柏の葉にいる人間にも新潟出身者はたくさんいる。彼らに関しては、新卒採用になると私もそうだったが、一度は地元を出たいという若者の気持ちは凄く分かる。ただ、いつか地元に戻りたいと考えるような若者たちがフラーという会社を選んでくれる状況で、採用の時点では、必ずしもその拠点での採用にならないかもしれないが、中長期的に見たときにそういった効果に繋がっているのではないか。
―株価の関係で、「期待を受け止めて邁進していく」とのことだが、どこに期待がかかっているのか
山﨑社長:新潟発のグロース市場の会社であるということが挙げられる。おそらく新潟の人からの高い期待があるのではないか。そうした期待に応えられるように日々邁進していきたい。
―調達資金は基本的には採用に充てるとのことだが、もう少し具体的に言うと、労働市場への露出なのか待遇改善なのか。厳しい採用環境にあるなかで資金をどう使っていくのか
山﨑社長:主に露出についてだ。ただ広告を打つだけではなくて、採用活動を行う際には様々な媒体に対して仲介手数料を払わなければならず、これまで出展してこなかったイベントにも顔を出すようになることが挙げられる。
そのほか、広告媒体では、以前も例えば、新潟と東京を結ぶ新幹線上に広告を出すこともあったが、我々の拠点に行くまでに、東京からはつくばエクスプレスに乗らなければならず、そういった所に広告を置くことで、多くの人の認知度を上げられるのではないか。
―採用対象としては、今は高等専門学校出身者がメインとなっているが、上場後には採用ターゲットをどう想定しているのか
渋谷会長:今後AIなどいろいろな流れのなかで積極的な高専生の採用というのは1つある。高専生も地方の学生も、やはり安定した会社に就職したい人たち、特に彼らの親の世代ではそれが凄く強いのが現状と見ており、そこが今回上場する最大の意味でもある。
我々はベンチャー企業と見られていたこともあるだろうが、今後はグロースの上場企業として見てもらうことで、いろいろな人たち、今まで受けたいと思ってもらえなかった層にもリーチしていけるのではないか。
[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]
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