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上場会見:ストレージ王<2997>の荒川社長、トランクルームの併設も

27日、ストレージ王が東証グロースに上場した。初値は公開価格の660円を14.55%上回る756円を付け、763円で引けた。同社は、セルフストレージ(トランクルーム)の開発分譲と運営管理を手掛け、前者が利益の8割を占める。直近の管理戸数は140店舗超。荒川滋郎社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

荒川社長によると、ライフスタイルの変化に合わせてトランクルームを利用するケースが増え需要は右肩上がりだという
荒川社長によると、ライフスタイルの変化に合わせてトランクルームを利用するケースが増え需要は右肩上がりだという

―初値の感想は
上場承認の時には860円という仮の価格があって、その後に530円〜 660円の値幅で売り出した。860円まではいかないが、公開価格の660円を超えた。我々がロードショーをしていた時、特にウクライナ情勢が流動的で分かりにくかった状態で(市況が)冷え込んでいたので、それを見て証券会社も極めてコンサバティブな値付けをした。

その後、高値が850円ぐらいまでいったと思うが、そのぐらいが元々評価されていた数字に近い印象で、これからも油断することなく見ていきたい。我々としては860円ぐらいが実状価格としては最初の評価だったと見ており、それに近い数字が出て非常にありがたく、感謝している。

―フロー型収入である不動産の開発分譲は、トランクルーム1本で進めているのか
今はトランクルーム1本でやっているが、千葉県佐倉市のユーカリが丘の商業施設内に床を借りて、そこに内装をしたトランクルームを4月30日にオープンする。商業施設の中への出店は、これからも増やしていきたい。

実現していないが、住宅併設のトランクルームも開発できるか考えている。自宅を建て替える時に、賃貸併設住宅にする人がいる。大家と賃借人が同じ建物に住むので、トラブルがあると夜中にも大家に連絡するなど、管理が大変だという声がある。

一方、トランクルームは、夜中に出し入れする人もいるが、住んでいるわけではないので、短時間で利用が終わる。年間に数回しか出し入れしない人が多いので、住宅併設よりトランクルーム併設のほうが住環境としては快適ではないか。まだ実現していないが、可能性があると見ており、商業施設やオフィスにトランクルームを付け加えることもできると思う。

―そうすると住宅メーカーなどとの協業も、今後の可能性としてはあるのか
発表できる段階ではないが、打ち合わせを始めている。

―フローとストックの比率を将来的にどうしていきたいのか
現在、運営収入のみの粗利益が、1億円と少しで、販管費が3億円強であるので、比率というよりは、ストック収入で販管費をカバーできる企業体質にしたい。今の出店ペースでは、4年後ぐらいのイメージでいた。もし開発が止まったとしても会社として維持できる水準をまず目指す。かつ、サービスの幅を広げるなど新規事業的な分野でプラスアルファが出れば良い。

―今後のエリア展開の考え方は
今は、本社のある関東中心と、営業所がある岡山、一部九州にもある。基本的には無人の管理なので、多少飛び地になっても、巡回などはその地方の業者に委託できるので、全国に展開ができると思う。ただ、当面は、関東と岡山、既に拠点がある福岡の辺りを狙っていきたい。今、主力で扱っている200室程度の大型案件は、まずは東京23区を中心と思っている。今年開発する案件も、豊島区と新宿区、世田谷区、地元の市川市の4件だが、さらに攻めるとしたら中央区や港区のような「超都心」もこれから進めたい。

―屋内型のトランクルームは「超都心」にはあまりないと聞いているが、難しさとストレージ王ならではの強みに基づく開発の開発性は
ハードに関しては、トランクルームの建物は断熱や空調が少し難しい。親会社が建設会社であり、ノウハウがある。

都心型のトランクルームは、なかなか土地の値段も高いので難しいが、開発の実績が出て、信託銀行とやり取りが増えてきた。富裕層が持つ都心の土地で、マンションを建てにくい土地はこれからもまだあるだろうと踏んでいる。地形が悪い土地などで、うまく使える土地が都心にあれば、是非開発したい。

