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「CBやM&A、全てはAbemaTVのため」、サイバーエージェントに聞く

KIMG2873ネット広告のトップ企業で、最近ではインターネットテレビ局「AbemaTV」の運営に力を入れるサイバーエージェント。藤田晋社長のリーダーシップの下、年間200億円の赤字を公言しながら、元SMAPのメンバーによる「72時間ホンネテレビ」を始め、話題性のあるコンテンツを次々と世に送り出している。これまで表立った財務活動はほとんど見られなかったが、2月に初のエクイティ・ファイナンスを実施。「AbemaTV」のM&A資金に充てるため、2本立てユーロ円CB(ブックランナー:大和)で400億円を調達した。金庫番として同社の飽くなき成長を支える財務経理責任者の石井雅也氏にM&Aの展望や財務戦略を聞いた。

■M&Aの宣伝効果に
――ユーロ円CB発行の反響はどうか
これまではオーガニックな成長を自認してきたが、CBのプレスリリースで初めてM&A戦略を披露した。具体的な買収案件があったわけではないので、使い道の決まっていない資金が400億円もあることを意味する。金融機関や仲介会社から買収案件が持ち込まれ、当社が興味のある分野を示しながら、一緒に考えてもらう形で検討している。

特定のアドバイザーはまだ定めておらず、銀行や証券会社、M&Aブティックにコネクション作りを含めて幅広く相談している。そのなかでこれと思う案件が来れば、藤田や役員会に提案して議論してもらう。M&A投資の期限は2020年9月末までとしており、焦らず慎重に検討する。

――公募型ファイナンスでM&A資金を先に調達する手法は珍しい
一番の目的は「AbemaTV」の収益を上げること。今はCMと月額960円のユーザー課金を収益源としており、これに続く一手を探している。とはいっても黒字化を急ぎたいわけではない。長期的な視点でマスメディアになりたいと考えている。従来の事業の大部分はネット内で完結していたため、例えば物販などリアルに直結する事業はノウハウを持たない部分が多い。M&Aを活用して時間とアイデアを買うという概念だ。

――どういう企業を求めているのか
買収対象とする基準は2つある。一つは「AbemaTV」の1000万人のユーザーを送客できること。分かりやすいのはイベントの収益や物販で、その好例が昨年9月に買収したDDTプロレス。興行試合を「AbemaTV」で配信して団体の認知度を上げれば、試合会場に足を運ぶ人が増える。チケット代が収入となり、グッズも売れる。

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<AbemaTVの新レギュラー番組>

もう一つは「AbemaTV」の集客に寄与すること。ユーザー数の増加には魅力的なオリジナルコンテンツが欠かせない。とはいえ、多額の資金を注ぎ込んでワールドカップのようなビッグイベントを買っても、一瞬跳ねるだけでユーザーは定着しない。そういうコンテンツではなく、オリジナル番組の潤いとなるようなラインアップでじわじわユーザーを集める。「AbemaTV」でしか見られないような音楽やスポーツのライブ中継はポテンシャルが高い。

――マネタイズできるコンテンツとは
2月から試験的に週1回のショッピング番組「売れるAbemaTV社」を始めた。ただの通販番組ではなく、「ハンバイヤー」と呼ぶ売り手が思い入れのある商品を紹介する中国や東南アジアで人気のエンタメ性のある内容になっている。例えば「人気ホストが勧める5400円のインフルブロックのどあめ」といった一癖ある商品を販売している。カレーマニアが開発したレトルトカレーセットは6000個を売り上げた。

また昨年度の株主総会で、「公営競馬・競艇・競輪・オートレースに関するビジネスの企画開発、運営代行業務」を定款に追加した。中央競馬などは制度的に難しいが、地方開催のレースであれば、「AbemaTV」で観戦しながら賭け事も楽しめる。ただ、個別団体との交渉や技術的な面で実現には1年以上はかかりそうだ。

