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上場会見:HOUSEI<5035>の管社長、研究開発で種蒔き

28日、HOUSEIが東証グロースに上場した。初値は公開価格の400円を45%上回る580円を付け、573円で引けた。商業印刷システムや新聞・出版社向けシステムを開発する北京北大方正集団公司の日本市場開拓のために、1996年に方正の社名で設立。DTPソフトやシステムを新聞社などに販売する。管祥紅社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

管社長は、顔認証技術のビジネス展開や越境ECの取り組みについても話した
管社長は、顔認証技術のビジネス展開や越境ECの取り組みについても話した

―初値が公開価格を上回った。
株価に関して一喜一憂するようなことはほとんどない。嬉しいことも悲しいこともなく、ひたすら地道に長期的な視点に立った経営を続けていきたい。それがいつになるかは分からないが、何年か経った後に大きくなっている。そのうち社員も成長するし、(蒔いた)種も芽が出て実る種も芽が出て実ると信じている。今と違った1つも2つもケタを大きくしていかないと人生に悔いが残る。

―上場の目的について
我々の会社の特殊な事情としては、顧客に信用・信頼して安心してもらうことが大きな目的としてある。その後に知名度の向上や、経営ツールが増える。優秀な人材が入ってくるといったことや、多少なりとも資金調達もできた。

―(選択肢に)上場の延期はなかったのか
タイミングは選べるものではなく、偶然IPOとしての時期が熟した。値段が高いか安いかということが重要かどうかと言えば、一番重要なものではない。ずっとそれなりに利益を出している会社で、体力もあり、いくら集めなければいけないということもなかった。早く公の会社になって、顧客に信用、信頼、安心してもらうことが重要だった。良くない市況だったがIPOを優先した。

―メディア向け事業の現状のシェアは
市場に関して客観性と権威ある数字がないが、大手では各社にかなり使ってもらっている。一番多いのではないかという感触がある。地方や中小に関しては特にやっていない。ただ、東京や大阪以外にも大手があるので、そういったところには使ってもらっている。

―新聞業界が、やがては完全にネットに移行するとも言われているが、そういう日が来るのか。来た場合には組版システムも打撃を受けると思うが、影響は
メディア業界で紙媒体がなくなるかどうかは、残念ながらそこまで予言する立場ではないし、できないが、紙は紙のいいところがあり、何らかの形で残る可能性が高い。レイアウトを綺麗に作ることは、今のメディアだけでなく、永遠に残るもので、技術はずっと必要だ。分厚い物でないとしても、製造業のカタログを作る必要などがある。そういうところでも使ってもらっている。

もう1つは、新聞社がやっているのは紙周りだけでなく、コンテンツやネットの部分でもかなり協力していて、画像・動画の管理を、紙でなくても必要なノウハウを持っている。メディア各社のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援していく。

―画像のノウハウを生かして画像認識の関連事業を進めていくが、画像を扱うノウハウとは
画像を処理すると、例えば、重たい画像が速く動く、あるいは画像そのものを操作する、レタッチする、色を扱うなどいろいろな意味がある。そのようなこととともに歩んできた企業だ。あらゆる側面に慣れてきた。顔認証はAIのアルゴリズムを使うが、顔はやはり画像だ。そういったこともコロナ禍のかなり前から精度高くできていた。コロナ禍が起きた瞬間に工場に発注して、すぐに端末を作ってもらった。

それだけではなく、例えば、プリンターに端末から直接出力することも、画像周りの処理がかなり早くできた。非常に高く評価された。

いろいろな交渉をしている。我々は研究開発型の会社で、私は社内でいつもやりすぎだと批判される立場で、いろいろなことをしている。社員にいろいろなことをやらせることが、会社にとって最重要の投資だと信じている。全て費用として計上しなければならないので、その期にとっては辛い。ただ、社員の成長のための種蒔きで、将来どれが当たっても、それで、費用の何倍、何十倍も回収できる可能性を秘めていると考えている。具体的には言えないが、そのようなことを毎年やっている。

投資家からは、投資がいつ返ってくるのか聞かれる立場になる。その意味では、今期までは純投資、来期以降は、そのバランスを取っていきたい。何億円も投資してきたことは、営業利益からそれを引いていたことになる。来期からは投資しても営業利益にマイナスの影響を与えなかったというところにまで持っていきたい。その後は自由奔放に、夢を持った社員のアイデアに予算を付けて、それを収穫に変えたい。そのなかでは画像周りはけっこうある。

―日本ではデジタル人材が不足して獲得競争が起きているが、中国ではどうか
中国ではIT業界は非常に地位が高い業界だ。成功している人がたくさんいて、世界に通用する人材も多い。IT人材に良い循環が生まれている。このため、優秀な人材が入る。

元から人口が多く、IT人材が多い。ただ、(要求される)技術がそれ以上に高く、この数年間、中国でもIT人材の奪い合いがかなり激しくなっているのも事実だ。日本に関しては、非常に残念だがゼネコンのような構造が普遍に存在し、ものをつくる人間の地位や待遇が低い。そこには良い人材がなかなか入ってこない。人材が必要ななかで厳しい状態で、その違いが大きい。

―中国で人材を獲得する時に、日系の企業であることのメリットとデメリットは
最終的には収入だ。いろいろなことを言っても続かないので、最後にはやはり、この会社は待遇が良いということや、夢があるかということだ。

我々も頑張らなければ競争に負ける。将来に目を向けたクラウド化などをすることで、顧客にとっても(費用が)安くなる。我々にとっても、1つ(のプロダクトを)作ることを深め続けることで、社員に働きがいを与えることを実現すると、優秀な人が入ってくると信じている。

単なる労働力としてつまらないものを繰り返しているところには、優秀な人材は入ってこない。だから、我々も顧客を説得して、良い業界にしていくためには協力して、良い人材が入ってくるようにしなければならない。

―Adobeなど競合と比較した際の優位性は
Adobeは我々の業界を超えて、一言でいえば尊敬すべき最高レベルの会社の1つ。時価総額も事業領域、製品の完成度にしても、信じられないレベルを成し遂げた素晴らしい会社だ。我々は全面的に比較することは恥ずかしい話で、ただ、局所的には我々のノウハウにフォーカスした場合、比較ポイントもそれなりにあるのではないか。業界にAdobeのような会社があることは誇りに思っている。

―局所的に強みを出していくとはどのようなことか
例えば、プロフェッショナルなメディア業界や、デジタルマーケティング業界などで強みを出していきたい。

―株主への配当は
短期的には、利益を全部配当しても金額は限られる。ITやDX業界はブルーオーシャンでどんどん伸びる。あまり成長のない日本でも成長すると皆が考えている業界なので、いかにリソースを集中して成長に注入することが株主にとって肝になると見ている。当面は今の利益を配当するよりも、研究開発投資など会社の成長につながるアクションを取っていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]