16日、GOが東証グロース市場に上場した。公開価格の2400円を21.25%上回る2910円の初値を付け、2640円で引けた。中島宏社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

―公募価格から初値も終値も上回っているが、上場の受け止めは
初値や終値に関しては、市場が決めることだと理解している。なにか努力できるものではないし、この場でなにか言うのは控えるが、公募価格を上回ったことは一安心している。
―他社に対して提携台数や利用において優位な状況にあるが、他社も新しいCMを始めたり、宣伝の攻勢を強めている。 今後、優位がどのように継続していくのか、さらに強めていくにはどうするのか
当社の強みは多層的に構築されており、強い競争優位性は揺るがないと考えている。具体的に言うと、1層目は広いタクシー提携台数。顧客にとってのコアの価値は、確実にタクシーとマッチングすることと、そのマッチングした車両が1分でも早く来ることだ。このマッチング率と、マッチングした後の迎え時間に効いてくるのが広い提携台数で、強固で揺るがないと捉えている。
2層目のユーザー認知度が重要で、CMを展開して、それを見たときにダウンロードするユーザー行動はあまりない。そこで認知をしておいて、例えば、大雨とか、どうしても急がなければならないときに、「タクシーを呼びたい」や「アプリで呼びたい」となるが、その瞬間にその人が第1想起するブランドが何なのかが、新規ユーザーの獲得にダイレクトに効いてくる。そこが市場における認知度をしっかり維持できているかどうかのポイントになって、競合に対して高い認知度を維持する形になっている。
ここは競合も積極的な展開をしているので、市場の動向に合わせながら、マーケティングスペンドなどをコントロールしていかなければならない。1度強固なユーザーを獲得すると、先行優位性がある領域になるため、今後、マーケティング費用をコントロールしながらこの状態を維持できると考えている。短くて6年以上、統合する前を踏まえると10年以上、グローバルプレーヤーと戦ってきて、10年の歴史を踏まえると、直近の各競合の動きは、急に強くなったわけではないので、我々は継続してこの状態を維持しながら戦っていくことが大事だと捉えている。
3層目の強みはユーザーが多いことで、提携するタクシー事業者や乗務員にとっての価値に繋がるため、ここの部分もプラットフォームエフェクトという意味では、重要になる。(タクシーアプリ「GO」の利用率が)70%のボリュームで、これはMAUで客観的な数字だと見ていて、この状態が維持できている。この3層にわたる大きな強みがあることで、競争優位性がある。他社が様々な数字をデータで示しているようだが、70%は4月の数字で、我々はこういうシェアだという認識だ。
―日本全体で人手不足が深刻化しているなかで、自動運転の技術を開発しているが、自動運転タクシーが実現した際、どのような役割を果たすプレーヤーになるのか。事業化に向けた方向性もあわせて聞きたい
まず、自動運転システムに対するR&Dを当社として取り組んでいない。自動運転システムそのものは、グローバル全体を見渡すと、少なくとも1~2兆円の投資が必要で、多ければ10兆円以上の投資が必要になるというマーケットなので、そこは我々の土俵ではないと捉えている。土俵は引き続き、タクシーと顧客のマッチングになるため、アセットライトのビジネスを自動運転時代も継続していきたい。
提携管理が大事になり、分業体制は維持する。当社はタクシー事業者、自動運転システムに関してはそれを提供する会社との提携が大事になってくる。グローバルで第一人者であるWaymoとの提携があるので、日本においてしっかりとフォローしていくことを集中してやっていくだろう。
―競合他社だと、海外で使えたり、海外の人がユーザーとして使えるという強みを持っていると思うが、インバウンド戦略や海外戦略についてなにか考えていることはあるか
グローバルで時価総額の大きいプレーヤーが何社もいる状況のなかで日本マーケットに立っているが、グローバルの市場環境全体を見渡すと、地域で勝ち組が分かれているのがマーケットの大きな特徴だ。北米であればUber、中国であればDiDi、ASEANであればGrab、韓国であればKakaoが強い。
例えば、ソーシャルネットワークのようなサービスと比べると、明確にグローバルネットワークの広さが競争優位性に繋がるのではなく、ローカライズの巧みさが競争優位性に繋がる。そういった特徴があるマーケットはたくさんあるが、配車アプリに関しても、そちら側の特性だと理解している。日本地域は当社がほかのプレーヤーよりも上手くローカライズしようとしている。タクシーとライドシェアを合わせると、世界3番目の広いマーケットだ。1位・2位は中国と米国だが、世界3番目の市場でしっかり出し切れるのも大きな価値がある。
―ディー・エヌ・エー時代にZMPとのロボタクシーからモビリティへの関与というのが始まっていた。ここまで長くモビリティ事業に関わると思っていたのか、この10年を振り返って一言を
2014年からモビリティの領域で、特に自動運転関連に強い関心を持って取り組んできており、もう12年になると思う。当時と今で変わらないのは、社会課題の解決に事業を通じて取り組んでいきたいというのが、強い思いだ。特に日本の場合は、移動にまつわる課題がまだ多く残されている。そこに着目して取り組んできたと振り返っている。
今思えば、10年前も「来年からロボットタクシーが始まる」というようなことが世間では言われていた。今でも「来年から始まります」というようなことが世間では言われており、そう考えると10年前も今もあまり変わっていないという思いだが、大きく違うのは、既に諸外国でロボットタクシーが実装され、数千台が走っている。課題を解決していくためにも、日本でも実装を進めたい。
