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BEST DEALS OF 2022 横浜市、市場慣行に一石

BEST DEALS OF 2022 地方債部門
横浜市債(条件決定日:2022年11月18日)
回号 4年度/3
年限 10年
発行額 100億円
表面利率 0.499%
発行価格 100
ローンチ・スプレッド 国債+25.5bp/国債カーブ+25bp
参照国債回号 368
参照国債償還日 2032年9月20日
プライシング基準 JGB
償還日 2032年11月30日
格付け A1(ムーディーズ)
主幹事  ゴールドマン・サックス/東海東京/野村

10年物地方債における同月・同スプレッドの慣行を初めて破った案件。11月の先行銘柄が、セカンダリーのワイド化にも関わらず前月並みの国債カーブ+20bpで決まり、レス販売が横行して実勢は+20bp台後半に広がっていた。これに応じて、定例銘柄の起債が終わった後に動き、5bpワイドな+25bpで18日にローンチした。これによって大口先が復活し、12月の案件を経て、7月から続いたワイド化基調が止まった。月中にスプレッドプライシングが継続し、そのスプレッドそのものが上方修正されたのは初めて。

「流通実勢との乖離が依然として大きく、適正な発行水準とは言い難い」という投資家のフィードバックを確認したうえ、国債カーブ+20bp~20bp台半ばのガイダンスを提示し、+24~25bpの2本値でマーケティングしたうえ+25bpに集約した。同月の先行銘柄が償還月差なしとしていたが、中核となる投資家からの求めに応じて0.5bpの月差を付けた。これも異例の措置だった。100億円に対して160億円を超える需要を獲得している。先行きが不透明ななか、12月を待たずに起債した。

■ワースト主張への反論
アンケートでは、この横浜市債をワーストディールとして推した回答が1件あった。以下にその全文を掲載する。

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月初の10年債の販売が不調であることが周知の事実のなか、月中に主幹事方式で起債し、月初の地方債の水準より5bpワイドニングしてクローズした。言うまでもないが、月内に同一の水準で条件決定される慣行は、自治体間でほぼ均一なクレジットかつ小口の発行が多い地方債への投資としては理にかなっているし、スプレッドの安定も含めて一般債投資(クレジット投資)と一線を画して管理する投資家サイドのニーズである。この起債が引き金となり2週間後の12月地方債はさらに4bp拡大した。スプレッドのボラティリティを高めただけの典型的な悪事例だった。発行体の調達優先の姿勢に非はなかろう。ただ、ディールメイクした主幹事団についてはマーケットや投資家の投資行動について浅慮の一言でありワーストディール受賞に相応しい。また、メディアからは月内のスプレッド調整について地方債の慣行にとらわれない取り組みとして賞賛する記事があったのはさらに残念だ。慣行=悪という固定観念にとらわれた結果でありメディアの取材不足・勉強不足を指摘する市場関係者の声が聞こえた。さすがにメディアによる発行体への同調圧力ではないことは信じている。
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これに対して、条件決定当日に賞賛のトーンでレビュー記事を配信し、当年度のBEST DEALに選定したメディアとして明確に反論しておく。まず、「慣行=悪」などという固定観念は持っていない。理にかなっている側面があり、投資家のニーズも存在するのは指摘の通りだ。ただ、日本銀行によるイールドカーブ・コントロール政策や海外の利上げ動向などによって、10年ゾーンの逆イールドと金利のボラティリティが強まるなか、10年地方債の需給の悪化が止まらず、度重なる上方修正でも改善に至らなかった。先頭銘柄の消化のみで水準が決まり、同月・同スプレッドに従ってその後の銘柄でレス販売が出て、流通実勢とプライマリーの乖離が広がるという不健全な状態の現出が当年度はいくつもあった。

また、後続を含めた消化が可能な条件決定を求められる先頭銘柄の責任が理不尽に重くなっている。これらが慣行によるものでなくて何であろうか。この慣行を指して度々「悪弊」と表現してきたのも、悪い側面が際立っていたからだ。授賞は、横並びと不作為が横行する地方債市場で、そうした状況に一石を投じた横浜市債を賞賛するものだ。

「取材不足・勉強不足」という点も当たっていない。筆者は、2002年の2テーブル方式の導入、条件決定の個別化や主幹事方式の広がりなど、前職から20年以上にわたって継続的に地方債市場を取材してきた。全案件(一部入札方式を除く)で関係者への綿密な取材を経てレビュー記事を配信し、その累積がAward選定に至っている。アンケート結果も、この横浜市債が最も多くの回答者から支持を得た。発行体への同調圧力など動機がないし、第三者の立場で公平な報道を続けていると自負する我々にとっては問題外だ。

[キャピタルアイ・ニュース 菊地 健之]


Updated: 2023年4月3日 — 16:35
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