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上場会見:モビルス<4370>の石井社長、ノンボイス比率50%をクリア

2日、モビルスが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(1280円)を43%上回る1830円を付け、1780円で引けた。同社はコールセンターにチャットサポートシステムを提供する。独自開発のオペレーション支援AI「ムーア(MooA)」を使い、自動応答(ボット)と有人対応を組み合わせて電話対応以外の「ノンボイス」領域が占める比率を高める。石井智宏社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

ユーザー視点のAIよりもオペレーション目線のAI開発に注力していると話す石井社長

ユーザー視点のAIよりもオペレーション目線のAI開発に注力していると話す石井社長

―このタイミングで上場した狙いや目的は
顧客の中心が大企業・エンタープライズで、安心して使ってもらえるソリューションであり、安心して付き合ってもらえる会社であることを体現していくことが重要で、上場はプラスに働くと考えた。

タイミングは、(会社の規模が)もう少し大きくなってから、もう少し早くなどいろいろあったが、ここで上場というステップを踏んで、ここからしっかり成長していく姿勢で取り組みたい。

―料金体系は
SaaSビジネスの王道である月額基本料とオプション料金の組み合わせと、一部商品では従量課金の組み合わせになっている。ざっくりしたイメージだが、例えば、チャットボットだけを使うと月額15万円になる。LINEからも(問い合わせが)入ってくるようにしたい場合、LINEオプションを使ってもらい、(追加で)月額10万円ほどになる。チャットボットは月額20~30万円ぐらい。(一部は)裏で使うエンジンに行ったりするが、それが何となくの価格となる。オペレーションが使う「MOBI AGENT」に関しては、オペレーターに付与するIDに課金する。1ID当たり1万2千円となっている。

顧客がライトに使うとなると自動系のソリューションから入ってくることが多い。チャットボットやボイスボットだけを使い、月額20~30万円でスタートする。そこに手間のかかる有人オペレーションが入ると利用料金が大きく上がる。オペレーションにかなり組み込まれているので離脱しにくい。

―最先端の使い方だとどのぐらいかかるのか
あくまでイメージだが全部含めて月額200万円ほどになる。

加藤建嗣CFO:OEM経由では価格帯が異なるが、当社が直接提供するとその程度になる。

―目論見書によると、ムーアは外部のオープンソースやAIを利用しているが、その本質は独自開発のアルゴリズムか
石井社長:基本は当社オリジナルのアルゴリズムを開発している。一部をほかのAPI(Application Programming Interface)などを活用して、複合的に組み合わせることでスピードや精度が上がる。自社製のみにはこだわらないが、肝となってくるものに関しては自社製だと考えている。

―そうすると、アルゴリズムと、例えばIBMのWatsonやほかのAIのエンジンを柔軟に組み合わせて運用できるのか
その通りだ。チャットボットに関しては、実際にWatsonやマイクロソフトのLUIS、国産のチャットボットのAIエンジンを組み合わせながら提供している。ボイスボットに関しても複数のエンジンを組み合わせながら出来上がっている。エンジンによって得意分野が違ったりする。例を言えば、ボイスボットの場合、日本人の名前を認識することに長けたエンジンもあれば、地図の住所の認識に長けたものもある。それらを組み合わせて精度をより高める。

―競合の認識は
大きい意味ではコンタクトセンター向けのソリューション、電話のシステムを提供している会社となる。このコロナ禍で、電話自体も交換機というハードウェアなど(を含む)オンプレミス型のシステムから一気にクラウドにシフトしている。クラウドにシフトする時に周辺領域もシステム化しやすい。重厚長大な会社が存在する領域だが、外資系のアバイアやジェネシスといった会社だ。これらは競合にはなり得る。ただ、我々が手掛けるテキストベースや自動化領域はそれほど得意でない。

直球で我々がぶつかっていくとすると、チャットボットで一部有人対応のボットを持つ会社や有人モジュールを中心に手掛ける会社が競合になっていく。チャットボットは非常に競合が多い領域で、日系だけでも80~90社が存在すると言われている。我々は少しずるい立ち位置で、チャットボットを提供している会社と連携して我々のチャットボットを出している。オリジナルの機能と外のエンジンを使いながら、ITRの発表では、エンタープライズ向けのマーケットシェアでは1位となっている。

