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上場会見:タンゴヤ(現グローバルスタイル)<7126>の田城社長、自分好みにカスタマイズ

24日、タンゴヤ(現グローバルスタイル)が東証ジャスダック・スタンダードに上場した。初値は公開価格(1600円)を6.4%上回る1703円を付け、1533円で引けた。同社はオーダースーツの販売店舗を運営する。1928年に創業した毛織物卸売商「丹後屋羅紗店」を1949年に株式会社化。「グローバルスタイル」など国内27店舗でオーダースーツを販売する。田城弘志社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

顧客の注文情報や購買履歴を電子管理してオンラインでのオーダーを受け、リピート購入が増えていると話す田城社長
顧客の注文情報や購買履歴を電子管理してオンラインでのオーダーを受け、リピート購入が増えていると話す田城社長

―初値が公開価格を上回った
非常に大きな期待を受け、今後も(事業を)しっかり進めていきたい。

―上場の目的は
社歴は個人創業を含めて92年で老舗だが、この12年、事業構造改革で事業内容ががらりと変わった。ファッション性を強く押し出してインターネット広告でスマートフォンにコマーシャルを入れ、オーダースーツを若い人にもっと利用してもらおうとしてきた。その事業が中心なので、会社としては第2の創業を行ってきた。

そのなかで直営店を展開し、店舗のスタイリストは20代が中心だ。新卒採用を毎年行っているが、(新卒学生の就職希望先の)比較対象は上場企業であるため、採用面で有利になる。店舗開発の際にも、上場することで財務情報を自由に見てもらえるし、信用力もある。特に各エリアの路面店のオーナーは、年齢の高い世代なので上場していると出店の交渉も進めやすい。パブリックカンパニーに移行し、資金調達を多様にして販路を広げる。

―競合状況は
ロードショーで矢野経済研究所のデータを使って説明したが、既成スーツ市場は年次で2000億円を切っていると推計される。私はオンリー<3376>というツープライスのスーツを扱う会社で2005年に大証ヘラクレスに上場した際の担当役員だった。その時から16年が経過して規模が半分になっている。これは特に地方で少子高齢化が進んだことが最も大きい。(若者が)都市部に出て就労するため、地方でのスーツの消費がかなり減った。

ただ、都市部ではツープライススーツの専門店や大手の量販店が店舗展開していて、それらとあまり変わらない予算で「自分好みにカスタマイズできるオーダースーツを作れる」と始めてオーダーする顧客に提案している。また、デパートやセレクトショップが扱う欧米の高級ブランドを購入する顧客向けに、ゼニアの生地を使うスーツを6万8000円(税抜き)で作ることができる。仕入れに秘密があるが、これはデパートの半値だ。高級ゾーンと低価格ゾーンから来る顧客に対して商品を提供する。

まともに競合するというよりは、あえてブルーオーシャン化して独自のポジショニングで展開した。低価格から高価格まで扱いファッション性の訴求も行う。どこの店が似ているというのはない。オーダースーツ業界では麻布テーラーとよく比較される。

―在宅勤務の広がりでスーツ需要が落ち込み、買い換え需要は減っていると思う。懸念はあるのか
2020年7月期の下期と2021年7月期は、会社や職種にもよるが、特に東京本社の大企業の管理・企画部門の人のテレワークの比率が増えたと思う。売り上げや利益の大きかった2019年期と比べると都内の店舗の売上高は少し減った。ただ、関西や名古屋、札幌、仙台、博多は、支店経済(都市)ということもあり、地元の会社では社員が出勤していたため、そう大きくは影響を受けなかった。

昨年の2月14日に横浜駅前に横浜西口店という大きめの路面店を出店して、非常に好調だ。今までは都内の店舗で利用してもらっていたが、人口集積の大きなエリアの近くに出店すると顧客も増える。そういった形で出店していきたい。

―2020年7月期の営業キャッシュフローがマイナスだが、その背景はどのようなものか。また、これはスポット的な事象か
コロナ禍ということで、昨年4月の初めての緊急事態宣言で商業施設に入居している店舗が休業し、下期に受注が落ち込んだ。我々はミラノでの展示会などに参加して、メーカーと素材を企画して専門商社とともに生地を仕入れている。それまでの毎期1.3倍の増収を前提に素材をオーダーしたため、特に下期に仕入れと売り上げに多少ミスマッチが生じ、仕入れが多くなった。

