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上場会見:ステムセル研究所<7096>の清水社長、再生医療のインフラに強み

25日、ステムセル研究所が東証マザーズに上場した。初値は公開価格(2800円)を72.5%上回る4830円を付け、4130円で引けた。同社は、本人や家族が将来、主に脳性麻痺や自閉症などへの再生医療に使用する目的で、有償でさい帯血やさい帯の保管を行う。2020年3月に上場申請を行い、新型コロナウイルスの感染拡大の影響から、同月に手続きを延期していた。清水崇文社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

清水社長はコロナ禍でのマーケティング施策の追加や、再生医療の進捗状況にも言及した

清水社長はコロナ禍でのマーケティング施策の追加や、再生医療の進捗状況にも言及した

―初値の受け止めは
ロードショーを行っている時から機関投資家の評価が良かった。想定仮条件から仮条件が上振れした背景には、機関投資家の支持があった。ブックビルディングでも上限に付いていたので、ある程度上がるのではないかと分析していた。投資家にしっかり評価してもらった。

―上場を1年間延期したメリットは
かなりメリットがあった。緊急事態宣言が出る時で投資家が買えないということでやむを得ず延期した。我々は基本的に資金ニーズで上場するわけではなかった。

コロナ禍で対面での仕事がやりにくくなった反面、デジタル化や非対面・非接触型で取り組むことができて業績が伸び、成長スピードが速くなったと投資家に受け止めてもらえた。昨年の想定仮条件を基準にすると時価総額が103億円だったが、今期は公開価格で143億円と4割程度上がった。1年間きちんと仕事ができたということなので、結果的には延期して良かった。

―資金調達以外に上場で達成できる目標は
知名度の向上と信頼が高まることは重要だ。財務内容が表に出て、より透明性が増す。採用もしやすくなる。

―中国よりも遅れているとのことだが要因は。
中国はお産の件数が1300万人で数は当然トップだが、この仕事で1番進んでいるのは米国だ。既に脳性麻痺に関する臨床研究はフェーズ2が終わっている。決められた範囲で自由に投与できる時代が来ている。

論文にあるだけでも1200例ほどの治療が行われており、細胞を保管する意義が高まっている。日本は臨床研究が遅れている。ようやく高知大学で自己のさい帯血を使った脳性麻痺の治療のフェーズ1が終わり、昨年からは兄弟間でさい帯血を使った脳性麻痺の治療の臨床研究が始まっている。

臨床研究が進展すると保管のメリットがあるとして浸透率が高まる。絶対数についてはどうしてもお産が多い所が強く、中国やアジアなど人口の多いところが保管の絶対数が伸びる。国内だけでなく伸びる地域にもチャレンジしなければならない。

―海外進出でクリアすべき課題は
中国の場合は法律で規制があり海外勢は入っていけないが、東南アジアはまだそこまでルールがないため、しっかり見極めてどこで展開できるか考えなければならない。

―海外展開ではどういうことをするのか、国内と同じスキームか
海外も同じような形でさい帯血やさい帯バンクが運営されているが、そのような会社を一から始めるのは簡単ではない。既にある会社を買収していくことも含めてスピード感を強めていきたい。

今の事業内容で設備投資も終わっているので、私のなかでは時価総額300~400億円の土台ができている。この1~2年でどうすれば1000億円に近づけていけるか考えたい。

―再生医療への利用可能性という観点では、さい帯血と歯髄があると思うが、歯髄はライバルになるのか
再生医療の分野ではさい帯由来の間葉系の細胞や脂肪、骨髄が主力と思う。歯髄はさい帯血の周産期の細胞と比べてメリットがあるとは理解していない。生まれた時の幼弱でたくさん分化できる細胞が優位ではないか。歯髄は国際的にも臨床研究が行われていないと理解している。さらに、さい帯は既に他家利用ではGVHDやARDSの治療での臨床研究が始まっている。周産期の細胞にメリットがあると思う。

―少子高齢化の影響はあるのか
浸透率や保管率が出生数に対して低く1%に満たない。30年ぐらい経ってから出生数が減る予想はあるが、それでも我々のマーケットはたくさんある。さい帯血は顧客の出産数に対して1対1だが、さい帯も保管することで1対2になる。細胞のラインアップを増やしていく。

