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上場会見:レナサイエンス<4889>の宮田会長、コロナの肺傷害に経口薬で

24日、レナサイエンスが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(670円)を45.6%上回る976円を付け、826円で引けた。同社は、低分子医薬品の開発と、医療機器やAIなど複数のモダリティ(治療手段)を扱うバイオベンチャー。基礎研究から医師主導治験まで一気通貫で行い、「がん幹細胞」を標的にした根治治療のための医薬品や、新型コロナウイルス感染症の治療薬を開発している。東京証券取引所で宮田敏男会長が上場会見を行った。

宮田会長は医療機器分野に関し、これまでと全く違う使い捨ての内視鏡の承認申請を準備していると話した。
宮田会長は医療機器分野に関し、これまでと全く違う使い捨ての内視鏡の承認申請を準備していると話した。

―初値が公開価格を上回った
まずは投資家から期待され、評価されたことに感謝している。本当に身の引き締まる思いだ。期待に沿うように研究開発して株主に適切に情報を開示し、信頼を損なわないように努力したい。

―想定価格が630円で公開価格が670円と40円高くなったが、機関投資家の反応は
池田和博取締役:非常に良い感触だと思うが、主幹事証券が少し上に上げて、630~670円でブックビルディングを行ってもらった。主幹事をはじめ証券会社にうまく動いてもらい、我々の良いところもアピールしてもらったと思う。上限に張り付いた形のブックが入ってきてレンジの上限で決めてもらった。

―ロックアップについて聞きたい。今日は公開価格から4割ほど上振れて始まったが、終値はストップ安で乱高下した。売出価格の1.5倍以上では、例えば、DCIパートナーズや東北大学ベンチャーパートナーズといった会社は、ロックアップが解除されるのか
その時だけだ。

―要は1005円を上回った段階で解除されるということか
そうだ。

―終値がストップ安だが
叱咤激励という言葉があるが、“激励叱咤”の順番で来た気がする。期待もあって非常に良いところで始まったが、前引けにかけて下がり、その後だらだらと下がってしまった。頑張ってやるようにと言われる一方、気を引き締めてやるべきという声があると思うので、しっかり事業を進めていきたい。

―宮田会長は上場後も株式を多く保有しているようだが
宮田会長:基本的にはこの会社が安定していくためにできることは最大限行いたいと思う。それ以上のことは現時点では考えていない。

―いつ頃売り出すのか
全く考えていない。会社が安定するために責務を果たしていきたい。

―ベンチャーキャピタル(VC)は引き続き持つのか
池田取締役:3ヵ月間はロックアップで、株価が1.5倍になった時にのみロックアップが解除される–というふうに考えている。VCも仕事なので、どこかでマネタイズしなければならないと思う。時期はあるので意識はするが、そうなったときにも買ってくれる人がいるようにIRも含めてしっかりやっていく必要がある。

―今日の下落に関して、1.5倍を超えたので今日売却された可能性は
分からないが、可能性はもちろんあると思う。

―公正取引委員会が初値と公開価格の乖離について調査している。今回、初値が46%ほど上回っており、正直に言って公開価格をもう少し高く設定できたのではないか
宮田会長:想像に任せる。

―上場手続きの制度的な部分で、変わっていけばベンチャー企業の上場資金が…
個人的に感じていたのは、メジャーな機関投資家の発言がインフォメーション・ミーティングで参考になっているので、その影響がかなり大きいという印象を持った。

―慢性骨髄性白血病(CML)では、「がん幹細胞」をがんニッチから追い出すことで、チロシンキナーゼ阻害薬(抗がん剤)で直接攻撃できるアプローチだと思うが、世界でも新しい手法なのか
少なくとも幹細胞に対して影響を与えてがんを治す薬自体がまだない。コンセプトとしてはいくつか言われているが、治験にかかっているものは少ない。薬になれば全く新しいタイプのカテゴリになる。

―ほかのがんにも広げていきたいとのことだが、どのようながんを考えているのか
市場が大きいところは固形がんだ。ただ、固形がんは、がんの幹細胞の研究が非常に難しく、当社がCMLを最初に手掛かりとしたのも、1番よく分かっているがんであったためだ。だが、オーファン(患者数が少なく治療法が確立していない希少疾患)であるため、固形がんでやれたらいい。

―可能性としては全てのがんに使えるのか
がんの幹細胞という概念が固形がんではっきりしていない部分があって、そこは大きな話をしてもいけない。確実にがんの幹細胞が証明できるがんに関しては積極的に展開していきたい。

