CAPITAL EYE

株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイトです。

新規上場企業のいま(2):シルバーライフ(9262)伸びる業界、超高齢社会のインフラに

 

シルバーライフ 画像①ロゴ高齢者向け配食サービスなどを手掛けるシルバーライフが東証マザーズに上場して1年5カ月が過ぎた。配食フランチャイズ(FC)の本部運営を柱に、施設向けの食材販売、OEM事業を展開する。2019年7月期第2四半期の売上高は、前年同期比23.1%増の37億9100万円で、営業利益は同61.6%増の4億3300万円だった。上場当時を振り返りつつ、事業の現状と今後の展開を清水貴久社長に聞いた。PDF版はこちらからダウンロードできます。

清水貴久社長

清水貴久社長

■営業と採用に好影響
–上場の前後で変わったことは
最も大きな変化は営業と人材採用のしやすさにある。まず、営業については、FC加盟店の説明会の参加者が実際に加盟する率が上がった。上場前は20%台前半だったが、35%ほどになった。営業時のトークやツールが何も変わっていないので、上場したことによって増えたと考えている。

採用面では、特に新卒採用で如実に効果が出た。上場前の一昨年の求人と比べてエントリーのスピードが増して応募者が8倍になり、15人が内定した。会社としては1年分大きくなっているが、新卒者からの見た目が変わったわけではない。新卒者はリクルートやマイナビで上場企業か非上場企業かをクリック一つで選別できるので、上場企業であることで人の目に触れる機会が増えたのではないか。

配達されるお弁当の一例。一般的なお弁当のほか、カロリーやたんぱく質を調整したものや、噛みやすく工夫したものも提供する

配達されるお弁当の一例。一般的なお弁当のほか、カロリーやたんぱく質を調整したものや、噛みやすく工夫したものも提供する

–上場準備のエピソードは
内部統制全般にある。私は店舗出身で店長としてはプロである自信があるが、管理業務はまだまだ苦手としている。上場では、きちんと人に見せられる財務を把握する体制を作ることができる。人事・総務や労務体制・環境を整える点でも良い勉強をさせてもらった。いままで全く経験していなかったことをじっくり学ばせてもらった。少し窮屈になったこともあったが、内部統制ができている会社では当たり前のことなので、意識改革という面でも良かった。

–従業員の反応は変わったのか
良くも悪くもそれまで猪突猛進タイプの人が多かったが、きちんとルールを守ろうと言ってくれる人が増えた。それまでの我々にはいなかったタイプの人も来てくれて、人材の幅も広がった。それも上場の効果の一つと言える。

–今後期待する効果は
資金調達などの選択肢が増えることだろう。我々の高齢者向け配食サービスは、業界そのものが伸びていく環境にある。だからこそ、設備投資で良い機械を入れてどんどん生産効率を上げていかなければならない。上場によって資金を市場から調達できるようになったし、上場企業ということで銀行からの評価も得られるようになった。きちんと数字を出して、その数字が監査法人の監査を受けていることへの信頼もあり、銀行との話が円滑になっていると思う。将来の設備投資も予定通り、予定以上のスピードで進められると期待している。

–ファイナンスの考え方について
いまは成長段階なので、設備投資を積極的に行っていく。ただ食品は、薬品や半導体の工場のように数百億円規模の出費を要するものではなく、金額が膨大にならない。ある程度の設備投資が終わったら、ファイナンスの必要性が薄れる局面もあると思っている。そうなれば、株主還元での安定配当など、別のお金の使い方を考えている。

2020年代後半に団塊の世代が一気に後期高齢者となる。そこが我々の業界が一番伸びる時期であり、できるだけ早めに設備投資を終わらせて、急増するであろう売り上げをきちんとした製造体制で受け止めつつ、株主還元ができる会社にしたい。

■設備投資で楽をする
–業績が好調なようだが
市場環境と社内の要素の2つの背景がある。環境については、少子高齢化がある。毎日の食事の準備が辛くなってきた在宅の高齢者が増えているのに対して、国の介護保険制度など公的補助は縮小している。例えば、これまでヘルパーが高齢者宅に週5回来て昼食を作っていたものを週2回に変更するというように、現実に削減されてきている。そうすると我々のような、毎日の食事を一食当たり450円からという手軽な価格で配達する業者は、なくてはならない存在として世の中の役に立つと思う。

