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新規上場企業のいま(4):ログリー(6579):ネイティブ広告からマーケティングへ

ログリー ロゴインターネットのネイティブ広告のプラットフォーム事業を手掛けるログリーが、昨年6月に東証マザーズに上場してから1年が過ぎた。上場当時を振り返りつつ、事業の現状や今後の展開を、吉永浩和社長に聞いた。PDF版はこちらからダウンロードできます。

 

吉永浩和社長

吉永浩和社長

■人員強化は予定通り
―上場前後での変化は
信用力と認知度向上によって、採用面で大きな変化があった。エンジニアスタッフと営業員が当社の主な構成要員となっているが、双方とも上場後には応募者数が圧倒的に増え、明らかに採用しやすくなった。上場の目的として人員強化もあったため、その点では予定通りできているし、1年経った時点でも継続している。

信用力という点では、上場したことによって顧客が増え、安心して利用してもらえる土壌ができたと認識している。この二つは大きい。

当社のサービスの数はそれほど多くないが、例えば広告だけを使っていたメディア企業が、分析ツールも一緒に使うようになるケースが増加している。広告主、代理店からは、認知度が上がったことによって問い合わせが増えている。

エントランスと隣接するイベントスペースを、スタートアップやエンジニア向けの勉強会のために無償で提供している

エントランスと隣接するイベントスペースを、スタートアップやエンジニア向けの勉強会のために無償で提供している

―上場準備でのエピソードは
上場は13年前の創業時から考えていた。事業形態が現在とは異なっており、当初の計画では創業から5~6年で上場するつもりだった。業態が広告に変わり、2012年にメインプロダクトの「LOGLY lift」を発表してから1年経ち、数字の伸び具合を見て主幹事証券を決め、監査法人のショートレビューを入れた。そこから順調に売り上げと利益が伸長し、本格的に動き出した。

獲得した広告を広告枠に自動掲載し、閲覧者が広告をクリックした時点で広告主に課金する仕組みになっている

獲得した広告を広告枠に自動掲載し、閲覧者が広告をクリックした時点で広告主に課金する仕組みになっている

上場するまでの審査過程は大きなトラブルもなく、比較的スムーズに進んだ。一番大変だったことは、内部統制の仕組み作りではないかと思う。ベンチャー企業なのでルールが曖昧であったり、例えば承認フローもきちんと整備されておらず、きちんと統制ルールを敷く必要があった。ルールを作ることは簡単だが、それを運用しなければならない。そのためには社員になぜ行う必要があるのか説明しなければならない。実際に機能するところまでは、トレーニングを含めて時間がかかった。それは上場にとって必要なプロセスであるし、会社の規模やステージが上がってくるにつれて必要なものとして、避けて通れない。

社員にとっては負担が増えることなので、ベンチャー企業に入ってくる皆さんは、「前職と比較していろいろな手間がなく(承認なども)スピーディー」と考えているかもしれないが、ミスが起こらない内部統制の必要性を理解してもらい、運用ベースに乗せていった。

―仕事の仕方も変わったのか
ルールがないと、余分なコストや時間がかかった。例えば上司に対して、これはどうしたらいいかと質問が頻出する。人数が増えてくると上司の仕事が部下の質問攻めに遭いやすかった。一方で、内部統制を整えるとルールに則った行動ができるようになり、手間が省け、事業に集中できる。これは大きなメリットと捉えている。

■データマーケティングに参入
―事業の現状は
予定通りに動画プロダクトをリリースし、販売も順調に進んだ。海外展開もまずまずの成長を遂げている。一方でCookie(WEBサイト閲覧時に端末に保存される情報)を使わずにユーザー属性を推定する特許技術について発表したのはつい最近で、上場前から取り組んでいた。世の中で反響が大きいのはこの分野だった。

なぜかと言えば、欧州で施行されたGDPR(EU一般データ保護規則)やアップルの発表したITP(Intelligent Tracking Prevention)でCookieの取得が制限され、我々広告事業者にとってCookieが使いにくくなった。それを補うものをずっと研究・開発し、ようやく特許を取得した。当初は自社プロダクトに乗せるだけという想定だったが、広告業界だけでなく、調査会社やEC事業者でも似たような悩みがあるようで、問い合わせがある。そこで、別プロダクトとして切り出して新たな展開ができないか模索している。

―今後の事業の見通しについて
今期は、LOGLY liftを使った既存のネイティブ広告事業の拡大に集中していくが、市場形成が進んでいるため、いままで通りのやり方でというわけにはいかない。そこに付随するサービスやプロダクトを投入することで、さらなる成長を目指す。そのために自社で一から作ることもあるが、M&A戦略を掲げている。先日PLAN—Bのプロダクトである「Juicer」を、我々が譲り受けるために結んだ基本合意契約もその一つ。「Juicer」は既存事業であるネイティブ広告とのシナジーが高く、さらに新規事業に活用できるポテンシャルがあるプロダクトだ。

