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上場会見:Institution for a Global Society<4265>の福原社長、AIとブロックチェーンで公平に評価

29日、Institution for a Global Societyが東証マザーズに上場した。初値は公開価格の1720円を16.4%上回る2002円を付け、1801円で引けた。同社は、AIを使った人材評価サービスを提供する。企業向けのHR事業と教育(EDテック)事業を展開し、売上比率はおよそ6対4。基幹システム「GROW」のAIアルゴリズムが他者によるバイアスや評価の恣意性を除去し、公平で一貫した評価を行う。福原正大社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

大学の最先端の知見を取り入れるために、大学系のベンチャーキャピタルとの連携にフォーカスしたと話す福原社長

大学の最先端の知見を取り入れるために、大学系のベンチャーキャピタルとの連携にフォーカスしたと話す福原社長

―初値が公開価格を上回った。市場の評価をどう捉えるか
マーケットからの期待を受け、非常に良いスタートを切れた。IPO市場はいろいろ言われることがあるが、多くの経営オプションを取るという意味では非常に大きいチャンスであり、市場から評価を受けたことで、日本だけでなく世界に展開していくうえで、大きなツールを受け取ったと考えている。

韓国を見ると、(日本はより新規上場企業)数が多い。逆に米国や中国に比べると非常に少ない。日本のIPOマーケットでは、監査法人を取れない、証券会社の制約条件がある。いろいろな制約によってベンチャーキャピタル(VC)だけが増えてもなかなかうまくいかない仕組みがあるなかで、もっと広がっていけばよい。我々もこのような形でIPOができることで、次への成長が広がったことでも、日本のマザーズ市場の持つ意味は大きいのではないか。

―足元の相場環境が悪化するなかで、上場の延期を検討したのか
一切考えなかった。そこまでのロードショーなどを通じて、我々に対する需要を非常に強く感じることができた。中長期的に見れば、市場は我々の価値を評価すると、市場を信じており、正しく値を付けてくれるであろうということを考えていたので、延期を考えず、今日しっかり上場できるようにと考えていた。

―社名の由来は
2010年に立ち上げた時に、国際社会が良くない方向に行き、分断が高まっているという思いを強く持った。分断をもう1回つなげたい、そういうことに寄与する会社でありたいと、 Institution for a Global Society とした。「a」というのは、我々は絶対的な善があるとは思っていないので、分断なき世界が良いと協調してもらえる人たちに貢献してもらいたいと名前を付けた。

―経歴を見ると、金融から入ってなぜこの事業を手掛けているのか
2010年に会社を立ち上げたが、それまではずっと金融の世界にいて、博士課程で統計学を専門にしていてデータを扱っており、クオンツというデータ解析を行っていた。

世界に出ていくなかで、日本の教育がなかなか変わらない一方、世界が急速に変わっているという世界観があった。また、海外、特に先進国では、「認知」と呼ばれる答えがある問題を解くという大学入試型の仕組みから、「360度評価」で周囲からどう考えられているのか、想像力や課題設定力はどうなのかという評価と教育が当たり前(のものに変遷している)。

日本の人たちの基礎力は果てしなく高い。特に日本の場合は、小中学校の基礎教育のレベルが高いにも関わらず、どこかの段階で、勉強を継続(できるモデルに)したり、あるいは大学で勉強しないまま終わるという仕組みを少し変えることで、世界でもっと輝ける日本にできるのではないか。

マーケットにいて見てきたが、経済の処方箋の基礎は教育で、それがうまくいかないと結果としてその先も難しくなると考えていた。それで入っていくことになった。データをベースにしているなかで、日本の教育や人事の世界は、今回のコロナ禍で明らかになったが、データやデジタルにおそろしく弱い。この領域はデータ化やデジタル化で、日本のポテンシャルを広げられるのではないかという思いと、会社を興せば間違いなく競合がおらず、ブルーオーシャン的に進んでいけるという思いがあった。

―世界的には競合は
米国に、我々と比較的近い領域にパイメトリクスという会社がある。我々は2017年にハーバード・ビジネス・スクールのケースになった。教員がケースを書く際には世界中の会社にリサーチを掛けるが、どの会社が最先端を行っているのか調べた時に、我々ともう1社の候補となったのがパイメトリクスだった。最終的に我々が選ばれ、パイメトリクスはまだ上場していないが、ユニコーンになったともいわれて非常に伸びている。(彼らは)非認知という領域を徹底的に深掘りし、欧州にも参入しようとしている。世界的に見ても(競合は)数社というレベルで、市場の可能性は十二分に大きい。

