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マーズフラッグ︓WeWorkで働く社⻑の「我が社が上場しない理由」

企業内サイトの検索エンジンで国内トップシェアのマーズフラッグ。大手製造業を中心に約400社の顧客に持ち、およそ50人の社員を抱える。会社設立は1998年とIT企業では老舗で、現在はWeWorkに拠点を置く。多くのITベンチャーがIPOを一つの到達点とするなかで、同社の武井信也社長に上場から距離を置く理由を聞いた。

マーズフラッグの武井社長

マーズフラッグの武井社長

――上場しない理由は。

上場しないと決めたわけではない。会社設立から6年目にベンチャーキャピタル(VC)から資金を調達した。当時は周囲も自分も上場という形で出資者にエグジットしてもらうのが当たり前という空気。2006年から2016年までの10年間は予実管理を行い、主幹事候補の野村と、デロイトトーマツと三優の監査法人2社、社外監査役を交えて毎月取締役会を開催していた。

だが、学生時代の友人3人で起業したので、仕事の基準は楽しいかどうか。会社の利益や規模、株主価値という概念は創業時の本質に馴染んでなかった。

このため、力の使い方を変えることにした。膝が伸び切った状態で上場するよりも、余力で上場、つまり押し出しで点が入り続ける状態で出ることにした。投資家も基本的に賛同してくれた。継続保有を希望する株主はVCから安定株主にポジションを変え、満期が到来するファンドの持ち分は創業メンバーが買い取ったうえで、新たなエンジェル投資家に持ち替えてもらうなどして、VCの数は10数社から2~3社に減った。

上場の準備に費やしていたお金と時間は、新製品の開発や海外展開に使えるようになった。上場の維持にはコストがかかり、準備だけでも年間何千万円を要する。ただ、せっかく筋肉質な企業体になったので、経営管理体制は維持している。主幹事や監査法人と定期的な経営者レビューで財務諸表のチェックを受け、最短で上場申請できる状態をキープしている。

――VCの出資を受けたきっかけは。
クルマ情報サイト「Goo-net」を運営するプロトコーポレーションから2004年に、第三者割当増資でおよそ5億円の出資を受けた。同社の子会社になるよりも、独立性を担保するために、SBIグループやジャフコ、安田企業投資などから約20億円を集めた。

上場準備に当たって、主幹事選定は10社程度を対象にコンテストを実施した。引受手数料率を含めて提案内容に大差がなかったため、担当者の能力とブランド力で選んだ。エクイティ・ストーリーは各社ともAI、ビッグデータ、検索エンジン、海外展開と、一般投資家に魅力的なキーワードが揃っていたのではないか。類似銘柄は厳密にはないが、データセクションなどが挙がっていた。

――上場の三大理由である人材確保と認知度向上、資金調達にはどう対応しているのか。
採用についてはグローバル人材をスカウトしている。海外のスターバックスでマックを開いているエンジニアに声をかけたりしている(笑)。当社は新卒を100人も採用するような会社ではない。国内では社員が後輩を連れてくる形で優秀な人材を採用できるようになった。IT業界内の知名度は相当に高いと思う。非上場で知らない会社だから不安という理由は減った。創業20年の安定感に加え、トヨタ自動車やソニー、パナソニックなど大企業に顧客を絞っているのも安心材料だろう。

資金調達については、検索エンジンの使用料が月単位で入ってくるため、キャッシュフローは安定している。サービスの原価率は低めで、喫緊の資金ニーズは強くない。もし、若手エンジニアから新しいアイデアの実現に急に10億円が必要と言われても、顧客企業のCVCや投資ファンドから調達できるかもしれない。

その分ブランディングには気を付けている。WeWorkへのオフィス移転や見栄えのよいウェブサイトなど、継続20年の中小企業感をできるだけ出さないようにしている。

――上場は四半期決算の開示義務や継続的な成長といった煩わしさを伴う。
外からの期待はモチベーションになるので苦ではない。だが市場の期待と自分たちのやりたいことにズレが生じる可能性がある。新製品の開発にしても、それがどういう価値をもたらすのかが数字に置き換わる。方針転換などで開示情報と数字がズレた場合、市場に説明し、修正する必要がある。楽しくないからズレたでは通らない。

――では今後上場するメリットは。
成り行きで考えたい。自分たちの力だけで実現できないような大きなチャレンジが浮かんだときに、上場は有効な手段となるかもしれない。

北米で独占状態にあったグーグルの「Google Site Search」が、昨年3月に新規提供を終了した。米国の企業向け検索サービスは2000億円市場と言われている。当社の海外での売り上げシェアはまだ低く、グーグルの撤退は新たなビジネスチャンスになる。

その一方で、Google Site Searchの後釜を狙うベンチャーも登場してきた。彼らが海外資本を使って、想像を超えるスピードで日本のマーケットに進出する可能性もあるため、緊張感は持つようにしている。何らかの防護策が必要になった場合、上場は選択肢の一つになり得る。

[キャピタルアイ・ニュース 池部 渚]


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