WEBメディアの読者の再訪や定着を促すツールである「Loyalfarm」では、2017年3月から読者の興味・関心に従って配信を最適化するDMP機能(図:右上)を提供してきた

WEBメディアの読者の再訪や定着を促すツールである「Loyalfarm」では、2017年3月から読者の興味・関心に従って配信を最適化するDMP機能(図:右上)を提供してきた

まず既存事業に対するシナジーだが、我々は広告配信に当たり様々な配信方法を持っている。先ほどのCookieを使わない技術もその一つだが、Cookieを使ったほうが有用な方法もある。そのなかでいままで当社が他社と連携して実現してきたものとして、データを用いた配信がある。JuicerはDMP(Data Management Platform)というデータの箱で、これを広告配信システムと連携させると、そのデータを使った配信が自社で行える。
このメリットは、いままで漠然とした層に広告を打っていたが、「ドンピシャでこの人たちに広告を打ちたい」ということがデータによって可能になる。闇雲に広告を当てると読者に嫌がられる懸念があり、適度に消費者のニーズに合う広告を配信する必要がある。データを使った事実に基づいた広告配信で、読者と広告主のマッチング精度を高める。そうすると広告配信単価がアップし収益性が増す。これが既存事業とのシナジーになる。

次に、新規事業に活用できるポテンシャルに関してだが、我々はデータマーケティング事業に参入していく。データを使った広告配信だけではなく、データそのものを活用したマーケティングのコンサルテーションを提供できる。いまネットでは、データによって判断することが多くなっている。PLAN—Bは、既にそのようなビジネスを行っており、それを引き継ぐことで、マーケティングなどいろいろな物事の判断について我々の持つデータを使ってアドバイスすることができる。

広告は、マーケティング全体のなかで比較的ボトムの領域にある一方、データを使った示唆出しやコンサルテーションは上流工程に当たる。上流からボトムまでをカバーする体制ができ、一広告企業からマーケティングの会社への変革を見せられる切り口になる。

―外販先となる企業の種類は
今までお付き合いさせて頂いた広告代理店の種類が増える可能性がある。具体的に言うと、いわゆる総合系の広告代理店に有用なデータになってくると思う。例えばテレビでマーケティングを行っている会社は、総合系の代理店を利用していると思う。データを使った示唆や分析は、デジタルだけでなくテレビデータとの掛け合わせによるマーケティング施策の分析も可能だろう。そうなると専業系のネット広告代理店だけでなく、総合系の代理店についても効果が期待できる。一方でネット専業系の代理店に有用なデータもある、そこは既存顧客なので変わり映えはしない。

ほかにもデータを使っている事業者がある。新展開としてDMP事業者やCDP(Customer Data Platform)事業者とのデータ連携がある。データを蓄積している事業者はいくつかあるが、全てのデータを持ち合わせているわけではない。我々が今回譲り受ける予定のプロダクトはDMPだが、そのデータを販売することで補ってもらう事業展開もあり得る。

もう一つは、広告主に直接話すことで、今こういうデータが見えているので、こういうことをしようという分析・提案ができるのではないかと思う。これまでの当社の事業構造上、圧倒的に多いのは代理店経由の取り引きだった。新たなプロダクトでは、顧客と直接取引する機会が増えていくと見ている。

―コンサルティング的な側面は
その役目は子会社のクロストレックスが担う。そこでは既に、コンテンツを使ったマーケティングを分析から施策・設計、制作、配信まで請け負っている。

■エクイティとデットの両立てで
―資金需要や成長投資のための調達について
M&Aには資金が必要なため、まずは上場で得た資金をきちんと活用していく。それ以外に上場前に比べて資金調達はしやすいと考えているため、今後のM&A戦略によっては調達の可能性を模索していきたい。具体的な方法は決めていないが、バラエティは増えていると思うので、エクイティもデットも含めて両立てで検討していきたい。

紙媒体と比較してデジタル領域は制約がなく、屋外広告や交通広告を含むサイネージ広告が圧倒的に増えていくと話す吉永社長

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―投資家に向けてひとこと
2月の広告の一部停止によって、株主をはじめ投資家の皆さんに不安な思いをさせてしまった。決算発表後の株価に大きく影響したと認識している。きちんと回復していることを見せるために、2019年4~6月の第1四半期に関しては、今まで行っていなかった月次開示で回復を見せられたと思う。今後は中長期的な目線で成長を見てもらいたい。M&Aも含めてアドテクノカンパニーからデータマーケティングカンパニーの方向へ行くということは、M&Aによってもある程度時間がかかるため、それを前提に中長期的に我々の会社を見てほしい。

―上場を考えている企業に向けては
上場によるデメリットは全く感じていない。会社の規模に関係なく、上場できる組織や財務体質で、その意思があれば、いますぐすべきだと思っている。上場は機会を逃すと、会社の規模は大きくてもできないということが多々ある。最終的には経営者の意志や勇気だと思う。

 

 

画像などの出典:ログリー

[2019/8/7:キャピタルアイ・ニュース  鈴木 洋平]


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