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上場会見:エフビー介護サービス<9220>の栁澤社長、レンタルと介護で地域密着

7日、エフビー介護サービスが東証スタンダードに上場した。初値は公開価格の1400円を11.50%上回る1561円を付け、1734円で引けた。同社は、信越・北関東エリアで有料老人ホームの運営と福祉用具の販売サービスを展開する。2022年1月末で107拠点(福祉用具事業35ヵ所、介護事業72ヵ所)を持つ。栁澤秀樹社長が東京証券取引所で上場会見を行った

柳澤社長は、人材教育とドミナント展開で地域からの信頼を得て事業を展開していると話した
柳澤社長は、人材教育とドミナント展開で地域からの信頼を得て事業を展開していると話した

―初値の受け止めは
正直に言って驚きの価格が付いた。これは投資家の皆さんを始め、機関投資家も含めて、当社に期待するところが非常にあるのではないかとますます責任を重く感じている。

―上場の狙いと、上場しての感想は
信頼や認知度をアップして、優秀な人材を集める。中途・新卒採用を問わず、良い人材を求めたいのが1番の目的だった。特に当社の場合、労働集約産業であるので、人が全てだ。いくら介護ロボットが進んでも、対面のほうがまだ必要かと思う。2番目としては、集めた資金を施設整備に投資して更なる成長戦略を描いていきたい。2本の目的があって上場する運びとなった。

二宮真司取締役:介護業界のトップ企業といっても、シェアが1割もあるわけではないので、介護財政を考えても、行政はより効率的かつ介護の質は落とさないことを求めると考える。その点で当社は、比較的小規模の施設のなかでも、しっかりと収益を上げて、事業を継続できるノウハウを生かしながら業界のステータスも上げる立場になれると良い。

従来の上場会社は、入居金を何千万円と受け取っている高額路線が比較的多いと思う。当社は、地域密着型という保険の分野で、市町村でいえば中学校の校区ぐらいのエリアの利用者にサービスを提供する地域密着で運営している。特化型の会社が上場した意味はかなり重いのではないか。

―保険の区分も地域密着型で、リーズナブルに使ってもらっていると思うが、利用者負担はどの程度なのか
柳澤社長:所得に応じてだが、大体は1割負担の人が多く、所得がある人に対しては国の方針で2~3割を負担している。当社は公費を国から受け取っているが、特徴としては、例えば、一時金は、高級路線のほうは5000万円〜1億円の入居一時金を受け取るが、当社の場合は最大で100万円を受け取る。本当に誰でも当社のサービスを使ってもらえるリーズナブルな価格で運営している。

柳澤美穂副社長:入居系では、月額で20万円に行かない程度だ。

二宮取締役:食費と家賃相当分を受け取って、保険の請求分の自己負担を考慮しても20万円に満たないぐらいだ。

柳澤副社長:介護度が軽度でも16万円ぐらいから20万円台後半程度が当社にとっては一般的だ。費用負担は軽減できると思う。

二宮取締役:一般的な年金の金額に若干プラスすれば利用してもらえる水準を考えている。

―レンタル事業から介護事業に利用者をつなぐビジネスモデルはいつ頃から機能し始めたのか
柳澤社長:偶然私がフランスベッドの代理店を営んでいたが、2000年の4月1日に介護保険制度が開始する時に、「レンタル事業をやってくれないか」ということでスタートした。その時に行政に届け出を出したら「介護のほうも是非やってください」と2度も3度も頭を下げられたので、当初から2本柱でスタートして、経験を積んできて信頼に応えられていると思う。

柳澤副社長:シナジー効果の部分に関しては、まず、手すりや杖 1本から始まり、そこでエフビー介護サービスという名前を聞いて知り、その対応が良ければ、次の段階に入っても、この会社であればという安心感を与えることができていると思う。

―運営がかなり難しい看護小規模多機能型居宅介護を強みとしているとのことだが、もう少し詳しく聞きたい。
柳澤社長:レンタル商品の貸し出しで日々2万2000人が利用しているが、その人が介護やサービスを受けたくなった時に、すんなりと近隣の多機能施設を利用できるのが他者と違って強みになっている。小規模多機能看護と介護の2種類があるが、どちらも本当に使い勝手のいいサービスで、またそれに対する人材教育がしっかり進んでいるため、集客もでき、中度・重度の利用者の獲得によって黒字運営になっているのが強みだ。

二宮取締役:この2~3年の利用率がかなり改善しており、利用者にとっては使い勝手がすごく良いが、受ける当社としては、人員の配置やオペレーションの難しさがある。それをこの2~3年でしっかりと現場で身に付けた経験を、今後活かしていけるのではないか。