仮想通貨事業への参入準備も進めている。コインチェックの件で金融庁の審査が長引いていることもあり、取引所参入は断念したが、エンタメ事業と仮想通貨は親和性がある。まだ投機的な面が強いが、使い方が多様化すれば、現金よりも利便性が高い。実際、今もゲームの課金はプリペイドカードやアップルペイが使われており、多少ボラティリティのある通貨の方がエンタメ性もある。今後は、「AbemaTV」やゲームなどのグループで展開する事業での独自の仮想通貨の活用に向け、研究と開発を進める。

■マイナス金利で資金を調達
――なぜM&A資金の調達手段をCBとしたのか
「AbemaTV」の収益の幅をどうやって広げるか、その種を撒くための資金調達の手段がCBだった。マーケットからの調達は初めてだったので、金融機関にも相談し、公募増資と借入とCBの3つに絞った。

<ユーロ円CBの概要>

年限 発行額 表面利率 募集価格 払込金額 転換価格 アップ率
5年 200億円 0.0% 104.0 101.5 6460円 36.0%
7年 200億円 0.0% 104.0 101.5 6270円 32.0%

CBが株式に転換されるのは5年後か7年後、あるいは株価が相当高くなった時なので、公募増資よりも希薄化の面で既存株主に配慮できる。また、M&Aを資金使途とするには公募増資の方が難易度が高いと考えた。

借入金利は安いとはいえ、CBはゼロクーポンで104円発行としたため、6億円の発行差益が発生し、実質マイナス金利で調達できた。また、資本コストを睨みつつ、M&Aというリスクの伴う投資資金であることも考慮した。株価が上場来高値で推移しており、想定外の政治イベントもなかったため、当初の予定通りに2018年第1四半期の決算発表から1週間後の2月1日にローンチした。結果としてはM&Aの詳細を社内外に周知する付随的な効果もあった。

調達額については、まだ買収先が決まっておらず、値段も付けられない段階だったため、希薄化率を意識し、全額が株式に転換された場合でも5%程度に収まるよう設計した結果、400億円が妥当と判断した。
――エクイティ・ファイナンスを行うと創業者である藤田社長の持ち分(20%)が低下する
CBが全て株式に転換されれば藤田の持ち分比率は1%弱下がるが、本人は全く気にしていない。かつては3割超を保有していたが会社のステージに合わせて減らしてきた。投資家との対話でも創業者の持ち株比率が議論になったことはない。転換にはこだわっていないため、CBはフラットな商品設計にしている。

■投資期こそ配当優先
――2017年度から経営指標に「DOE(株主資本配当率)5%以上」を設けた
 P53DOEは、「AbemaTV」で投資負担が発生しても配当はきちんと出すという意思表示。「中長期の目線で株主向けの経営指標を出す必要があるのではないか」という株主の提案を受けて採用した。

2016年4月に「AbemaTV」を開始し、2017年度決算から最終利益へのインパクトが発生することになった。「AbemaTV」はテレビ朝日との合弁会社(サイバー60%、テレビ朝日40%)のため、連結納税制度を活用できず、200億円がそのままマイナスとして純損益に計上される。そうなると最終利益が減少し、ROEも下がるので、株主還元策を見直し、経営指標をDOEという形で示すことにした。過去の配当性向は2割強だったが、昨年度は5%のDOEを担保するため、最終利益の40億円を全額配当に回した。

――「AbemaTV」が継続的に成長するために、財務担当としての役割は
 P11収益の柱であるネット広告は2ケタ成長が続いている。財務の健全性を担保しながら成長するというのが今の当社の考え方であり、借入過多は避けたいという藤田の意思は感じている。そのための選択肢を提案するのが自分の役割と考えている。

財務の健全性の目安とするのは自己資本比率と有利子負債キャッシュフロー比率の2点。CB発行前の自己資本比率は50%弱で安定しており、借入金は10億円程度しかないが、追加の資金が必要になった場合は、これらの指標に目線を置いて検討する。

キャピタルアイニュースで4月25日に配信

[聞き手:キャピタルアイ・ニュース 池部 渚]


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