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上場会見:GRCS<9250>の佐々木社長、市場の成熟で変わるモデル

18日、GRCSが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(3600円)を50%上回る5400円を付け、6400円で引けた。同社は100人以上の専門人材によるコンサルティングや、企業のガバナンスやリスク、コンプライアンス(GRC)に関するツールの導入支援などで、全社横断的な問題解決や管理強化、業務効率化のためのサービスを提供する。佐々木慈和社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

佐々木社長は、事業が成長する背景として、ビジネス上の外部環境に変化が起こると、企業側に問題に対応するニーズが都度発生すると説明した
佐々木社長は、事業が成長する背景として、ビジネス上の外部環境に変化が起こると、企業側に問題に対応するニーズが都度発生すると説明した

―初値が公開価格を上回ったが、株価の受け止めは
真摯に受け止めたい。事業をするのが主なので、既存事業を伸ばすことに注力したい。

―この時期に上場する狙いは
もっと早くできると思っていたが、このタイミングになった。この領域に投資をする市場ができていなかった。昨今、コロナ禍もそうであるし、日本と海外との取引(が進むなかで)の変化が速くなっている。そこで、企業としては何かしらのアクションをしなければいけないという責任の度合いが変わってきた。その時期に計画通り事業が伸びた結果としての上場だった。

―上場企業がターゲットだが、何割ぐらいがGRCSの観点のサービスを使っているのか
現状のクライアント数が105社で、そのなかで年間取引高3000万円以上の企業が10社ある。残り95社は取引高が小さい。そこをどんどん増やしていくのが戦略の1つだ。

―そうすると、成長の余地は十分にあるのか
仮に、分母が上場企業であるとすると、規模感によってティア1からティア3があるが、現状では、ティア1企業に対するサービスで、少なくとも10倍、さらに100倍というのも、市場としては存在すると考えている。

―日本市場に合うようなサービスを提供しているとのことだが、具体的にはどのようなものか
例えば、我々の提供している外部委託先管理の製品がある。ライセンスフィーがとても高く、オーバースペックな海外製品が日本でも売られているが、日本のマーケットに合わせて、価格的にも、項目的にも日本で必要とされるものに絞って提供するように差別化を図って製品を開発している。

―コンサルティングとの組み合わせという観点ではどうか
それも同様で、監査法人系のコンサルティング企業で、具体的には、デロイトトーマツ コンサルティングやPwCコンサルティング、KPMGコンサルティングといった経営コンサルに近しいところが我々と同じ領域のサービスを手掛けている。一方、我々はモデルの組み方が違っており、ソリューションとプロダクト(の導入・運用)、モニタリングと一気通貫で包括的なサービスを提供する。単純なコンサルではなく、プロダクトの強みによる差別化を明確にしており、安価に提供できる。さらに、テクノロジーが付随することで明らかなメリットが出てくる。

―ビジネスモデルは課金型なのか、案件ごとなのか
現状は、95%がソリューションで案件という形だ。5%だけがSaaSモデルとなっている。2023年までこの割合を変えるつもりはあまりない。まずは年間取引高3000万円以上の企業を100社程度にする。一方で、2023年以降は、5%の(SaaSモデルのプロダクトの)部分の導入を増やす。まずは今のモデルを展開することに注力する。

―2023年以降、プロダクトのSaaSモデルに軸足を移していくと、顧客側で完結するものを作らなければならないが、それでも扱いが難しいという場合には、顧客をサポートするカスタマーサクセスなどが伴走するようなモデルになるのか
2017~2018年はプロダクト中心の事業を展開していた。日本企業では、G(ガバナンス)は経営企画室で、Rはリスク管理室、Cはコンプライアンス法務関連部署、Sは情報システム部門が扱う。残念ながら、企業内でこの領域の人材が足りていなかった。「製品は良いが購入しても使えない」ことがあったので、今はソリューションで人員を増やしながら取り組んでいる。2023年以降にマーケットがもう少し成熟し、かつ我々の製品におけるデータの量もさらに蓄積されるので、顧客側である程度完結できるモデルに切り替えていきたい。

―製品の手離れが良くなることで、利益率が一段向上すると思うが、そのイメージはどのようなものか
完全に変わってくる。今のソリューションとプロダクトの比率は95対5で、大企業のなかでも一番大きな金融機関や通信キャリアに対してサービスを提供している。

おそらく、都市銀行や地方銀行、ほかの通信事業者などティア2の企業に提供する際には、ソリューションとプロダクトが50対50程度のイメージで、価格に関しても現状の7掛けから6掛けで提供するのが次のフェーズだと想定している。その時に利益率がだいぶ改善していく。

―売上高を顧客の年間予算として捉えることで、粗利率が改善傾向にあるというが、定量的な目標はあるか
トップラインもそうだが、我々は1社当たりの年間取引高3000万円以上の企業を増やすことをKPIにしている。この領域はいわゆるコストセンターで、どの企業も好んで投資したくない。しかし、今の世の中はどのような企業も、最低限の投資をしなければならないことが前提にある。その際の最低限の投資予算が、金融業界や通信、グローバルによって異なる。それぞれの予算を明確に1社当たり3000万円以上のクライアントにフォーカスする。

―2021年11月期は大幅な増益だが、今後もこの程度の利益率で推移するのか
2023年までは今のビジネスモデルを拡大するので、基本的な利益率に関しては(現状の水準で)継続していくと見込んでいる。一方、2023年以降では、データがだいぶ貯まっているので、データを活用したビジネスモデルの提供で、もう少し安価にできる。ティア2の企業が、「この領域にある程度の投資をしなければならない」という時代の変化のタイミングではないかと思うので、それ以降は、利益率が変わってくるのではないか。

―来期以降の市場動向に関して、定性的に売上高や利益については
今までの成長率を維持しながら進めていける程度の市場規模があると見ている。利益に関しても2023年までは今のモデルを拡大していくので、ある程度の利益率の確保は今後2年にわたって改善していくと考えている。

―中長期の観点を含めて株主還元は
2023年までは今のモデルを横展開するため、会社の成長にドライブをかけたい。一方、2023年以降は事業モデルがかなり変わるので、そのタイミングで株主還元をスタートさせることを検討したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]