―米国にライバルがいて、日本でもHRやEDテックが盛り上がっているが、そのなかで勝ち続ける強みは
非認知能力と360度分析がある。潜在的な意識をどう取ってくるかだが、この分野で多くの特許がある。潜在意識を抜いてくる時には、Implicit Association Test(IAT)というテストで、2016年にハーバード・ケネディ・スクールの学長が、潜在意識を抜き出すことができる唯一の方法とした技術を持っている。その領域に他社は入ってこられない。360度分析で評価者のバイアスを抜くのは、2つの特許を持っている。この領域でも他社はそう簡単に入ってこられない。特許を通じた参入障壁を作っていることが強みだ。

教育で360度評価を、日本だけでなく世界でもこのように言えるのは我々だけだろう。アジア開発銀行の採用や、そのブータンでのプロジェクトに携わったこともある。国際特許が成立しているので、世界で戦える下地がある。

―HRとEDテック事業の業績が伸びているが、何が追い風になっているのか
結果としてコロナ禍が追い風になっている。特に教育事業でリアルだ。GIGAスクール構想がなぜできたかといえば、コロナだ。昨年の1月頃まで、日本の公立の小中学校で、タブレットを誰も持っていない状態だった。学校に来られなくなったので1人1台にタブレットを持たせ、小中では96.3%の自治体でカバーできるまでになった。我々の仕組みは1人1台のタブレットやPCがないとできない仕組みになっている。

それ以上にWi-Fiが学校になかった。昨年の1月まで、タブレットがあってもWi-Fi環境が弱すぎて何もできない状況が公立の小中にはあった。経済産業省と文部科学省の頑張りで、我々の仕組みを誰でも使ってもらえるようになった。これはGIGAスクール構想のおかげだった。

HR事業は、来年度に向けて、企業における従業員1人あたりの教育費を増やすと税制メリットがあるという税制大綱が出ている。また、米国では、SECで昨年11月に全ての上場企業は人的資本の定量化が義務化された。今年、日本は東証のガバナンスコードで人材の定量化を是とした。人材のデータ化できることで、HRテック企業にとっては追い風となる。

我々はDXをどのくらいできるかという能力を図るツールを持っている。コロナ禍でトップもデジタル化しないとまずい(と気付いた)。コロナ禍で大変な人たちが多かったことを理解したうえであえて言えば、企業と学校では、世界に追い付ける可能性が出てきて、それにフィットしたツールを提供したので、コロナ禍が1つの追い風となって今年度も一気に50%の成長率を達成した。

―業績について、今期は黒字化したが、今後ブロックチェーン事業を進める時に、赤字を掘って投資をするのか。ずっと黒字を続けるのか
現時点では、HRテックとEDテック事業は黒字化の基礎ができており、しっかり伸ばしていく。ブロックチェーン事業は、実証でかなり良い状況が見えてきている。今回の上場でそれなりに資金も得たので、それを有効活用しながらブロックチェーン領域に投資をより深めていく。

現時点では、毎年度黒字を上げていこうと考えている。ブロックチェーン領域は足元でNFT(Non-Fungible Token)を含めてマーケットが非常に広がっている。一時期、暗号通貨でマイナスのイメージがあったが、NFTでプラスのイメージに変わっており、我々にとってはとても追い風となる。仮想通貨とは切り離してブロックチェーンの部分のみを有効活用する仕組みを作ることができ、特許を出願中で、その部分のプライバシー権が厳しくなる可能性が大きいと見ている。

また、メタバースが一気に注目され始めている。メタバースの世界になるとNFTも含めてブロックチェーン領域は必要になってくる。あらゆる領域でどのような可能性が見いだせるのかを考えながら、大きなチャンスがあると分かり、必要であればしっかり投資したい。

―ブロックチェーン技術を広告に使っていくとのことだが、個人の情報を継続的に収集できると、いわゆるone to oneマーケティングの実現が可能なのか
より個別化できる。これまでは、特徴量を取るような形式のマーケティングが中心的だったが、ブロックチェーンをうまく使うことができれば、個人がより多くの情報を載せるインセンティブが働く。我々のブロックチェーンの使い方は、パブリックチェーンに全ての情報を乗せるものではない。個人のデータをまず2分割し、さらに暗号化し、一部分だけをブロックチェーンに乗せて、残りをQRコード化させて本人がコントロールする仕組みを取っている。

(世間では)2年前に、(学生が)ある情報を知らない人に渡してしまっていた。一旦プラットフォーマーに情報を渡した学生は、その情報を二度とチェックすることができない。ところが、情報の一部をブロックチェーン化し、その情報を知るためには常にブロックチェーンにアクセスしなければならない情報を作っておけば、誰が自分の情報を見ているか完全に追跡可能になる。その部分を活用すると、個人は学生を含めて、安全だと思えば多くの情報を載せてくれる。

