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上場会見:ユミルリンク<4372>の清水社長、1000万通の配信性能

22日、ユミルリンクが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(1000円)を71%上回る1711円を付け、1500円で引けた。同社はメッセージングプラットフォーム「Cuenote(キューノート)」を運営する。大量のメールを高速で配信し、顧客は通知やマーケティングなどに用いる。サイバーエージェントやサイボウズの子会社を経て、2011年2月に阪急阪神グループに入った。清水亘社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

この数年の解約率は、SaaS系企業が到達目標とする0.5%以下になっていると話す清水社長
この数年の解約率は、SaaS系企業が到達目標とする0.5%以下になっていると話す清水社長

―初値が公開価格を上回ったが、感想は
投資家から期待と評価を得られ、大変ありがたく思っている。また、売買数が非常に多いようにも見受けられた。多くの投資家が関心を持ったことは感謝の念に堪えない。同時に投資家の期待に応えられるように、事業をしっかり推し進めていく責任を実感した。

―上場には、阪急阪神ホールディングスグループの通信情報事業の伸びで、今後M&Aなどで成長したいという背景があると聞いているが、M&Aやアライアンスによる成長イメージは
グループ全体としては、上場によってM&Aやコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)で、阪急阪神HDグループの情報通信事業を伸ばしていく計画を立てている。具体的なM&AやCVCの計画はまだ立っておらず、私のほうでは把握していない。もう一方の視点としては、親会社であるアイテック阪急阪神は、当社がこれまで堅調に事業を伸ばしてきたため、次なる成長のステップとして株式を公開することによって、さらなる成長を見込めるのではないかとして、当社のIPOに関して理解を得て進めた。

―競合が多いと思うが、特に強みは
配信性能と品質に自信を持っている。1回当たりのメッセージ送信量が500~1000万通というオーダーがあった場合に、必ず当社と競合のA社との2社コンペになる。背景としてECの成長やスマートフォンの普及で、メッセージの配信量はこの数年で伸びている。2016年から2021年まで継続して当社の製品を利用する顧客の月間メッセージ送信量は1.8倍ほどに増加している。速度や規模ニーズが高まっている。配信性能から当社製品が選定され、市場のなかで評価されている。

―配信量が1.8倍に増えたというが、スマートフォンの普及が一巡し、今後は伸びないのではないか
販売促進と通知に使う顧客がいるが、販売促進の顧客は、メールだけでなくLINEやTwitter、 Facebookなどあらゆるものを使ったECでの販売促進を行っている。大手になればなるほど、それぞれの通信手段の特性によって効果や訴求する情報量、情報を読み込むタイミングが違うので、各ツールからの収益を一定程度見込める。

そのため、並行して使う傾向が2007年頃にTwitterやブログが始まった時から継続して変わらないため、これからもメールは伸びていく。外部の市場分析レポートを見ても、急激な成長ではないが2023年までの年平均で8%成長するとされている。

―既存クライアントの通信手段が増えるから通信料が増えるのか。新規クライアントが入ってくるから増えるのか
ECを運営する顧客はそうなのだが、これまで会員数が10万人であったものが、100~200万人と母数が増えている。同時に、これまで自宅のPCが送信対象だったところ、スマートフォンに変わることで肌身離さず持ち歩く、一定の地域や場所で受信できる場合があり、企業側がメッセージを送信するタイミングが増えている。ユーザー数の伸びと送信タイミングの増加で送信量が増えている。例えば、飛行機や新幹線に乗る際に乗車を促す通知は、少し前までにはなかったが、増えている。

―そのような通知を企画するのか
顧客が企画することが多い。当社はこの規模、品質、速度でできるかと依頼を受けることが多い。

―メッセージングプラットフォーム化の進捗状況と業績に与えるインパクトは
メッセージングプラットフォーム構想には2017年に着手した。まず、メッセージングチャネルを増やそうと、これまでメールやアンケートのサービスだけであったものに、第1弾としてショートメッセージの配信サービスを展開した。

直近の成長先略としては、ショートメッセージの市場は伸びるので、足元はメールとショートメッセージの配信サービスを伸ばして収益を高める計画だ。3年ほど後をメドにチャネルを1つずつ拡充し、収益を伸ばす予定だが、現時点では販売・収益計画を開示できる状況ではない。

―2021年12月期の業績予想は、経常利益や純利益が微減だが、スポット的なものか
今年度のトップラインはコロナ禍の影響が若干残るリスクを反映している。経常利益については、株式公開に伴い一時的な費用を計上している。今年度の営業利益は3億5000万円と昨年度の3億2200万円を上回るが、上場関連費用の計上で、経常利益は前期をわずかに下回り減益の見通しを出した。

―そうすると、経常利益は前期比2割増、純利益は13%増というイメージで成長させていきたいのか
これまでもそのようにしてきたし、今期もIPO費用を除けばそのような計画になっている。

―今後の利益成長は
まだ事業規模も小さいので、売り上げの成長とともに利益の成長を遂げていく必要がある。具体的に示せる数値計画はないが、前期比で増収増益を実現することをポリシーとしており、今後もその考え方を取る。

―コロナ禍が追い風になるように思うが、コロナのリスクがあるとはどういうことか
昨年の緊急事態宣言の発令後に実際に発生したものだが、我々はエンタープライズ向けの顧客では、顧客のエンジニアとネットワークやシステムの設計に6ヵ月~1年かけて仕様を定める。コロナ禍で顧客側に在宅勤務が増えると、仕様を詰める打ち合わせが遅れる傾向が出た。今年度にも大型案件を予定しているが、場合によっては遅延する懸念も捨てきれないことから影響を勘案した。ただ、実際には顧客が使うZoomやWebexなどオンラインツールの浸透で、現時点では目標をほぼ達成している。

―株主還元の考え方は
現在、配当などは未定だ。当面は株価の上昇や事業規模の拡大、時価総額の拡大など株価で還元したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]