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上場会見:クリアル<2998>の横田社長、不動産投資をクリアに

28日、クリアルが東証グロースに上場した。初値は公開価格の930円を72.04%上回る1600円を付け、1330円で引けた。同社は、1万円から投資できる不動産クラウドファンディング(CF)の「CREAL」や、個人投資家向けの長期資産運用サービス「CREAL Partners」、機関投資家向けの「CREAL Pro」を手掛ける。CREALは不動産特定共同事業法に基づく許認可事業で、2021年12月末時点の累計調達額は128億円。横田大造社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

横田社長は、金融市場の影響を受けにくいものの個人には敷居の高かった不動産投資を民主化することがミッションであると話した
横田社長は、金融市場の影響を受けにくいものの個人には敷居の高かった不動産投資を民主化することがミッションであると話した

―初値が公開価格を上回った
投資家の期待を肌で感じており、非常に身が引き締まる。一方で、上場はゴールではなく、スタートだと思っている。オンラインの不動産投資市場は成長市場で、上場を機に不動産CFのマーケットを拡大したい。株価に一喜一憂せずこれからも成長を続けたい。

―上場の狙いは
知名度と信頼度の獲得にある。不動産オンライン市場は拡大・成長基調にあるが、日本では認知度が低い。当社が上場することで不動産CFにオンラインで1万円から投資できる資産運用ツールとして不動産投資を見直してもらい、資産運用の契機となるようなサービスを拡大していきたい。

高校でも金融教育が義務化されており、資産運用はこれからの日本の成長産業になると思う。投資の初心者向けにもぴったりなサービスで、家計の金融資産の半分の1000兆円が現預金である事実もある。そういったところを取りにいくサービスとして拡大させたい。

―沿革上、ブリッジ・シー・ホールディングスは徳山明成会長が作ったのか
元々、2011年に徳山会長が創業した会社で、当初と今のビジネスは全く変わっている。初めはいわゆる富裕層向けのファミリーオフィス事業を行っていた。不動産も扱っていたが、私と金子好宏副社長が参入した2017年に、不動産とDXや不動産ファンド事業を始めて、そこから売り上げが拡大している。第2の創業というフェーズが2017年からだった。

―この事業は横田社長と金子副社長が参画してから立ち上げた事業なのか
金子好宏副社長:創業は2011年だが、社長・副社長として入って5年半ほどなので、そこから事業が立ち上がって今の形になった。旧来の事業はどちらかといえば、CREAL Proの部分のみを扱っていた。

―マンション価格が高騰し、投資家の投資力も増しているが、好調な市場動向はいつまで続くか
横田社長:特にファンドのプロ向けマーケットは、円安基調もあって、日本の金利も海外と比べてなかなか上がってこない。物件の利回りと金利のカーブのイールドギャップが、ほかの国際都市と比較して非常に高く、投資妙味がある。海外からの投資資金が非常に入ってきている。

また、水面下でいろいろな投資ファンドから、CREALで組成したレジデンシャル物件を買いたいといった相談が増えている。日本の金利が海外のように急激に上がるとは思えないし、円安基調もすぐに解消するとは思えないので、不動産の活況はしばらく続くのではないか。

―その流れでは、プロ向けサービスが売り上げの13%ほどだが、今後、プロ向けが増えていくのか
プロ向けに直接というのもあるが、(事業の流れでは)まず、ファンド物件としてCREALで確保する。そのエグジットとしてプロ向けサービスがあるので、同時にCREALのポーションも大きくなっていくイメージだ。

―不動産投資の民主化を掲げるなかで、市場では不動産CFを扱うプレーヤーが増えている。投資に適した良い土地を確保し続けられるのか。ソーシングの強みについて聞きたい
他社との違いは、バラエティのある不動産のソーシングができていることだ。他社では、ワンルームを専門に扱う会社が多い。CFをワンルームの本業のビジネスのためのマーケティングツールとして扱い、1口1万円の不動産投資CFに興味があるユーザーを獲得している。我々はCFを資金調達のツールとして真正面から事業に取り組んでおり、そこに大きな違いがある。

取得対象物件に関しても、我々は不動産ファンドの経験を積んだメンバーで、多種多様かつワンルームと比べて大型の資産を調達できる。加えて、他社はCFのシステムを外注するところが多いが、当社はシステム開発を全て内製化している。マーケティングに関しても、大手で近時にCFに参入した会社はBtoBのビジネスには慣れているが、BtoCのマーケティングに精通していないところもある。我々はBtoCのWEBマーケティングの精緻な調整を続けており、良質なユーザーを低単価で獲得できる点も違う。

