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上場会見:デリバリーコンサルティング<9240>の阪口社長、データを取って活かす

29日、デリバリーコンサルティングが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(950円)の1.54倍となる1472円を付け、1329円で引けた。同社はクラウドやAI、RPA (Robotic Process Automation )などの技術で顧客企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する。データ取得が容易なシステムに既存システムを移す「デジタルマイグレーション」や、取得したデータをビジネスに活かす仕組みを作る「データストラテジー」などを手掛ける。阪口琢夫社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

現状を、DXに本格的に突き進んでいく端境期と見ていると話す阪口社長
現状を、DXに本格的に突き進んでいく端境期と見ていると話す阪口社長

―初値が公開価格を55%上回っているが、どう思うか
非常に良い結果だった。今後、投資家の評価に応えられるように、企業価値の向上に努めたい。

―この時期に上場した目的は
上場したタイミングに関してはいくつかの視点がある。ハイバリューなテクノロジーコンサルティングで事業の舵取りをして、社会に存在意義を出していけると感じ、数字が作れるようになってきたこと、内部体制の整備も進んできたことも合わせてこのタイミングだった。当社のコンサルティングのビジネスの性質上、生産性や単価の向上を心掛けるが、人材の数も非常に効いてくるので、採用力の強化は非常に大事にしている。

―DXという言葉が大きくなりすぎ、かつ、ふわっとしていることで、ただのデジタル化に終わっている企業も多いと思うが、現状の認識と本当のDXについて改めて聞きたい
ITは料理で言えば包丁やまな板に当たるが、テクノロジーが先に立ち過ぎて、経営戦略と適合しないギャップが常に存在する。2010年以降に出てきた新しいテクノロジーにまず挑戦してみたという状況から目的志向の方向に進んでいくと見ている。

DXの本質はデータの利活用と考えており、そのようなモダンなシステムを開発する。分かりやすいものはクラウド化だが、メインフレームを基礎とするシステムをWEB系のモダンアーキテクチャーにすることなどでデータを取りやすくする。また、取りやすくなったデータいかに活用していくかが重要で、必ずしもAIが答えではない。ツールの目利きの塩梅を効かせながら顧客と取り組むことが当社の使命だ。

―競合と比べて人材が育ちやすいのか
携帯のアプリを作る会社やWEBを開発する会社は多いが、コア・テクノロジーの分野をコンサルティングできる独立系の会社はあまりないと思う。日本では競合が思い浮かばない。フレームワークを基礎としたコンピテンシー・ベースの評価モデルを活用することで、人材を早く成長させ、専門職であるテクノロジー・コンサルタントとして活動する水準に引き上げることができる。人材のレバレッジを掛けられる。

日本以外では、コンピューターサイエンスを学んだ人間のみがテクノロジー・コンサルタントとして採用される。だが、日本ではコンピューターサイエンスの学生が非常に少ないので、ほかの会社もそうだが、新卒で採用した後に研修で育てる。当社は普通の理系学生や適性のある文系学生や外国人を採用し、枠組みがあることで成長させることができ、ビジネスの人材として活用できると考えている。

―内製化支援(イネーブルメント)に力を入れるということだが、クライアント先の人材の育成をどの程度重視するのか。CDO(Chief Digital Officer)の重要性も含めて聞きたい
デジタル人材にもいろいろな層があると思うが、当社はあくまでもテクノロジー・コンサルティングの会社であると考えている。

おそらくCDOを育成するような会社は戦略コンサルティングファームの範疇にあると思う。イネーブルメントは、人材を内製化していくことを指す。単純な講義をするのではなく、顧客と一緒に実際にプロジェクトをプランニングしながら体験してもらうことを大事にしている。

「背中を見て学べ」という叩き上げ論ではなく、そこにデリバリーアプローチやフレームワークで体系的なアイデアを持ちながら、ある程度標準化されたノウハウで、仕事の仕方を工学的に習得してもらうのが当社のポイントだ。

日本の場合は受託ビジネスが多いが、欧米ではDXの前から内製化が進んでいた。そこに人員が委任のような形で入ることが一般的だ。今回、DXというワードが来て、初めて内製化が本格的に日本でも始まるのではないか。

