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上場会見:ベイシス<4068>の吉村社長、高品質ネットワークを安く

24日、ベイシスが東証マザーズに上場した。初値は付かず、公開価格(2040円)の2.3倍となる4695円の買い気配で引けた。同社は携帯電話やIoTのインフラ・ネットワーク構築や運用保守を行う。独自のクラウド施工管理システムである「BLAS(ブラス)」で業務を効率化している。吉村公孝社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

小型のIoT機器を大量に設置し、遠隔で監視・保守に強みがあると話す吉村社長
小型のIoT機器を大量に設置し、遠隔で監視・保守することに強みがあると話す吉村社長

―初値が付かなかった
市場からの期待だと思っている。短期的な株価の上下に一喜一憂せず、期待にしっかりと応えながら事業や企業規模を長期目線で伸ばしたい。初値が付かず上がっていることには、ほっとしている部分もある。

―モバイル向けの機器設置と保守点検で安定的に成長して、成長ドライバーはIoT機器の設置需要を取っていくという理解で良いか
今はIoTの機器設置や、通信インフラを作るフロー型のビジネスを徹底的に進める。大量の機器を設置している最中で、設置済みの機器を遠隔監視し保守する必要が出てくる。そこはストック型にしていく。

―IoT分野もモバイル分野と同様に、設置したからといって保守点検を受注できるとは限らないと思うが、強みは何か
モバイルに関しては、基地局の大型な工事と、インフラをコンピュータで遠隔監視する領域は業務内容が違い、工事関連企業があまり参入しない。IoT機器では、工事ができる会社であればどこでもできる。当社の違いとしてはBLASを使うことで生産性が高いため、低価格でも日本全国に大量に設置できる。全国に設置できる会社は少ない。設置後の監視や保守は、モバイル事業のノウハウが生かせる。また、設置した作業員を囲っている。設置した会社が担当するほうがメリットがあり、受注しやすくなると見ている。

今は、IoT機器の設置がメインだが、保守や監視の案件は増えてきており、実績とノウハウを貯めながら案件を受注したい。

―BLASを持っていることが強みだと思うが、現状では社内とパートナ―企業が活用するのか。
主にそうだ。当社の顧客も無料でIDとパスワードを取得しログインできる。当社に案件を発注している顧客からすると、進捗をリアルタイムに見ることができる。顧客と現場を管理する当社の人員、現場に赴く協力会社の作業員が情報を共有し効率化している。

―有償化や外販の考え方は
よく聞かれるが、現時点では無償で使ってもらって、より多くの顧客やパートナーにメリットを感じてもらいたい。将来的な有料化は可能性としてある。ただ、そのタイミングやメニュー、金額に関しては決めていないが、例えば、一部の機能をオプションにして有料化する。または当社の業界外へ外販する可能性もゼロではない。今は具体的に計画はしていない。

―当面しないという経営判断の背景は
BLASを持つことが、本業とするエンジニアリングビジネスの1つの強みであるため、有償で同業界に出してしまうと、自社の強みをライバル企業に渡すことになってしまうので、それはしない。クラウドシステムを提供するサービス会社ではなく、あくまでエンジニアリング会社という立ち位置をぶらすことなく、事業を拡大したい。将来的な有償化の可能性を否定することなく、長期目線で考えたい。

―協力会社が増えているが、質をどう担保するのか
非常に重要なポイントで、今は登録会社が増えている。部門横断型のプロジェクトを立ち上げて、品質のチェックや教育の仕組みを作っている最中だ。今ぐらいの社数なら、個別の現場対応でチェックや確認ができているが、今後の社数増加に備えて仕組化や標準化に今まさに取り組もうとしている。

―パートナー企業をどのぐらいまで増やすのか
現状の267社は、今の数倍の売り上げに対応できる。ただ、500社、1000社と増やしたい。IoT機器は1個当たりの設置単価が2000~3000円と安い。例えば、1個のIoT機器を付けるために東京から東北まで作業員が赴くとコストが合わない。登録してくれる作業会社を増やすことで現地に行く移動コストが掛からなくなる。増やせば増やすほど当社の強みが活きるので増やしたい。