駅に近いピカピカの真四角の建物が建つ土地は、マンション・デベロッパーと競合して土地の値段が合わないが、駅から少し離れてしまったとか地形が悪いような土地は、分譲型マンションと比べると、いわゆる価格負担力が足りないので、デベロッパーと完全に競合できないが、少し使いにくいなど、そのような要素を持つ土地があれば、都心で是非チャレンジしたい。

―そのような土地を探す時に、競合との関係で、難しいことはあるのか
トランクルーム専業で物件開発を積極的にやっている会社はあまりない。上場しているエリアリンクやパルマが我々と同業だが、今、そこまで出店を強化していないと見ている。むしろ、オフィスやマンション開発会社とぶつかることが多いため、土地の使いにくさをうまくかわすなどして勝ち抜ければと考えている。

―物件の仕入れについての強みは
トランクルームはその土地によって相場感があるので、ここに建てたらどの程度の収入があるのか算定できる。一方で、これまで建ててきた実績があるので、建築費がどの程度かも掴める。それを差し引いた残りが土地に出せるお金なので、この土地の値段だったらトランクルームを作っても物件として売れることが掴める。土地を無理な値段で購入することがない。逆算して土地を買えることが強みだ。

都心型案件は2019年に開発した川崎市の梶ヶ谷のものが最初だった。この時は仕入れや情報収集にかなり苦労していた。最近6件ほどを開発した実績がある。不動産業界は実績のある業者に情報が入りやすくなり、この3年ほどで入ってくる情報が多くなったことがメリットだ。また、我々は出口と呼んでいるが、開発した物件を買ってくれる投資家を確保できているので、土地を買っても1年以内に売れる自負はある。いい土地さえ見つかれば開発できることが強みだ。

―メットライフ生命が販売先として大きいが、リスクとして捉えているのか、安定した販売先を持つという捉え方なのか
当然、安定した販売先があるという意味と、相談できる関係にあるので、このぐらいの物件であればいくらで買ってくれますかと聞ける安心感はすごくある。買ってもらった実績もある。また、(メットライフ生命は)年間数百億円の不動産を購入しているので、ニーズはあり、トランクルームの購入は初めてだが、ボラティリティが低い安定した資産との評価を受けており、これからも継続的に取り引きをお願いしたい。

一方で、1社に集中していることがリスク情報として指摘されるため、既に商談中の会社が数社あり、今後複数の販売先に広げていきたい。メットライフ生命にはお世話になっているので当然今後とも大切な顧客であると思っている。

―寺田倉庫のminikuraなど荷物の収納サービスと連携するようだが、それと提携するネットオークションなどとの関係はどのようなものになりそうか
minikuraはヤフーオークションと連携していて、そこに入っている品物をオークションに出して、売れたら直接発送してくれるサービスがある。私は寺田倉庫にいた人間なのでよく知っているが、商品の売買に連動している。

利用者が我々のトランクルームとともに使うことで、賢く資産を管理する手伝いができないか考えている。例えば、minikuraの窓口で我々のトランクルームの利用を申し込めるなど協業できないか話し合っている。

―相互送客のみならず、オペレーションまでワンストップになり得るのか
そこまで具体化はしていないが、対顧客という意味で、相互層客に加えて、マイページのようなもので荷物や部屋の管理ができるのであれば、そこに相乗りするといったことは、今すぐではないが可能性としてある。

―公共部門は取引先になり得るのか。例えば、防災の観点から、長期的な目線で何かあるのか
商談ベースでは、防災用品を1ヵ所にまとめて保管するために我々の拠点を一部借りてもらうことはできると考えている。今後の社会的な貢献からすると、防災対策は重要なことなことなので、我々の機能のなかで手伝えることがあれば協力していきたい。

―株主還元の方向性は
企業体質としては十分ではないので、今期はまだ配当を出していない。ただ、今後の事業展開や業績の推移を見て、きちんとした株主還元を進めたいが、現時点では未定だ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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