行政側としても、しっかりオペレーションできるところに任せたい意向があると想定されるので、今後の強みに活かしていけると見ている。

―入札の時に有利ということか
行政側としては、複数(の業者)からエントリーがあった時に、実績や提案内容について精査すると思うので、しっかりとアピールできる実績を積んできている。

柳澤社長:行政の施設整備のコンペに参加すると、(落札の)確率は8割となっている。10ヵ所提案すると今までは8ヵ所は獲得できている。

―8割の確率で獲得できる秘訣は
今までの地域行政に対する信頼度は非常に高いと思っている。当社は全ては利用者のためにという理念を原点として掲げており、高級路線でなくSDGs目標の3番目にある「全ての人に健康と福祉を」を実践することで、その人の経済レベルに関係なく、全ての人に福祉を提供していきたいという理念の原点があるので、全ての人にサービスを提供したいという強い願望があり、それが(行政側に)受け止められているのではないか。

―2本柱の事業を運営するうちに蓄積されたデータをどう活かすのか
二宮取締役:レンタルでは、現時点の利用者は 2万人で、過去分を含めると10万人以上になる。活かし方としては、介護外のサービスになるだろうが、今の段階ではどう使うかまでには至っていない。

柳澤副社長:ゆくゆくは、自律支援や介護予防に手が回っていけば良い。
二宮取締役:現時点で介護サービスを本流として極めていく。経営資源をどう活用していくのかは、今後の課題としている。

―介護業界は人材の定着が課題になるが、対策は
柳澤副社長:正社員化率は70%とほかの事業所と比べて高い水準を維持している。介護事業は非正規社員が多いが、正社員採用を進めている。決して高い給料ではないが、安定していることから、離職率が10%を切っているので安定感はある。

また、海外からの技能実習生や、特定技能といった人たちの定着も、30数人ほどいるが、長く働きたいという要望に応えて介護福祉士の資格を取得する研修制度も取り入れている。初任者研修や実務者研修を行い、介護福祉士になって永住ビザを取得できることから注目されている。

コロナで入国できなかった点に関しては、5月から再開する。その間も、ホテルなど異業種から、「帰国できないし、業界的に必要ないと言われて」入ってきた外国人は、介護に移行して教育をして、介護特定機能のビザを取得させて定着している状況でもある。私も海外に出向いており、しっかりとしたルートの下で海外人材が今後も入ってくる仕組みができている。

―売上高・利益成長の今後の見通しは
二宮取締役:売上高が上がると利益率が下がる傾向になりがちだが、新規施設を開設しても、それほど利益率が下がらないビジネスモデルを確立できている。セグメント別では、介護サービスはほぼ横ばいだ。福祉用具レンタルは、既存の営業所を活用しながら営業員も採用してシェアを高めることで、売り上げを伸ばしていく。そう考えれば、固定費的な部分の比率が下がっていくので、その分利益率は良くなっていくと想定している。

―施設数などの目標は
柳澤社長:5年後に200億円を目指している。今年も用具の事業所を1ヵ所、3カ所の施設整備が決まって着工するところだ。来年は、7ヵ所ぐらいは指定を受けてサービスを着工できるのではないか。加えて M&Aだ。小規模事業者の場合、非常に経営が苦しくなっていることもあるので、しっかり見極め、デューデリジェンスした後に、買収してその面でも成長戦略を描く方向で進んでいきたい。

二宮取締役:期を閉めたばかりなので、中期の経営計画はできるタイミングで発表したい。5 年後というのは、中期計画のさらにその先の部分を見据えてと捉えてもらいたい。今の数字を実現するには、既存の施設と新規で作るだけでなく、M&Aを取り入れながらになるので、改めて示したい。

―大株主にフランスベッドがいるが、事業上の関わりは
柳澤社長:ベッドのレンタルに関して、フランスベッドからの仕入れが非常に多い。私がフランスベッドにいた縁もあり株主になってもらった。

二宮取締役:基本的にベッドの仕入先で、株主のなかには、パラマウントベッドにも株主として入ってもらっている。いずれも仕入先の関係だ。

―株主還元の考え方は
前期を締めたばかりで方針を明確には示せていない。特に、前期末の株主は上場前で既存の株主しか存在しないので、そこは従来通りの方針と考えている。逆に、上場後に新たに株主になった人たちには、配当中心にはなると思うがしっかりと還元したい。ただ、できれば安定的な配当ができるような、中長期で当社を支援してもらえるような株主になってもらいたいので、安定配当を中心とした配当政策を考えている。

―配当性向はどの程度か
先々で30%を目指していくべきだが、自己資本比率が十分に高いとは言えないので、いろいろな事業展開をするには、まず体力をしっかりと蓄えて、投資とのバランスを考えながら行うことが結果的には投資家により多く還元できると考えている。初年度から30%で配当するとは考えていないが、最終的にはその水準を目指していくべきだ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

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