株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:日本エコシステム<9249>の松島社長、環境事業を半分以上に

8日、日本エコシステムが東証と名証の2部に上場した。初値は公開価格(2120円)を3.77%上回る2200円を付け、1930円で引けた。公営競技向けの「トータリゼータシステム」やファシリティ業務などを手掛ける公共サービスと交通インフラ、環境事業を3本柱とする。2020年9月期のセグメント別売上高比率は、公共サービスが半分程度で、環境が10%弱。松島穣社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

目先だけでなく、全て長期的な事業の構築を狙っており、300年企業を目指していると話す松島社長
目先だけでなく、全て長期的な事業の構築を狙っており、300年企業を目指していると話す松島社長

―初値の受け止めは
2200円で3点数%上振れし、胸を撫で下ろしている。今後は株価を見ながら緊張感を持って進めていきたい。

―東証と名証への重複上場の狙いは
当社は愛知県一宮市の、名古屋駅から電車で10分程度の場所に位置している。名証への上場は、地域創生と地元への貢献を表し、そうしたことに IRを含めて取り組んでいければと考えた。また、名証は個人投資家に向いている取引所でもある。

―日本エコシステムという社名の由来は
1998年に有限会社エコシステムからスタートした。その時には、これからは環境事業が重要になると考え、上場企業の工場の屋内の照明器具の安定器を取り換える仕事からスタートした。

エコシステムという社名では、幅広くいろいろな環境事業を行えるのではないかということ、また、エコシステムという言葉に関しては、今ではいろいろな用語が出てきているが、当時はエコシステムといえば環境と結びつきが強いイメージで、それに由来している。

―各事業間のシナジーやクロスセルは
人員の面では、全てにいえることだが、電気通信関係は基本的に人事交流ができる。販売に関しては、(取引先が)地方自治体や中日本高速道路のグループなど公共性が高いことから、3つのセグメントでも営業面でも非常に有効なシナジー効果が出ている。

―事業セグメント間の、技術面のシナジーは
公営競技場には券売機があり、この保守・メンテナンスを行っている。それに近しい技術があるため、同じメンバーが高速道路のETCの保守も行い、人の行き来がある。その部隊が環境事業では太陽光発電設備を設置する。高速道路の維持管理を行う鋼構造物の担当メンバーも太陽光発電設備を設置する。非常に順調に人事交流が進んでいる。

―環境事業の、排水処理剤のマロックスは画期的な取り組みで伸ばしたいとのことだが、海外展開はマロックスを中心に伸ばすのか、それとも新製品を随時投入するのか
まずはマロックスを中心に、実績のある商品から拡大していく。海外は、カントリーリスクを考えると、日系企業の海外法人に販売したい。

―公共サービス事業では、AIで競輪の予想をするなどシナジーがあるが、AIは環境事業などほかの領域とのシナジーはあるか
排水処理の場合、採取した水を分析して薬剤を投下するのが流れだが、現在は薬剤を投下するタイミングを人の勘で見極めている部分がある。将来的にはAIを使い、(顧客の)製造工程で、製造量がこの程度増えると薬剤を投下しなければいけないという(ことを計測や管理を通じて)準備できる。水質が悪化してから製剤を準備するのが一般的だが、AIを使って時間を短縮でき、基準値を超えた排水を出さないように管理することを検討している。

―マロックスを使う排水処理のオペレーションを効率化する意味合いがあるのか
そうだ。

―中長期的に環境事業の売上高比率の目標は
50%以上には持っていきたい。

―中長期的な事業全体の成長率の見通しは
公共サービスと交通インフラに関しては、売上高で毎年5~10%程度、環境事業に関してはもう少し高めていきたい。

―今後の展開としてスマートシティや自動運転、自動車と道路との間の通信といった分野が登場する想定されるが、そのような領域には参入可能なのか
現在も準備を進めている。

―SDGsの取り組みは本業を通じて行うと思うが、それ以外にCSR的な活動を行っているのか
元々、創業の思いの部分で(SDGs的な要素を持っており)、私の感覚では、(世のなかに)SDGsが広がって安心している。数値を含めて定量的に環境が良くなっていくのではないかと非常に喜んでいる。

―投資家と話していて、そのような観点から株を買おうという感覚は感じられるか
先日、ロードショーで26社の人と話して、そのような質問はなかった。また、「未晃道」という社是を作ったが、特に反応はなかった。機関投資家は思想的なものには関心がないと感じた。

―今後の借り入れと株式の発行のバランスは
現在はスタートしたばかりなので、金融機関と証券会社と相談して組み立てていきたい。決まった方針は、今はない。

―株主還元は
安定的に配当していき、中長期的には配当性向25%を目指していきたい。

―今期の配当は未定となっているが
稲生篤彦取締役:今のところは配当を進める予定だ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

関連記事