―いろいろな新技術を組み合わせ最適化して提供するということで、プロダクト間のシナジーや相性の良し悪しなどのノウハウは事業にどう活かされるのか
技術が先に来ることでビジネスに関する気付きを得られることもあるが、最も大事なことは技術が先に来るのではなく、ビジネスが先にあって、そのなかでDXを実現したいという戦略を前提に、それをどのように最適化するかの枠組みを作っている。

難しいところだが、アーキテクチャーやサーバーなど裏方の仕組みを作っていくことに当社の特長がある。そのなかでは(プロダクトの)合う合わない、あるいは一瞬考えてみるとできそうだが実際にはできないことが結構あり、そういうことをデリバリーアプローチの枠組みのなかで体系的に分析する。プロフェッショナル部隊がそれらを評価しながら、プロジェクトを始める時には企画段階でアーキテクチャーを提案する。

ITの場合は、常に新しいものが出てくるため、以前と同じことを踏襲することが長く続かない。例えば同じsalesforceでもsnowflakesでも、どんどんアップデートしていて、ある程度の根幹となる方法論を活用したなかで押さえたり、チェックリスト的に考えながらトライアルしたり検証するほうが大事だと思う。

―データストラテジー事業でのアライアンスはどうなるか
いろいろな会社とそのような話が元々あった。例えば、AIベンダーの人はデータサイエンティストだが、データサイエンティストだけがいてもAIはうまくいかない。データを生み出す仕組みがあり、データをできるだけAIに学習させることでうまく機能する。

データを作り出す仕組みはアプリケーションやシステムで作るため、お互いに餅は餅屋のような部分がある。かつ、データサイエンティストが言うことを理解して、データを蓄積する仕組みを作るのが当社のデータストラテジーであるため、アライアンスは十分にあり得、そのような話もいろいろしている。

―長期的な数値目標は
中期経営計画も含めて来期以降の数字を発表していないので、正確なことを言えないが、ある程度の成長を確実に遂げたい。個人的な目標としては、数年後には人員を2~3倍にしたい。

上場することで人材採用力が大きく上がると、既に上場した経営者から聞いており、期待している。それができるようになれば、当社にはフレームワークをベースにした評価や育成の仕組みがあるため、たくさん採用できたらよいと思う。

―今期の本決算で中期経営計画を発表する予定はあるか
伊藤享弘取締役:次の決算のタイミングで来期の計画については少なくとも開示しよう思う。中期計画まで出すかは検討中だ。

―今注目している海外の最先端ツールにはどのようなものがあるか
阪口社長:一通り登場した感じはある。例えば、プロセスマイニングやAIがある。当社もパートナーとなっているカンバセーションAIの「Kore.ai」は日本に来たばかりだが、活用の仕方によってはポテンシャルがあると思う。Kore.aiはチャットボットの裏側でFAQを機械学習しながら選択して、利用者の質問とボットが返す答えを結び付けていくようなことをしながら、基幹システムと連携する。これからは「素」のツールではない少し捻ったような技術が来るのではないか。

―公開価格設定に際し、証券会社とどのようなやりとりがあったのか
伊藤取締役:特別なことはなく、仮条件はロードショーのフィートバックを受けつつ粛々と決めた。我々が特別な意思を持って特段どうこうということはなかった。

―日本で競合他社がいないということで価格をどう付けるのかという問題があったと想像するがどうか
類似企業をピックアップするところでは、どう見立てるのか議論で時間を使った。

―それをどう解決したのか
かなりの社数を双方がピックアップし、結果として100%の類似は難しいものの、それぞれの特徴のなかである程度類似とみなせるところを落としどころとした。

―メディアシークとのビジネス上のシナジーはあるのか
阪口社長:メディアシークとは、2005年にベトナムにオフショア会社を作る時に、事業資金の調達を相談して会社を作り、連結子会社としてビジネスを進めてきた。

同じIT業界だが、メディアシークはBtoBtoCのビジネスを中心とし、当社は100%企業向けのサービスであることから、連結としてシナジーを上げることはない。だが、会社としては良好な関係を保っている。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]