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上場会見:ラキール<4074>の久保社長、レゴのようにソフトを組み立て

16日、ラキールが東証マザーズに上場した。初値は公開価格(1400円)を77%上回る2480円を付け、2980円で引けた。同社はソフトウェアを部品として捉え、それらを組み合わせてアプリケーションを開発する手法「マイクロサービス」を使う開発・運用プラットフォームである「LaKeel DX」などを手掛ける。久保努社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

今後は製品ラインアップの拡充を図ると話す久保社長。クロスセルの余地は大きいという
今後は製品ラインアップの拡充を図ると話す久保社長。クロスセルの余地は大きいという

―高い初値の受け止めと、投資家から評価された要因は
投資家から高い評価を受けた。身の引き締まる思いで、上場企業としての責任を果たすことを改めて強く感じている。このような評価を受けた最大の理由はDX(デジタルトランスフォーメーション)に携わっていることに間違いない。今後、LaKeel DXというプラットフォームをベースに事業を進めていくが、最大限に活用して成長のアクセルを踏み込もうと思っている。

―上場企業としてどのような企業を目指すか意気込みを教えてほしい
LaKeel製品の戦略を進める一環で上場を目指してきたが、今後は早い段階でさらに上の市場、1部・プライム市場を目指していきたい。それに耐えられるだけの業績や結果を早く作りたい。

―今後の目標株価水準は
西村浩取締役:時価総額でそれなりの数字を作りたい。業績と共に株価も順調に上がっていき、先の話になると思うが時価総額1000億円企業を目指していきたい。
久保社長:時価総額1000億円を目標に進めていくことになる。

―マイクロサービスを活用した開発手法は、アジャイルなどの開発手法とは全く別の概念なのか
アジャイルは開発スタイルだが、マイクロサービスは設計・デザインの概念なので、マイクロサービスを使わなくてもアジャイル方式の開発はできる。また、アジャイル方式でなくともマイクロサービスを基礎にしたアーキテクチャーを採用した開発はできる。ただ、開発基盤の「LaKeel Engine」はノンコードやローコードであり、我々の製品はアジャイルの開発スタイルを採る。作りながら、確認しながら、試しながらというスタイルはアジャイルだ。

―同業他社と比較しての強みは
まず、同業をどこと見るかがとても難しい。LaKeel DXをベースにして製品やサービスを積み上げていった場合、どういう会社と競合するか考えるとセールスフォース・ドットコムに近くなるのではないか。ただ、今まで正面から当たったことはない。

ツールという見られ方では、開発ツールが取り沙汰されるが、ソフトウェアを部品化して組み立ててアプリケーションを作る会社が、今のところ競合として現れていない。製品自体の競合は存在しない。

DXプロジェクトを進める点では、ERPパッケージベンダーや大手Sierが競合となり得る。三菱商事の案件ではNTTデータと協業してプロジェクトを進めており、どちらかと言えばパッケージベンダーが競合になると思う。

―クライアントがDXをしたい時に競合が出た場合の強みは
LaKeel DXは、スクラッチ開発より圧倒的なスピードで製品を開発できる。ERPパッケージに関して、日本ではパッケージに合わせて業務を全て変えない会社が多い。そうなった場合、パッケージをカスタマイズする。コストが高くなり納期がずれ、柔軟性に欠ける。それと比べると、当社の製品は、レゴブロックのように既にある部品を組み立ててアプリケーションを作るので、圧倒的なスピードと柔軟性を実現できる。この点で当社のサービスに優位性がある。

―新型コロナウイルス感染症の再拡大の影響は
DX案件は堰を切ったような勢いでいろいろな会社が取り組んでおり、コロナ禍の影響を受けていない。

―コロナ禍でDXが一気に進んだという話を聞くが、ポジティブな影響はあるか
昨年は多くの顧客がIT投資を一旦抑えたが、昨年後半ぐらいから積極的に進める顧客が増えた印象だ。

―競争環境が厳しくなるケースが起こり得るとすれば、どのようなことが要因になるのか
今、アマゾンやグーグル、マイクロソフトといったメジャーなクラウドベンダーが存在するが、LaKeel DXはマルチクラウドに対応し、どのクラウドの上でも稼働できる。逆に、クラウドベンダーがプラットフォームビジネスだけではなく、戦略を変えてアプリケーション側に進出すると驚異を感じざるを得ない。

―プラットフォーマーがアプリケーションを扱うと厳しいのか
我々が狙っているのはアプリケーションPaaSという世界だが、彼らは今のところもう少し下の階層でサービスを提供している。今はうまく組める状況だ。

―LaKeel DX経済圏について、顧客が自社開発したソフトを他社が利用する場合に料金が発生するというが、その収益はどこに帰属するのか
例えば、ソフトウェアの部品群やアプリケーションの開発は、我々も顧客もできる。我々のパートナーも開発できる。製品を販売した時の顧客との契約で、共同開発という扱いにも、我々が著作権を持つこともできる。製品が売れた場合の販売形態もそれぞれのケースで変わる。

三菱商事との共同開発の事例では、我々と三菱商事の間の契約は1本で、グループの卸売会社に三菱商事が順次販売する。その収益は一旦三菱商事に入り、我々はレベニューシェアに近い形で収益を受け取る。ケースバイケースで違ってくる。

―LaKeel DX経済圏を構築するうえで、これまで製品を利用していなかった他社に製品を波及させるには、三菱商事のようにグループ企業を複数抱える司令塔のような会社にアプローチすることになるのか
全くその通りで三菱商事以外にもそのような動きをしているところが、生保で2社ある。三菱商事の場合、当初の展開モデルはグループ内の同業他社だったが、先にグループ内の他の事業会社に展開したのが「貿易DX」だった。生保関係はネット系で強い会社と昔からある大手生保の案件が動いている。

―ROEの考え方は
Appleなど海外ではとんでもない数字が出ているが、日本の会社もそうならなければいけないのかと思っている。
西村取締役:現時点で会社としてROEの目標値を明確に定めていない。
久保社長:今のところ大きな指標にはしていないが、できる限り20%に近い数字を達成したいと思っている。

―そうするとKPIは何か
売り上げと営業・経常利益が主な指標だ。また、カスタマー・チャーンレートを開示している。当社の場合、ユーザー数とサブスクリプションの売り上げを、成長を測る指標として見てもらえると分かりやすい。サブスクリプションの売り上げを伸ばすためには顧客数を増やす必要があり、チャーンレートと合わせて見ている。

―株主還元の方針は
成長の伸びしろがかなりあると考えており、事業の拡大に優先して投資したい。ただし、株主への利益還元は、キャッシュフローを見ながらできる限り早く実現したい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]