2019年4月の献立より抜粋。専属の管理栄養士がバランスの良い献立を考えている。

2019年4月の献立より抜粋。専属の管理栄養士がバランスの良い献立を考えている。

社内的な動きでは、製造業の王道だが、設備投資によって業務の効率を上げ、良いものを安く出せるように工夫している。第2四半期では、今まで手作業でパックしていた工程に機械を導入して労働時間を3分の1にし、収益性を改善した。可能な限り設備投資を進めて、楽をできるようにして残業時間を減らしたり、適正な労働力投入で適正な商品を出せるようにしたい。楽をしなければいけない。楽をすると、その分余裕が出て新しいことに着手できる。

–上場時に5~10年で売上高100億円、10~15年で1500店舗を目標に掲げているが
中期経営計画のようなかたちで約束はしていないのでなんとも言えない。ただ、個人としてはそれを目指しており撤回する状況ではない。例えば、人件費や食材原価の高騰など不確定要素がない前提でスムーズに経営できれば、おそらくそれは夢ではなく、確度が高いと考えている。

–重視するKPIは
売上高を重視する。業界全体が伸びているマーケットでは、昭和の頃の経営の考え方である「売り上げは全てを癒す」が通用する。

–FC加盟店数は重視する指標ではないのか
この事業でFCは必ず売上高ゼロから始まる。来店型の飲食店とは異なり、今年50店舗出したからと言って、すぐに売り上げに貢献するものではない。貢献してくるのは次年以降となるため、種を蒔いている状態となる。

FCのオーナー(右)と指導に当たるスーパーバイザー。そのメソッドには清水社長の店舗での経験が活きているという。

FCのオーナー(右)と指導に当たるスーパーバイザー。そのメソッドには清水社長の店舗での経験が活きているという。

–店舗指導のポイントは
当たり前のことがきちんとできているかを見る。営業で言えば、その地域の高齢者宅や施設に月一回以上の営業ができているかどうか。その際の試食アポの獲得率はどうか、どのようなトークやツールを使ったか、本当に行ったのか名刺を見せてもらい確認もする。私自身も店舗出身なので、店舗がどういう場面でサボるか分かっている。人間なので100%の管理は難しいが、可能な限り管理できるかたちでチェック項目やシステムを組んでいる。

–FCにこだわる理由は
事業の拡大スピードにある。拡大してスケールメリットを作る。これによって良い物を安く顧客に提供できる環境を作りたい。そのための規模拡大にはFCが一番早いと思った。

また、この事業はその地域に愛着のある人でないとうまくいかない。高齢者を一軒一軒回るため、例えば、営業に行くときや接客するときも、その地域の話ができる人や、方言を使える人の方が絶対に成果が出るし、サービスを受けるほうも安心する。本部の正社員が落下傘で出店するのは厳しいと思う。

店舗で作られたお弁当は各高齢者宅に配達される

店舗で作られたお弁当は各高齢者宅に配達される

–店舗間でのカニバリゼーションは起きないのか
カニバリを積極的に求めての1500店舗を目指している。フランチャイズはどの店舗も、完全に自由競争で営業エリアを自由に広げられる。自店のエリアに他の店が来るかもしれない。それに納得できる人が加盟しており、結果として人口密度が高い都市には高密度に店舗が配置される。利用者にとって不安定な配達となることなく、バックアップが効く体制となっている。我々はオーナーが直接の顧客ではあるが、本来の顧客は喫食者であり、ある店舗が急遽休店しなければならない場合などに、他の店舗に頼めるようなバックアップ体制は必要と考えている。
■新工場は真空調理を
–2020年稼働予定の第2工場の建設を延期したことは
正確に言えば延期に「なった」と「した」という2つの側面がある。「なった」というのは、工場の建築資材が届かなくなった。発注してから工事を始めるまで時間が掛かりそうだと予想できたので、延ばさざるを得なかった。そうであれば、工場に導入する機械や倉庫部分について検討を重ねて、スペックアップや生産性向上を考えた方がよいのではないかと延期「した」。今年の夏ぐらいには時期と金額などの計画を発表できると考えているが、実際の稼働については夏までに精査して決定する。
第1工場は人が多く機械が少ない工場だが、第2工場は、逆に機械が多く人が少ない工場になる。食材の作り方を第1工場と全く違うものにするつもりだ。第1工場は昔ながらの、大鍋を使って煮物を作り、冷まして真空パックに入れるいわゆる大鍋調理だが、第2工場は真空調理に変える。