―新型コロナウイルス感染症の治療薬について複数社が軽症段階での治療薬を開発しているが、優位性は
当社が扱う化合物は、経口薬かつ肺傷害を対象にする。おそらくこのキーワードでかぶってくる薬はないと思う。経口薬の場合、ほとんどが抗ウイルス薬で、肺傷害となるとアクテムラのような抗体治療や細胞治療といった形だ。経口で肺傷害に対するものはそれほど取り組まれていない。

―来年に第3相試験があるのか
今、後期第2相試験を来年の3月終了のメドで、100例で進めている。コロナの場合は、ワクチンにしても経口薬にしても「条件付き早期承認制度」を使えるので、第2相の結果が良ければ、その仕組みを使って早く薬を届けたい。

―最短でどのぐらいか
早期承認が成った場合は、最短で2023年頃にはいけると思う。

―治療薬の適応症は、軽症から中等症なのか中等症以上なのか
軽症・中等症の定義はよく変わる。前期の試験の際には軽症患者も入院できたが、今は中等症以上、さらに重症患者しか入院の対象ではない。我々の薬は飲み薬なので、外来処方ができる。1年間の長期毒性に関してはヒトでも治験が終わり、問題ないので、外来で使われるのであれば、できれば軽症患者から使ってもらいたい。

今後、後遺症を持つ患者が結構出て、外来でフォローすることになるだろうから、そのような人に使ってもらいたい。治験自体は、今の定義では中等症の入院患者を対象とした重症化予防の視点で進めている。

―承認申請をする際に軽症を含めるか検討するのか
最初から入院患者だけではないと思うので、どこまで広げていくかは国が最終的に決めると思う。例えば、抗体カクテルも、注射薬だが外来などいろいろな所に広がっているので、コロナはほかの疾患とは違う印象を持っている。

―第一三共製薬にオプション権を付与しているが、具体的な動きは
この結果で良ければ前向きに捉えてもらえる発言で、治験にはまだ一切関わってもらっていない。来年の3月以降に具体的な話をしたい。

―第一三共もともに資金などを投入する形になるのか
今の試験は、第一三共製薬は全く手を付けていない。そこから先の開発に関して、オプション権が移行した場合には、グローバルに取り組んでもらうことになるので、当然そのような費用は第一三共製薬が持つと思う。

―今後の話として、モダリティ間でのシナジーはあるのか
まだ、それほどはない。当社の場合は医療機関とのネットワークがあって、医療の課題を解決するので、医療現場の声が結果として医薬品や医療機器、人工知能になり、いろいろな形で出てくる。だが今は、それらがまだミキシングする段階にまで至っていない。

―上場での調達総額と資金使途を改めて説明してほしい
オーバーアロットメントも含めて16億5000万円ほどになる。現預金と合わせての大きな使い道は、白血病の治療薬の第3相試験を自社で行いたい。また、今第2相試験でなどで、やってみたいが予算がなかったものが、来年に向けて1つか2つ国内外のものがある。新しい試験を組み入れたい。

また、AI事業が5つほどある。かなり注力している分野なので、10ぐらいに広げていきたい。バイオ医薬品、具体的には核酸医薬品や遺伝子治療を1つか2つ、創薬ベンチャーや企業から完全にライセンスを得て、当社の持つネットワークなどを使って開発していきたい。

―中長期的に黒字化はいつ頃か
池田取締役:来期までは赤字、その後も費用が先行するので、3~5年後と考えている。我々は研究開発をしないと将来がない会社なので、黒字化は非常に重要だが、将来の投資をしなければならないので、3、4、5億円とお金を使う。これを絞れば黒字化はできるが、それが最終的な目的ではなく、黒字化して以降大きく利益を伸ばしていくことが目的だ。ここ1~2年は赤字で、3~5年目に黒字になればいいという希望を持っている。自然体でお金を使いながら黒字になっていきたい。

―今後の財務戦略とIRの考え方は
今回の公募増資で、今後2年と少しの開発費用を調達できた。現預金もあり、開発以外の経常的な費用は賄える。2年後ぐらいの時点で状況を見ながら何らかのことを考えていく。IRは、これからやっていこうと思うが、なるべく小さいことから大きいことまで適時に株主に知らせながら、状況をよく知ってもらいたい。積極的にやっていきたい。

―株主還元は
資金を投資して大きなリターンを得られるのか、その段階で少し株主に報いるのか勘案しながらバランスを取っていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]