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上場会見:日本ビジネスシステムズ<5036>の牧田社長、クラウドシフトの期待に応える

2日、日本ビジネスシステムズが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の1520円を20.2%上回る1827円を付け、2043円で引けた。三菱総合研究所の持分法適用関連会社で、大企業をターゲットに、TeamsやOutlookなどMicrosoft365を中心としたクラウドサービスの導入から保守運用まで一気通貫で提供する。牧田幸弘社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

牧田社長は、企業のクラウド活用の余地は大きく、機能を十全に発揮するために確立されている仕組みも提供できると話した
牧田社長は、企業のクラウド活用の余地は大きく、より良く使うために確立されている仕組みも提供できると話した

―初値が公開価格を20%上回った
世のなかの人にだいぶ知ってもらえたと実感した。買い気配が多く始まったのはとても光栄でありがたいことだった。株価がどうのこうのという点で何かできるわけでもない。長期的な戦略上、格段の成長をしていこうという大きな計画があるので、そのための施策を着実に実行して、投資家が長期的に見て、世のなかになかなか影響のあるしっかりした仕事をしている良い会社と認めらてもらえるようにしたい。今日は良い形で上場できた。

―社歴も長いが、この時期に上場した狙いは。足元では市場環境が不安定で、IPOを延期する会社もあるが、延期は検討しなかったのか
ずっとプライベートできたわけだが、取引先のほとんどが日本の大手企業で、実際には株式上場をしなくとも、仕事は回っている。非公開のままでも仕事はでき、顧客からも上場企業と同じような扱いで信頼して取り引きしてもらえていた。

スムーズに仕事ができていたが、過去30年を見ると、非上場だったこともあり、ゆっくりと成長してきた。しかし、4~5年前から世界中でクラウドのシフトが一気に始まり、日本の大手顧客もかなりのクラウドシフトをして、今後新しいDXの取り組みをしたいという非常に大きな期待が我々に寄せられた。この4~5年で、今のままの体制では、ちょっと無理だというのが正直なところだった。

格段の成長をしていかないと、今目の前にある顧客の需要に応えていくのが難しいと判断した。株式を上場して世のなかのリソースを確保し、一般に認知される会社としてデビューして人材を獲得し、知見も貯めて新しいソリューションのサービスを拡充しなければならない危機感のような認識があった。

逆にいうと大きなチャンスだと感じていて、このタイミングのために準備をしてきた。市況の悪い時期に当たったが、それがどうということはなく、2年前に計画した通りのスケジュールだったので、市況が悪いからやめるという選択肢はなかった。上場して皆さんに認知してもらい、デビューしたいという思いが強い。

勝田耕平執行役員:市況よりも、信用力アップによる優秀な人材の獲得が、成長のポイントのなかで、非常にプライオリティーが高い。これから成長していくためには上場していかなければならないというタイミングが、この時期だった。

―沿革と関わるかもしれないが、マイクロソフト製品に特化する理由は
牧田社長:我々がマイクロソフト(製品)を取り扱い始めたのは1995年ぐらいだった。創業当時の1990年にはパソコンネットワークが流行り始め、Novell(ノベル)という会社のパソコンネットワークOSを中心にネットワークを作っていた。

マイクロソフトは、ノベルに対抗したサーバーOSといわれるWindows NTを出した。NTサーバーが出てきた。それをきっかけにマイクロソフトを扱うようになった。その後、Windowsサーバーに発展して、サーバー上で製品がいくつも出てきたように、マイクロソフト自体がエンタープライズ系のソリューションのサービスを提供する会社にシフトしていった。我々もそれに特化して技術を磨いていたら、大手企業がマイクロソフトを少しずつ使うようになり、その関係で、我々もエンタープライズ系にシフトし、大きく取り引きをしていけるようになった。

当社は、比較的ゆっくりした成長、年率1割前後の少しずつの成長だった。マイクロソフトの仕事に関係したところをするのが精一杯な状態できたので、幅をあまり広げられていない。集中してきたとも言えるかもしれないが、特化して大手SIerと差別化していくには集中して強くしたほうが、大手企業に使ってもらえるという(考えが)あった。

マイクロソフトが2000年以降、エンタープライズ系での利用がどんどん増え、2010年代はクラウドを展開し、完全にエンタープライズ向けの企業になってきた。当社は、それ(らのサービスを)をさらに展開できる会社として成長してきたため、大手の自動車や金融の会社でも、メインで使ってもらっている。

―エンタープライズ向けのDX・クラウド支援で競合も多いだろうが、意識する競合とそれに対する強みは
前田憲仁執行役員:競合にはいくつかパターンがあり、1つは大手SIerだ。クラウドにハイブリッドでという形で、移行する会社が多いが、あくまでオンプレミスの仕事を中心にビジネスをしている会社が多い。そういった会社と比べると、我々はクラウドを前提に、顧客の業務をクラウドに寄せていく提案スタイル。プロジェクト1件当たりの期間も短く、規模もそれほど大きくないが、既存のシステムに縛られず、顧客にクラウドのサービスを早く、そのままうまく使ってもらう提案をしていることが既存のSIerとは違うと見ている。