店舗では工場から届く総菜類を盛り付ける。食べやすく切るなどきめ細かく対応している

店舗では工場から届く総菜類を盛り付ける。食べやすく切るなどきめ細かく対応している

具体的には最初に生食材をダシやタレと一緒に真空パックに入れ、パックごと加熱する方法を採る。第1工場よりもかなり省人化でき、生産性の向上が期待できる。真空調理に向いている素材と大鍋調理に向いている素材があるので、第2工場がチルド、第1工場が冷凍主体というように商品を作り分けたい。

–延期の影響は織り込み済みか
第1工場でボトルネックになっていた手作業で重量を指定して袋詰めをする工程を変えたことで、生産効率が上がり、製造限界が1.8倍に伸びた。計算上、第1工場だけでも3年間は製造できることが見えている。

–東日本エリア以外での工場建設の可能性は
国内になるか海外になるかは分からない。先々、日本国内で人が雇えるか不安も覚えている。また、いまは外国から人が来ているが、将来的に来てもらえなくなる可能性もあり、国内での増設が果たして合理的な選択肢かという危惧はある。海外工場ということになれば、例えばベトナム辺りに工場を作り、そこからアジア圏に食材を出荷する展開も可能だろう。

–アジアでの事業展開も選択肢に入るのか
現時点では何も決まっておらず妄想の域を出ないが、20年後には韓国がこの事業の射程距離に入る。30年後には中国、40~50年後は東南アジア全体がそうなってくるので、その頃には国内のみならず、その先を考えていると思う。ただその頃には私自身が80代になっており、会社経営ではなくお弁当を楽しみにしている側になっているだろう。

■食事と薬をセットで
–他業種の物品の配送を検討しているとのことだが
想定モデルでは、薬事法の規制がかなり緩和されて、薬剤師でない人でも処方箋薬を届けられるようになる。その頃には、顧客に弁当を個別に配送しながら無料に近い形で薬品を届けることができるようになる。食事と薬は密接に関連している。高齢者は薬の飲み忘れが多く、食事と一緒に届けられるのであれば、食後に飲んでくださいと働きかけられるので、役に立つ。

–データの活用は視野に入るか
いまのところは活用できていないが将来的には考えられる。後期高齢者のリストを保有しているため、そういった人たちを対象にテストマーケティングをしたい会社に対し、個人情報をきちんと守ったうえでマーケティングを手伝うことができる。

寄せられるニーズに可能な限り全力で応えていきたいと話す清水社長

寄せられるニーズに可能な限り全力で応えていきたいと話す清水社長

–最後にメッセージを
我々はなければならない社会のインフラになっていくと思う。補助金がなくとも民間の力だけで成り立つ高齢者向け事業はなくてはならない。業界全体では必ず伸びる。そのなかで残っていく、選ばれるためにはそれぞれの会社の頑張りが必要であり、我々も頑張らなければならない。

 

 

画像などの出典:シルバーライフ

 [2019/4/12 :キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


CAPITAL EYE © 2016
本情報の正確性には万全を期しておりますが、情報は変更になる場合があります。 また、第三者による人為的改ざん、機器の誤作動などの理由により本情報に誤りが生じる可能性があります。 本情報は、情報の提供のみを目的としており、金融商品の販売又は勧誘を目的としたものではありません。 投資にあたっての最終決定は利用者ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。 本情報に基づいて行われる判断について、株式会社キャピタル・アイは一切の責任を負いません。 なお、本情報の著作権は、株式会社キャピタル・アイ及び情報提供者に帰属します。本情報の転用、複製、販売等の一切を固く禁じております。