今までは、学生たちがあまり載せたくなかった授業の成績のみならず、例えば、統計の領域では、「統計の計算力がどの程度あるか」、「議論する力はどのぐらいあるのか」といったデータを載せようというインセンティブができる。広告でもそのデータを使うことができるので、非常にメリットが取れるので、指摘の通りone to oneが特徴量でない形でできるチャンスと見ている。

―HR領域のツールをいろいろな会社が使って、自社の従業員を常日頃評価しているが、データ活用の観点から、今後の可能性として、会社間での合意などを前提に評価情報が複数の企業をまたがって利用されることはあるのか
実際に、ある2つの企業でそのような議論を始めている。「GROW」は58社の大企業が使っており、いくつかは副業を許可し始めている。副業でどのような人が来るか、また、最近では、能力開発のために、これまで出向先ではなかった企業に人を出していく場合に、(検討のための)共通軸が必要になる。開示しているライオンの事例では、全社的に我々のシステムを使ってもらっているが、「自分たちの外の軸が欲しかった」という導入の背景があった。ライオンは現時点で(副業や未知の出向先に人員を出すこと)を考えていないが、その可能性を検討し始めている企業は存在する。

我々が目指しているブロックチェーンの未来像は、関係する良い会社同士でお互いにやり取りすることだ。また、今は人を1~2年間出向させた時に、その人が伸びたかどうかは、他社にいるため分からない。我々の仕組みを使うと、同じ共通項でデータを取り続けるので、成長したのか否か、どのポジションにどう送ったらどう成長したのかが全て見える化できる。今後の可能性領域として企業に積極的に話している。

―評価を受ける従業員の定性的な納得感はどうか
我々の仕組みは、育成目的で使ってもらう場合が多い。データを後で取ると、若い人たちはとても満足度が高い。年齢とともに満足度が変わってくる。今の若い人たちはフィードバックを受けることに学生の頃から慣れているカルチャーを持つ。特に我々は評価者評価を行い、評価の際のバイアスを抜くので、上司との相性や好き嫌いで「嫌われているのではないか」と思っている人も、その要素が取り除かれた評価を人事部に見てもらえるので、納得感は高まりやすい。非常に満足度が高く、ライオンでも2回目の評価を取り始めるため、全社員のデータを取っており、その点では、想定した以上に高い。

―会社のパーパスが「分断」をなくすとある。現状で、システムを使うのは大企業や、トップマネジメントの意識が高いケースではないか。この仕組みは、社会にどの程度広がり得るのか。中小零細企業や、ホワイトカラー以外の職種への展開はどうか
HRの領域は、現時点では、大企業に絞っている。分断という意味で、我々が最注力しているのは教育事業だ。経産省の事業は、企業の広告を見た保護者や子供たちが、その広告の対価をもらえる仕組みになっている。その対価を使って親が子供に教科書などを買ってあげられる。我々が解こうとしている1つの分断は、保護者の財政事情に関わらず、良い教育を受ける機会の平等を作ることで、(解消すべき)分断という意味で近い。

HR事業では、大量のデータを受け取るほうが効果をもたらしやすい。当面の間は中小や零細企業はスコープに入っていない。ただ、ずっとしないというわけではなく、現時点で何も決まっていないということだ。

―70~80%の利益率とのことだが、基礎は粗利か営業利益か
中原成美社長室長:粗利だ。データを使っていることから、継続的に60~70%台に上がってきており、なかでも2022年3月期は70%台後半を目指していく。

―海外売上高比率の目標は
福原社長:コロナ禍の直前、昨年の3月にアラブ首長国連邦(UAE)に1ヵ月ほどいたが、政府の4省庁に我々の仕組みをパイロットで使ってもらった。海外案件もあるが、コロナ禍で外に出られないが、終息後は、我々を選んできたUAEとフィリピンの最大手の代理店を通じて海外戦略を考えていく。ただ、コロナ禍の終息見通しが付かない。訪問せずにビジネスを進めることができるかというと、最初の部分は、国のレベルで案件を受けるので行かざるを得ない。(コロナ禍が)終わり次第、海外に積極的に行きたい。

―今後のTAM(Total Adressable Market)について、教育領域がHRの2.5倍程度だと記憶しているが、売り上げの6割をHR事業が占めている。今後は教育事業が過半を占めるのか
今の時点では、両方とも5割程度の成長率を見込んでいる。だが、教育事業はまだまだデジタル化が企業より遅い。教育事業はサブスクリプション型のビジネスモデルを採っているので、伸びる時に一気に伸びていく可能性がある。それがどのタイミングで来るのかだが、日本の学校ではタブレット・PCを使いこなせる教員と、そうでない人がいるので、キャッチアップするスピードが上がると大きな成長を望める。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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