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上場会見:unerry<5034>の内山CEO、屋内外で高精度に測位

28日、unerryが東証グロースに上場した。初値は公開価格の1290円の2.3倍ほどの3000円を付け、2820円で引けた。一定の間隔で電波を発する小さなBluetoothセンサーである「ビーコン」や、GPSで月間300億件のデータを集めるリアル行動データプラットフォーム「Beacon Bank」を運営する。大規模な人流データを分析し、3つのサービスを展開。小売事業者向けのリテールDXや、商社などが関わるスマートシティ案件を扱う。消費財メーカーなど15セクターに顧客を持つ。内山英俊CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

収集するデータは個人関連情報であり個人情報には該当しないが、消費者の同意を取り、安全性の高いデータとして扱っていると話す内山CEO
収集するデータは個人関連情報であり個人情報には該当しないが、消費者の同意を取り、安全性の高いデータとして扱っていると話す内山CEO

―初値について
高く評価されたことは大変喜ばしい。我々としては、世のなかに対してしっかり価値化をして、業績を出すとともに、投資家にしっかりと情報を開示することで、中長期的に企業価値の向上を図ると同時に、社会により役立ちたい。

―技術特許などを含めて競争優位性や参入障壁は
人流というテーマでは、いろいろなプレーヤーがいるのが実情だ。例えば、携帯キャリアやWi-Fi の企業もある。一方で、携帯キャリアの人流データは基地局から情報を取っており、250〜500mぐらい誤差がある。

それに対して、我々は屋外も屋内も高精度に位置測位できるという点が最大のポイントではないか。ほかにもWi-Fi やGPS、カメラ、ビーコンだけを手掛ける会社があるが、どれも屋内だけ、または屋外だけなので、我々は屋内も屋外も顧客(消費者)の行動を連続して把握できる点が最大の優位性と見ている。

もう1点、120個のアプリでしっかり同意を取って情報を取得している。(法律上の)個人情報ではないが、同意を取っているので、例えば、広告用途に使う、より細かく分析してOne to Oneでその人に情報を届ける点でも、しっかりと同意を得ている。キャリアなどの場合では、そこまでの同意が得られていない。

―国内に設置されているビーコンは210万個とのことだが、設置余力はどの程度か
日本でビーコン210万個が十分かと言われると、まだまだ十分ではない。現状、ビーコンが入っているような店舗や場所は、ドラッグストアのような一部の小売店が中心となっているうえ、駅や新しい街に入っている。

これがもっと多くの小売店、ドラッグストア以外の日本全国のスーパーマーケットや外食の店舗にどんどん入っていく状況、そして、東京やスマートシティだけではなく、もっとたくさんの街にビーコンが敷き詰められている状況に関しては、数倍から十倍以上のポテンシャルがあると見ている。

―販売から製造までの領域を丸ごと手掛けたいとのことだが、その中間にあるBtoBも含めた大きな物の流れとしての配送や物流の分野に商機はあるのか
現状我々が行っているのは小売や街においてのマーケティング用途が非常に強い要素となっている。BtoB、物流では物の流れそのものを把握することに取り組むわけではないが、物と人のマッチングの点では非常に高い需要がある。

需要予測の部分で、生産計画をどう作るか。我々のデータをかなり使ってもらっており、それによって例えば、フードロスの問題をどう解決するか、農産物の育成をどう計画するか、飲食店を何時の時間に開けるのかといったところで使われている。

―スマートシティに関して、リアルのセキュリティや自動運転といった分野にはどのようなビジネスチャンスがあるか
我々は個人情報に該当するのものはまだ持っていない。今後も持つ予定はないという状況だが、街における混雑の可視化とその解消、CO2を削減するため、車で移動する人に、どうやって歩いてもらうかという点で一番強いニーズがあると思う。

その次にあるものとして、自動運転も含めたモビリティ全体が我々の目指す姿だ。「ここからここまでは自動運転で行くが、ここからここは歩いて、ここからは電車に乗る」という(連続した)動きを唯一特定できる方法は人流データだ。モビリティ全体の最適化を図るく意味合いで、我々のデータは、自動運転も含めた形で極めて強いニーズがあると考えている。

―日米中で特許を持っているが、海外展開は
海外の市場が、どこが明確な市場なのかと言われると、一義的にはやはり東南アジア市場が最も重要な市場と見ている。理由としては、日本企業で我々の提携先は三菱商事がメインとなるが、今後、スマートシティに投資する際に、当社の人流データと技術を使う資本・業務提携を結んでいる。

特に、三菱商事を始めとした日本企業と一緒に海外に出る先としては、まずは東南アジア市場が一番有望であろうと想定している。

そこに引っ張られる形になるが、一方で、人流データという市場全体を見渡すと、日本よりも大きい市場として米国やEU があるので、日本の企業と一緒に出る以外のグローバル展開も、今後しっかり模索していきたい。

―3つのサービスの売上高がバランス良く伸びているが、分析・可視化サービスが2021年6月期に微減し、翌期にかなり伸びている経緯は
3つのサービスを、その時のクライアントのニーズに合わせて最適なサービスを提案している。2021年6月期の日本の状況は、コロナ禍の第1波から始まって、日本中から人流が消えた年ではないか。多くの小売からより多くの人を集客してほしいというニーズが非常に強かった時期だった。分析よりも、客を集めたいニーズが非常に強く、行動変容サービスが伸びた。

一方で、2022年6月期は、ポストコロナの状況を見据えて、「人流データは今後の未来で必要な情報である」という合意形成が1~2年でなされ、分析をしっかりやっていこうというニーズが高まった。

―今後は小売だけでなく、消費財メーカーも取り込むことで、ビジネスモデルに穴がない印象だが、今後の売り上げの成長率は
斎藤泰志CFO:細かいことは言えないが、これまでは急激に伸びてきたので、今後はもう少しスピード感が落ちそうだ。

―中期財務モデルでは営業利益率15~25%を目指すとあるが、時期的には
イメージ的には3〜5年で実現できるであろうと見ている。売り上げの成長に比べてコストの成長が低いので、利益率は高まっていくだろう。

―CIC TOKYOに入居する企業の上場は初めてだが、CICにいることの意味は
内山CEO:2つある。私が前職でコンサルティング会社に勤務していた時代に大変お世話になった人がCICの会長で、スタートアップに対して非常に強い思いを持ち、それに同意したことが1つだった。

2つ目は、それと関連して、今後のスタートアップの中心地になるのではないか。岸田文雄首相もスタートアップ創出元年ということで、スタートアップのいろいろ人たちと話をし、米国のラーム・エマニュエル 大使がCICに来て交流するなど、まさにスタートアップの中心地になっていくと考えた。CIC TOKYOで、我々が第1号で上場することもあり、いろいろな人から応援してもらっている。

―株主還元の基本的な考え方は
配当は、まずは我々がしっかり事業を作る点で、配当よりも内部留保をしっかり溜めて、投資に回すことを当面の方針としている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]