一方で、コンサルティングからSIに入っていくプレイヤーもいるが、そういった会社は、クラウド製品そのものというより、顧客が新しいことをしたいという時に、アジャイルで作っていく、新しいものを1つひとつ作っていくスタイルだ。我々はゼロから作るというよりも、クラウド製品をいかに早くうまく適用させて使ってもらうかというところで回転を速く、スピード感を持って提供するポジションにいる。特にマイクロソフトのAzureで同じスタイルの会社はない気がする。

―成長戦略について、既存顧客の深掘りかと思うが、中小企業向けや海外展開など新しい領域は
牧田社長:将来的には考えている。SMB市場というか、エンタープライズ系以外の企業もあり得るが、現在の体制では、規模を拡充させてもエンタープライズ系の市場のニーズに応えていくためには、戦力を分散できない。エンタープライズ系の市場がかなりあるので、当面はそちらを中心に動いていく。SMBに関しては、ある程度手を打っている。

前田執行役員:オーストラリアのrhipeという会社と、我々が20%出資する形でrhipe Japanというジョイントベンチャーを作った。それは、いわゆるSMB向けのディストリビューションの機能を提供している会社で、そこを経由して、今後、我々が大手企業とビジネスを進める上でソリューションをパッケージ化して、1社1社大きくカスタマイズせずに展開できるものが揃ってきた時に、rhipe Japanの商流を使って、SMBの顧客を含めて展開できることは、今後の可能性として想定したい。当面はエンタープライズ顧客の需要にしっかり応えたい。

―今後の海外展開は。国内中心なのか。中長期的な目標は
当面は国内でエンタープライズ系の企業の需要にしっかり応えていくことが中心になる。海外は、元々、日系企業が海外進出するタイミングで支援してきた背景がある。今後、グローバルで展開する顧客の、クラウドで国内と海外をつなぐ需要が増えると見ている。日本だけではないシステムやクラウド環境、DX支援のニーズに応えていく。現状では、海外はそれほど大きな数字ではないが、日本企業が日本以外に展開する支援を通じて少しずつ増やしていければ中長期的には良い。

―現地の企業の支援は
牧田社長:現地企業にサービスを展開することは、今は考えていない。

―海外向けの売上高の割合は
勝田執行役員:1.2%だ。

牧田社長:日系の大手企業は海外売り上げが国内より大きいことが多い。我々が受けられる体制ができそうだということもあり、グローバルでのサポートをしてもらいたいというニーズがかなり寄せられている。今後、グローバルでのサービス展開は期待できるが、その先は、日系の顧客のグローバルのサポートだ。

―海外拠点は増やすのか
前田執行役員:現時点では想定していないが、可能性としてはないとは言えない。

―クライアントの会社が、クラウドを自社で運用できるよう内製化する支援をしていきたいとのことだが、それとの関係で、ローコードやノーコードといったものには取り組んでいるのか
我々が注力していきたい内製化の意味合いは、顧客自身にクラウドの価値をより理解し、活用する流れを作っていくのが全体のイメージだ。そのなかで、ローコードやノーコードは、顧客自身でどんどん使ってもらって、クラウドの価値を体感してもらう。そのためのトレーニングなどを提供する。それに加えて会社全体のコーポレートITや深い業務システムに関しては、顧客だけでするには難易度が高いので、それらに関しては我々が引き続きいろいろなベンダーの技術を使って支援していく。顧客のクラウド適用範囲が広がっていくと、我々の支援の範囲が広がっていく。

―IT人材の奪い合いが起きているが、人材確保と育成でどこまで規模を拡大させるのか
何年後に何千人というものではないが、現状、新卒が200人、中途も通年で50人ほど採用して、離職率(のパーセンテージ)は1ケタ後半ぐらいで、それほど悪い数字ではないと見ている。新卒も中途も、上場を機にもう一段上げて人数を確保したい。離職を含めて純増で200人を獲得できるよう頑張りたい。需要は多いので、しばらくそのペースを維持していきたい。

―どのように来てもらうのか
採用にも関わるが、新卒中心に一から育てており、中途の獲得競争がより一層厳しい。新卒でも我々のトレーニング環境で、マイクロソフトに特化してクラウドのスキルを磨いてもらう。そこにフォーカスを当てている点では、人員の確保ができる。それ以外は、中途市場を含めて、各社、外資も含めて待遇の数字が上がってきているので、給与面のみならず福利厚生を含めて検討したい。

―ROEは
勝田執行役員:年間でのリターンが一番分かりやすいが、長期的に成長することによって、投資家にリターンを戻したい。配当性向は30%だが、その結果ROEは10%を超えている。基本的にはその水準を維持していこうと考えている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]