―強いて言えば、競合はどこか
マーケットは我々が切り開いたもので、ソーシャルレンディングとは違うところだ。不動産CFナンバーワンの当社にとって、その意味では競合はいない状況だが、資産運用・フィンテック分野では、例えば、個人が簡単に資産運用を開始できるウェルスナビなどがある。不動産投資もかつてはいろいろな書面に署名捺印しなければならず面倒くさいものだったが、DXによって誰もが気軽に参加できるようになっているところが似ていると思う。そのような資産運用のフィンテックを参考にしたいと考えている。

―最近、事業会社が金融詐欺のようなものに欺かれるケースがあったが、今後、個人投資家が不動産CFで投資する時代になるに際し、投資先を選ぶために気を付けほうが良いことは何か
かつてはソーシャルレンディングなど貸し付け型のビジネスモデルがいろいろあった。我々が大きな懸念を持っていたのは、投資対象がブラインドになっていることだ。何に投資するのか分からないが「7%だよ8%だよ」という利回りに釣られてしまう投資家がかつては多くいたと思う。それは投資ではなく投機であり、CFの問題点を変えたかった。それが投資型のCFを立ち上げた背景の1つになっている。

情報の非対称性を解消して物件の特性を全て明るみに出す。さらに、WEBサービスの特性を利用してイラストや動画を使って詳細に説明する。そういった情報開示が適切になされているかを、投資家にまず気にしてもらいたい。また、近時、いろいろな会社が入ってきているので、投資実績・の有無は非常に大事になる。それから、どのような人が運営しているか、マネジメントメンバーの素顔、情報がオープンであるか、風通しが良いかといったことに気を付けてもらえればと考えている。

金子副社長:クリアルという社名は、クリアなリアルエステートに由来する。インターネットで大手の鑑定不動産報告を開示しているは我々が初めてで、そのような取り組みは今までなされてこなかった。情報の透明性をひたすら極めていくことで、投資家に安心・安全という思いをもってもらえるのではないか。

横田社長:社名がクリアルでサービス名もCREALだが、クリアなリアルエステートとして、情報の非対称性を解消しようという思いを籠めていることが、他社との決定的な違いと思っている。

―申請中とのことだが、不動産特定共同事業法上の3号・4号事業者になると、どのようなメリットがあるのか
いわゆるSPCを使ったファンド組成が可能になる。そうすると、原則的に物件が貸借対照表(B/S)からオフバランス化される。金融機関からノンリコースローンを調達しやすくなり、B/Sから切り離されることで、法人の大きな資金も集めやすくなることから、CFとしての大型化が可能になる。

込み入った話になるが、収益タイミングに関して、物件を売却した時にフィーが会計上認識されるのが、これまでの1号・2号事業者だったが、3号・4号は、ファンドを組成した時にフィーを粗利として計上できる。そのような違いがあるのでフィーのタイムラグが短くなる特徴もある。

―フィーのタイムラグが短いとどう良いのか
物件の売却で半年〜1年後に収益化されるが、その期間が短くなることで、レスポンスが速くなる点では、収益の確実性が増すという面がある。

―調達資金の使途は
金利負担削減のために、社債を償還する。また、ファンド組成用の資金としても使いたい。

―成長戦略について
海外を見ると、機関投資家(による投資)が伸びていて、我々も、法人向けの営業も進めていきたい。法人とCREALのコラボレーションでプラットフォームを拡げ、GMVも拡大する戦略がある。また、我々の顧客の7~8割程度は投資経験者で、そうした人々を精緻なマーケティングで獲得していたが、まだテレビ広告などマス・マーケティング施策を打っていなかった。我々が狙っているのは1000兆円のブルーオーシャンなので、タイミングを見計らって、マス・マーケティングやテレビ広告で一気に認知を拡大する戦略を検討している。

―ROEやROICをどう見るか
これまで、借入金にあまり依存しないモデルで、今後は、上場を機にバンクフォーメーションを確立して、効率の良い自己資金の使い方を研究し、進化させていきたい。CFで借り入れフリーなモデルで運営している特性を活かしつつも、必要なところであれば、銀行からの借り入れによってレバレッジを高めていく施策も考えていきたい。

―株主還元の考え方は
毎期、確実に利益を出しているが、CFと不動産DXは成長市場で、投資と認知が必要となる。積極的な開発や広告にお金をかけていこうと思っている。しかるべきタイミングで配当を出していきたいが、時期は未定だ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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