チャットサポートでは競合が少なく、大規模なセンターでの利用に耐えるという意味では、外資系を入れても6~7社ぐらいと思っている。例えば、セールスフォースやライブパーソンがいるが、外資系では日本オリジナルの機能は使いにくい。また、日本の会社はカスタマイズが非常に好きで「システム連携してこういうことをしたい」ということが多い。そういったニーズへの対応を含めて、外資系の会社よりは、日本で根を張っていてオリジナルのソリューションを提供する会社に軍配が上がると思う。

―ターゲットとなる業種・業界は
業界を割いていない。あえて言えば、顧客とのコミュニケーションが多い、コンタクトセンターの席数が多い会社が我々のソリューションを使うことで効果を出しやすい。もちろんそうではない会社も顧客になっているが、目線としては100席以上のセンター規模を持った会社が主流だろう。

―コロナ禍の影響は追い風になったのか
昨年の第1次緊急事態宣言が出る手前に受けたインパクトは、6月から7月にかけて当社が商談を持っていた顧客の検討軸が伸びた。ただ、そこを越えてから企業側の業務の推進がリモートに切り替わり、落ち着いた段階から、我々の市場に対しては非常に追い風になった。

報道でも出たが、コンタクトセンターは人が密になって運用しなければいけない点が課題視され、それを回避するために在宅オペレーションをどう組んでいくかに各企業が取り組み始めた。在宅を考えた時に電話よりもテキストベースのコミュニケーションのほうがハードルが低い。

もう1つはコロナ禍でDXという言葉がコンセプトとして流行し、トップマネジメントレベルでの変革意識が出てきた。我々のパートナーであるトランスコスモスなどコンタクトセンターを運営するBPO企業にそのプレッシャーが及んでいる。変革を求めるスピードがコロナ禍で変わってきた。一過性の需要の増加もあるが、地殻変動的な動きとして我々が勧めるノンボイスや自動化の取り組みが増してきた。長期的に追い風になる。

―SaaSプロダクトであり、サブスクリプション売上高比率を上げていかなければならいとのことだが、機関投資家からすると44%は物足りないようだ。ARR(年間経常収支)をどう積み上げるのか
比率は徐々に上がっていくものと考えている。コンタクトセンターのノンボイス市場の拡大がこれまでよりも加速していくのではないかと予測している。施策としては、まずはしっかりとマーケットシェアを獲得していくことが一番大きなポイントだろう。

もう1つは、ノンボイスの比率が50%を超えて、そのうちの半分が自動化される時に、その状態の顧客は当社の製品をほぼ全部使ってもらうことになる。ただ、既存顧客のなかでもフルパッケージを使っているところは非常に少ない。

このため、2軸でいきたい。新規のマーケットは我々の直販の営業部隊とパートナー企業で押さえていく。そこで取った面を1つひとつ深掘りする。そのための商材は全て揃っている。新規×既存の深掘りの掛け算でSaaSの売り上げを上げていく。

―関連して、現在は大企業向けにサービスを展開しているが、今後裾野を広げていくうえで、もう少し簡易なパッケージを展開する可能性はあるのか
あり得ると思うが、当面はエンタープライズ市場にかなり特化した形で事業を展開していきたい。マーケットにおけるノンボイス市場はパイが非常に小さい。市場の成長を我々がしっかりドライブしていく。一方で、軸はずれるがエンタープライズ企業に加えて、最近は自治体が伸びている。この事業は2本目の柱として生まれつつある。ある意味分かりやすいパッケージでの展開は進んでいる。ただ、将来的にもっとライトな使い方、中堅企業を含めた市場に入っていくかというところは視点としては持っている。

―行政サービス向けにはどのようなものを提供するのか
自治体用には基本商材をパッケージングして自治体が使いやすいように提供するのが基本だ。例えば、福岡市に使ってもらっている市民向け情報配信パックは「MOBI CAST」という配信ツールをベースに、生活情報配信などとして使う。

ただ、一部を特化させた形で、機能を自治体用に寄せたものがある。例えば、MOBI CASTをベースに作った「SCHOOL CAST」は学校の連絡網をメールからLINEに変える。これは自治体向けに特化したものになっている。それらの組み合わせになるが、基本は商材をうまく組み合わせて分かりやすくしている。

―テキストベースの事業は多言語化するのか。海外展開は
テキストであることから多言語化はしやすい特性を持っている。海外での運用となると、海外にコンタクトセンターがあって、海外の人に使ってもらっているが、対応内容は日本語というのが現状だ。多言語のチャットに利用されることは想定内だ。当社のシステムは多言語対応しやすい形でシステムが組まれている。