―成長ドライバーで、1実車あたりの平均売上高がCAGR34.9%だが、この単価は、まだ伸びる余地があるのか。現時点での1実車当たり平均売上高の163円は、Uberのテイクレートなどと比較したときに、どのように評価すればいいのか
森亮介CFO:今後の成長ドライバーに関する考え方は、1次的には指摘の通り、まだ諸外国比で低いアプリ配車率を日本に根づかせていくことが、中長期的な成長の最下層に流れているグロースドライバーだと捉えている。まずはより良い顧客体験、より満足してもらえるサービスを顧客に提供し、それとあわせて、満足してもらえた内容に対する対価としての1人あたりの売上高をこれからも上げる努力をしていきたい。この2つがワークし、実車台数と1実車あたりの売上高の持続的な成長を目指せると考えている。
―人手不足への対応に関して、日本だとライドシェアとロボタクシーと大きく2つのテーマがあると思うが、どのように実装して、ソリューションとしてどういうタイムラインでどのような描き方をしているのか
中島社長:自動運転は世の中で「今か今か」と言われていることは、理解している。ただ、我々も、提携しているパートナー各社との話し合いのなかでも、安易に「このタイミングまでにローンチすることを目標とする」という形ではかえってよくないと認識している。そう言ってしまうと、コミットメントに繋がるので、「何としてもそこまでに実現する」というモチベーションが発生してしまう。
サービスの特性によっては、それでいいのかもしれないが、ロボットタクシーは人の命を預かるものになる。確かな自信がない状態でそういったコミットメントをすると、安全安心がないがしろになる可能性が高い。安全安心が1番大事と考えると、安易なコミットメントをするべきではなく、今のところ目標とするタイミングは公にしていない。 ただ、既に日本ではない諸外国で実装されているサービスなので、決して夢物語ではなく、きちんと着実に進めていって、近い将来にリリースしたい。
ライドシェアに関しては、日本全体でライドシェアのドライバーは既に1万人ほどが稼働している。これは各種、国の設定する様々な場で規制緩和の議論がされて、今この形でと、進んできているもので、当社としてはしっかり規制が緩和されて、実施可能になったものは、積極的に取り組みたいというスタンスだ。その約1万人のライドシェアドライバーのうち約8000人が「GO」で登録して稼働している。大部分が「GO」でやってくれており、ドライバーの立場に立つと当然だが、顧客の多いところ、つまりは売上の多いところで稼働したい。
ライドシェアは、アプリからしか売上が得られないので、必然的に1番大きいプラットフォーム、1番収益を上げやすいプラットフォームにドライバーが集まってくる。マーケットの原理でそうなったと理解しているが、許認可の範囲で積極的にやっていきたい。ただ、今の状況を見ると、日本全体でタクシー不足が既に解消されている地域も多く、そういう状況のなかで日本の場合は、タクシーとライドシェアとは補完関係と位置づけられている。
ここから、稼動するドライバーの人数が増えていくのは、規制の趣旨ではないのだろうと理解しているので、そこから大きく伸びていくことはないと見ている。また、市場でタクシーやライドシェア不足が叫ばれるような需給バランスの変化が起こったら、規制のあり方がまた議論されて、マーケットの需給のバランスにあった形で同じようなことが起きて調整されていくのだろう。それに従って精一杯取り組んでいく。
―今回のIPOは売出のみだったが、今後の成長投資に向けての資金調達や財務戦略についての考えは
森CFO:2025年5月期に会計上の利益が黒字化しており、今は営業キャッシュフローもしっかりプラスになっている。足元の既存事業をしっかりと線形に成長させていくという限りにおいて、大きな資金ニーズは認識していない。市場の流動性を高めていくのと、より多くの投資家に積極的に株式を売買してもらううえで、十分な流通株式を提供したいということで、多くの既存の株主に協力してもらいながら、売出が中心のIPOになった。
今後は、新規事業の自動運転を日本のタクシー業界に根付かせて大きく展開させていくなかで、初期投資の負担を軽減していく役割で必要な資金は、キャピタルマーケットへのアクセスを手にしたので、選択肢の中から柔軟に調達方法を考えていきたい。
―既存事業のノウハウや経験を物流領域にどう反映させていきたいか。物流領域への成長戦略について
中島社長:日本において物流はタクシーの産業規模の10倍以上ある大きなマーケットで、それゆえに一口に物流といっても、様々な特性を持ったマーケットで産業が構成されている。規模も大きいし、複雑性も高いので、そんなマーケットでも、強みが活きやすいと思うのは、ラストマイルとミドルマイルの領域だ。
この領域は中小企業の運送事業者が担っている率が高く、デジタル化がまだ諸外国と比べると遅れている。日本のタクシー産業と特性が似ており、協力できることは多い。同時に総合物流施策大綱で、国土交通省や経済産業省が政策を発表しているが、それをつぶさに見ると、プラットフォームが求められていると感じ、貢献できるところは多いだろう。
ただ、今はまだ小さな実証を繰り返しているタイミングで、「GO」としての戦略や施策について具体的に説明できるタイミングではないので、徐々に固まり次第、皆に説明できるようになっていければと考えている。ただ、大きな期待をしているマーケットだ。
[キャピタルアイ・ニュース 北谷 梨夏]
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