ただ、今期第3四半期のキャッシュフロー計算書では、営業キャッシュフローがプラスになり、負債も返済し通常に戻っている。

―2022年7月期の業績予想は、コロナ禍がある程度落ち着き都内での売り上げが回復していることを既に織り込んでいるのか
8月から1月までの上期は多少影響を受け、来年の春頃から変わってくると考えている。

―地方の政令都市を中心に出店するとのことだが、都内に集中するリスク回避の意味合いもあるのか
元々は「GINZAグローバルスタイル」として都内でドミナント展開し、銀座地区には4店舗ある。混み合った時には有楽町に近い丸の内の1店舗を含めた5店舗で顧客対応をしていた。アフターコロナが進めば、銀座や新宿など繁華街に人が出るため、買物客が増えるだろう。

―今後の出店数は
目安として今の3倍は、現在と同じような立地で十分に販路を拡大できる。

―何年ぐらいで実現するのか
30~40店舗を出さなければいけないので、年間5店舗出したら8年となる。

―レディスの販売を強化するが、比率をどこまで上げたいのか
2017年にスタートし、16店舗で取り扱っている。全体の比率では1割に到達していない。ただ、毎期取り扱いは伸びている。2021年7月期も前期比で2割伸びた。

―何年に何割ぐらい伸ばすという目標数値はあるのか
今の流れでは、出店するたびにレディスオーダーを入れていくので毎年1~2割は増収していく。

―メンズと比較した時のレディスのビジネスモデルの違いは
7つのスーツ工場を運営する大型の提携工場で生産し、素材が共通のものもある。レディス専用で意識しているのは、ベージュやホワイトなどおしゃれなラインアップだ。前期の途中にコーディネートアイテムとしてオーダーパンプスやオーダーシャツを実験的に扱い始め、今後は本格的に展開店舗を増やす。

―レディスのコア・ターゲット年齢層は
20~40歳代が多い。

―アパレル・ファッション業界で、SDGsの観点からサプライチェーン上、素材の入手先や縫製場所が、具体名を出すとユニクロなどで話題になっている。そもそもその辺りを気にしているのか。どのように管理しているのか
例示のあった店は大型店でアイテム数が多い。我々はオーダースーツ専門店でアイテム数を絞って、そのバリエーションを顧客に提供する。当然素材についても、扱いが多いのはイタリアや英国で織られた生地だ。原毛はオーストラリアやモンゴルなどいろいろな所で採集され、それを紡績して織る。

イタリアと英国のほかには、中国や日本の生地も一部扱う。コロナ禍前までは、ミラノで年に2回世界的な展示会が行われており、メーカーと頻繁にやり取りしていた。現地工場にも必ず定期的に訪れる。結果的に商社経由で仕入れるが、メーカーと直接やり取りをしている。

縫製工場は、国内工場から始まったが、今の主力は、中国・大連の大手工場で、頻繁に訪問している。現在は生産管理会社を間に挟んだ取り引きだが、コロナ禍前までは頻繁に工場に赴いて仕立てサンプルを見て、いろいろな打ち合わせをしていた。今はリモートで、サンプルをテーマに品質管理のミーティングを行っている。一通り把握している。

―顧客管理の電子カルテは、オーダースーツ業界では珍しいのか
あまりないと思う。アナログな業界で、工場に生産依頼の紙をファックスで送る形態がまだ多い。昔からそうだが、特に地方では個人が独立・開業して営んでいる店舗が多い。IT投資が進んでいる工場とそうでないところがある。

―そうすると中国の工場に委託する背景には、中国側がITに対応していることが要因としてあるのか
その通りだ。その工場は世界でもIT設備が有数だと思う。型紙データを操作するCAD・CAMの設備や自動裁断機がある。日本の生産管理会社もそこに入ってデータで生産のやり取りをしている。

―株主のイーエムネットジャパン<7036>とはどのような取り組みをしているのか
グローバルスタイル事業を始めて12年になるが、10年ぐらい前からインターネットで一般の顧客に告知をするネット広告を主体にコマーシャルをしてきた。その運用を3社のネット広告代理店と行っているが、イーエムネットジャパンが中核になって進めてきた。元々は取引先で、我々の資本政策のなかで純投資の形で株を持ってもらった。

―株主還元の方向性は
上場前までは配当性向が1割だったが、上場後は(各社の)配当性向が全体的に高いため、状況を見ながら検討したい。

―株主優待は
要望もちらほらと聞いている。当社は一般の消費者に利用してもらう業態なので、今後検討したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]