―卵子の保管を始めたが、ほかの細胞に広がるのか
成人の細胞や不妊治療の分野は今でも大きなマーケットだが、ニーズが高まっていく。日本の場合は将来の妊娠に備えて卵子を保管することが一般的ではない。長期保管するとなると安心できる場所に預けなければならず、施設として我々に対するニーズが高まってくるのではないか。細胞の保管に関しては強みがあると見ている。

―その過程で提携などが発生するのか
そこは当社の強みで、全国の産科施設と提携関係にある。我々は研究者が探している細胞を探してくることができるインフラを持っている。例えば、半月板損傷に対して、大阪大学が独自に開発したアテロコラーゲン半月板機能修復材に幹細胞を入れることでより高い治療効果を目指すために、さい帯の幹細胞が欲しい場合、我々に声をかけてもらえればすぐに用意できる。

そうすると情報がどんどん入ってくる。有効なものに関しては、当初はソースの提供で協力しながら、最終的には出資し事業化することもできる。たくさんのことに挑戦できるということはインフラを持っている強みだ。

―横浜の新施設での展開は
第1細胞処理センターは新橋の本社の下にある。さい帯血処理に換算して月間750検体の処理が最大で、増設・増強の余地はない。横浜のセンターの新設で、追加的に月間1000検体を処理できる。さらにさい帯は本社のセンターでは処理できないが、横浜では可能で4月に開始した。計画よりも申し込みが多い。

―時価総額1000億円という当面の目標を実現するために現状の設備で不足はないか
増えていくともう1つ必要になる。3年後ぐらいには横浜と同規模かもう少し大きな施設に上場で調達した資金を投資する。

―再生医療がうまくいった場合、時価総額1000億円の達成に寄与するのか、それともそれに上積みすることになるのか
上積みするイメージと見ている。1~2の治療法や医薬品が開発されれば、そのぐらいになる。いろいろなネタがこれからたくさん入ってくるので、どう事業化していくかが上振れ要因になる。

―業績への寄与は2030年ぐらいになるのか
今進んでいる脳性麻痺などについては片手で数えられる年数で実現すると思う。細胞バンク事業がぐっと伸びることが考えられ、そうすると500~600億円に到達する。海外展開や医薬品開発が上乗せになる。1000億円はチャレンジだと思うのでこれから押し込んでいかなければならない。

―再生医薬品を作る場合にはどこまで関与するのか
完全に自社で製版までするというよりも、原材料の提供でロイヤリティを受け取る立ち位置になる。細胞医薬品を作る際にはGDP(適正流通)やGMP(製造・品質管理)の基準を満たした製造拠点が必要になるため、そのような施設を保有する会社や、販路を持つディストリビューターと提携する建て付けになる。

―財務上のKPIをどう見るか
粗利は65%を目安としている。施設に投資したら一旦減価償却を通すために少し下がるが、普通に回転し始めると間違いなく25~30%の営業利益率が出る。コロナ禍の1期前は1ヵ所の細胞処理センターで最大に近い稼働率で運営し、上場準備で費用がかかっていたが、単月では営業利益率30%になった。もう1つ施設を作っても同様のコスト構成になり、検体数が増えると営業利益率も高まる。営業利益率にこだわりたい。

貸借対照表では目指すところが難しい。前受金を負債として考えなければ、返すものではないので自己資本比率が現預金を合わせると90数%になる。貸借対照表は特に問題なくKPIを考えていない。

―親会社である日本トリムとの事業上のシナジーは
事業上のシナジーは特にない。子会社上場だがあまり指摘されなかった。当社のような会社は安定株主の存在は重要なので、しっかりと保有して成長を支えてもらいたい。

―株主還元の方針は
基本的には、当面事業を着実に進めて、まずは時価総額を上げることが株主への還元となる。我々は無借金でキャッシュが先に貯まるビジネスモデルであり、現時点で現預金が35億円ぐらいで、今後も増えていく。どこかの段階では配当で株主に還元する。

―配当開始時期のメドは未定か
未定だが50億円ぐらい貯まったら良いと考える。2~3年ぐらいすると営業利益が10億円ぐらいになり、十分に配当できるのではないか。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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