―BLAS以外でAIやRPAの活用例は
古い電力メーターをスマートメーターに切り替える案件では、1日に1000件ほど交換している。今までは、作業員が10~20件の現場を回りながら交換前後のメーターや工事を実施した様子の写真を撮り、事務所に戻ってきてから作業報告書を作成していた。

今までは、メーターの写真に写っている指針値や計器ナンバーを集計する際に、人間が手入力していたが、現地の作業員がスマホで写真を撮り、BLASのサーバーにアップする。それをAIが自動で読み込み、どんな数字が書いてあるか抽出してチェックし、データベースに登録している。

―ドローンをどう使っているのか
1年半前ほどから実験的に使っている。例えば、基地局をビルの上に立てる時の電波が届くエリアを、作業員がビルの上に登って落ちそうな感じで撮影していた。ドローンを使って360度撮影することで安全に効率よく現地調査ができる。基地局を立てるコンクリート柱の建設でも同様だ。基地局以外では高層ビルの壁面調査への利用がある。

ただ、コロナ禍になって、現地でトライアルをする案件がペンディングになり、進んでいない。うまく活用しながら自社の強みにし、プラスアルファの売り上げにつなげたい。

―スマートシティへの関心は
今はスマートシティに関する話はどこもテスト段階だと思うが、興味を持っているし、実際に声が掛かりつつある。例えば、スマートシティを実現するためには、本格的な自動運転が必要になるが、精度が高いものを実現しようとすると、街のなかにセンサーを付けたり、電柱のようなポールに基地局を立てることで、車との通信をより的確に速くできる環境を作る必要がある。車以外の分野でも、スマートシティはセンサーなどのインフラが必要になるので、その辺りの案件をしっかり取っていきながら、将来的にはスマートシティの案件にも取り組んでいきたい。

―類似会社をどう見るか
完璧な類似会社はないと思っている。ただ、ベンチマークにしている会社は業界外に2社ある。1社めはラクスルだ。印刷分野の多重下請構造を、インターネットを用いることで、印刷したいユーザーと末端の印刷工場をプラットフォームでつなげ、低価格で早く印刷できるビジネスをしている。通信機器の設置やネットワーク構築の業界も多重下請構造になっている。テクノロジーを使い多重下請構造を排し、安くて品質の高い通信ネットワーク作りを目指す。

もう1社はジャパンエレベーターサービスだ。大手メーカーがシェアのほとんどを占めていたエレベーターの機器メンテナンスに独立系として参入し、ノウハウを自社で貯めながら業績や企業価値を伸ばしている。分野が違うが機器の設置や管理、監視・保守を行っており、ベンチマークにしている。

―モバイル事業とIoT事業の今後の成長率は
3年後といった中期スパンでは、いずれも外部環境がいいので、両方ともしっかり伸びていくと思う。ただ、売り上げの規模はIoTのほうがまだ低い。成長率ではIoTがモバイルよりも伸びていくと見ている。

―何%程度の成長を見込むのか
全社的に2ケタ成長を意識する。例えば、前期から今期にかけて売り上げは50%伸びているが、来期以降もずっと50%かというと、そこまで高望みはしていない。目安としては、それ以下の2ケタ台で伸ばしていく。仮に前年比売り上げ20%アップで、そのうちモバイルが15%でIoTが30%だとか、その辺りのバランスはIoTが高くなると思う。少なくとも2ケタ成長を継続したい

―ROEやROAの考え方は
非常に重要な指標だと考えている。これから社内で検討しながら、適切なROEやROAがどのあたりにあるかを決めて、タイミングを見ながらマーケットに対して公表する。

―株主還元の方針は
当面、配当は見送り成長投資に使う。いつまでも無配というわけにもいかないので、しかるべくタイミングを見ながら将来的には配当していきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]