事業展開として海外をどう考えるかという点に関しては、視野に入っている。ただ、日本市場には非常に伸びしろがあるので、まずはここをしっかり押さえていく。

―現在、コンタクトセンターでの顧客対応チャネルの8割が電話だが、それを減らしていくためにはどのような課題があるか
チャットボットやチャットサポートを入れる単発的な取り組みだけでは、ノンボイス比率50%をクリアできないと思う。顧客がどのような問い合わせをしてくるかというWEB上での動線や、電話に性質が近いボイスボットを組み合わせて、顧客の労力が低い問い合わせ方法をナビゲートしながら的確にチャネルを作っていく。複合的な動きが必要になる。

特に金融系の会社はノンボイスの取り組みがしにくい要因がある。個人情報の取り扱いだ。本人確認業務に個人情報を使うが、ノンボイスの適用外になる会社が多い。このボトルネックを解消していきたい。機能リリースを含めて取り組みたい。

―開発中のアバターとは
POC段階だが、これまで対面業務で対応していた店舗や新幹線のチケットカウンターでは、細かいニーズに対応するには人がよいと思うが、実際にそこに人がいなくてもよい。カウンターの衝立の前に何かがあって人がいるかのようにすれば事は足り、それを実現するのがアバターだ。これまで人がいた場所であるため、実感値のあるインターフェースが必要でアバターを立てるが、裏にはリモートとしてのコンタクトセンターがある。

先日まで熊本空港で実証実験があった。大きなくまモンのパネルがあり、話しかけるとその上にいるアバターが回答してくれる。利用者が困っていると有人対応に移行する。インフォメーションカウンターの代わりに使ってもらう商材だ。まだPOCレベルなので、今後どのような企業ニーズを酌んでいけるか複数社と検証している。

―資金使途に借入金の返済とある。最適な資本構成や資本調達コストの考え方は
加藤CFO:上場するに当たって公募の比率はそこまで高くない。キャッシュフローはブレークイーブンに近い状態で、今後は現状のビジネスであれば、エクイティよりもデットを中心に回していきたい。ただ、M&Aも選択肢として持っていないわけではないので、事業リスクが高いことを行う場合には、エクイティファイナンスも絡めながら資金を調達したい。

―D/Eレシオの目安はあるか
今のところは、まだ事業規模が小さいので、レシオで目指すような段階ではない。

―上場したSaaS企業がM&Aで成長しているが、そのような成長の形は
今、具体的にターゲットや領域の特定には至っていないが、我々の将来的な成長の1つの軸にしていきたい。

―同業や規模が近い会社か
単に規模を大きくするというよりは、一緒になって我々の仲間に入ってもらい、ともに成長できる会社と組んでいきたい。

―第1~2位の大株主の属性は
石井社長:私自身はこの会社の創業者ではない。2011年の創業だが、私が参画したのは2014年だ。この2人は簡単に言ってしまうと創業者で、1位のラン・ホアンは当初から株主という立ち位置で、ほとんど事業にもマネジメントにも関与しない形でここまで来た。2位のドゥック・グエンは社内でもいろいろと活躍してもらっている。根っからのエンジニアで、我々の新商品のプロトタイプ開発を担っている。アバター対応ツールなどはドゥックが作ったものを顧客に当てながら、どう商材化していくかというフェーズにある。

―事業会社の株主であるオウケイウェイヴ<3808>や文化放送とは協業しているのか
オウケイウェイヴは、我々と提携的に進めた事業を切り離してPRAZNAという会社になっている。オウケイウェイヴは元々FAQを事業としており、非常に親和性が高い。FAQのために作ったデータをそのままチャットボットに流用できる形で連携し、出資を受けた当初から我々の代理店として非常によく活動してもらった。

文化放送は、いろいろな経緯のなかでの出資だったが、課題としてラジオというメディアが成長を見込めないなかで、今まで音声を基軸に事業をしており、音声というアセットを使って何かできないかと、新しい事業モデルを模索していた。チャットを使いながらのメッセージが音声になる、アバター的なものにアナウンサーの音声を乗せられないかと協業への期待から出資を受けた。現在、アバターは進んでいないが、チャットは文化放送の関連会社を含めて地方で協業している。

加藤CFO:オウケイウェイヴとは事業上のつながりがなくなってしまったので、IPOに際し株式を全部売り出してもらい、株主ではなくなっている。

―PRAZNAは
PKSHA Technology<3993>の子会社になり、これまで通り事業上は代理店としてサービスを供給している。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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