株式・債券の発行市場にフォーカスしたニュースサイト

上場会見:ペルセウスP<4882>の横川社長、得意な創薬で薬の価値を高める

22日、ペルセウスプロテオミクスが東証マザーズに上場した。初値は、公開価格(870円)の1.15倍となる1005円を付け、866円で引けた。同社はヒト抗体医薬品の開発などを手掛ける。各種がんを対象としたパイプラインは4本で、3本を中外製薬や富士フイルムに導出している。昨年3月に上場予定だったが、株式市場の動向を理由に延期した。横川拓哉社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

横川社長は、生細胞と有機溶剤を用いる独自のスクリーニング技術であるICOS法についても説明した
横川社長は、生細胞と有機溶剤を用いる独自のスクリーニング技術であるICOS法についても説明した

―初値の受け止めは
投資家に期待してもらえ感謝している。株価は投資家の判断によるのでどうであっても受け止めていきたい。

―いろいろなバイオベンチャーが登場したが時価総額では米国に及ばない銘柄が多い。意気込みを聞きたい。
日本の学術研究のレベルは非常に高い。世界の学者や製薬企業もリスペクトしている。いろいろなノーベル賞学者も出ているし、基礎となる研究に多くの日本の学者が関与している。製薬産業で見ると、欧米のビッグファーマがかなりの部分を持って行っているのは寂しい。

特に日本は、抗体の新薬では輸入超過で何千億円という大赤字だ。それはもちろん日本の人口が少ないなど市場の問題もあるが、最近はベンチャーが薬をつくる。大手製薬企業はベンチャーが作ったものを買って、最後の仕上げと後期臨床開発で承認を取って売る。

大まかに言えばこれが主流になりつつある時に、米国にはもの凄い数の大学発ベンチャーがあり、そこで活発に薬を作っている。日本ももっと大学発ベンチャーが出てきてほしい。我々の競合というよりは「日本発の会社の作る薬は凄いな」となることを目指す一端を担ってペルセウスが成長し、後に続いて良いベンチャーができればいいと思う。

米国のベンチャーは資本市場で何十億円をあっという間に調達して、あるいは臨床後期もフェーズ2~3を自分たちでどんどん進める。その勢いで何年も差を付けられているのが残念だ。我々が実績を挙げて、投資家の信頼を得られれば資金も集めやすくなるかもしれない。そこを目指したい。

―上場を1年延期した感想や、延ばしたことによるメリットは
昨年は市況が非常に悪かったこともあって、その挽回で頑張ってきた。開発は昨年に比べて比較的順調に進んでいたため、例えばT003の人での臨床データを一部紹介でき、機関投資家に説明した時に非常にポジティブに受け止めてもらえた。

―今は株式市場にボラティリティがあるが、市況をどう見るか
鈴川信一取締役:上場を延期した時は、これからコロナが一番大変になる時で、仮条件を出したが、需要が全然ないという経験をしている。そこから比べると、今回は仮条件後のロードショーで、たくさん応募してもらい、隔世の感がある。我々自身も、治験の進捗もあったが、マーケットのスタンスも良くなっている

―公開価格を目論見書想定価格から引き上げなかったのはなぜか
想像よりも機関投資家の反応は良かったが、公開価格は仮条件を含めて主幹事のSBIの専門的な知識と経験から導かれた。我々は市場のことは分からないので任せて従うことにした。

―開発品についてこれから来るマイルストンの展望で、T002は
横川社長:ステージ4の末期のがん患者で進めている。

―日本と米国のどちらが先に終わるのか
富士フイルムでハンドリングしており、予定だから変わるかもしれないが、米国のフェーズ1の拡大治験は2021年12月に主要評価項目の結果が出ると登録されている。拡大治験では患者数をだいぶ多くしているので、フェーズ2以降はだいぶコンパクトに早めにできると思っているが、いつかは分からない。全体として2025から2026年に上市が近づけば良いと期待している。

―がんの種類で、この系統に良さそうというものはあるか
カドフェリン3という接着因子でいろいろな固形がんに出ているが、臨床試験の内容を具体的に見ると、卵巣がんや頭頸部がん、胆管がん、胆道がん、いろいろあるが、主に卵巣がんが多い。発現しているがんはいくつかあるが、患者の多さとそのがんに対するメジャーな薬があればそちらが先に行くし、良い薬がほとんどなければ、これが使われる。富士フイルムの考え次第だが、まずどこかのがんで承認を取りたいということだと思う。

―T003の真性多血症患者へのフェーズ1が終わるのはいつか
既に治験届を提出しているので、今秋や年内に始めたい。1年ぐらいで結果が出ると考えている。

―健常者とは別の治験をするのか
健常者は40人で行った。患者は6人を計画している。フェーズ1は安全性を見るが、同時に有効性が見られると思っている。健常者でも一部で貧血の兆候が出ている。真正多血賞は貧血の逆なので患者でも同じような良い結果が出るのではないか。

―導出交渉はこれからか
一部大手製薬会社から声をかけてもらっており、技術的なディスカッションをしている。我々も少なくともフェーズ1が終わるまでは導出しない計画だし、グローバルな大きな会社からもフェーズ1の結果をぜひ知らせて欲しいといわれている。条件もそうだが、なるべく血液がんの開発・販売力が強い会社と組むほうが、この薬が早く患者に届く。導出先はまだ決めていない。フェーズ1が終わる頃か終わってから慎重に考えたい。

―T003が上市した場合にはブロックバスターになるのか、ポテンシャルを聞きたい
我々は承認を取って販売するようなレベルの製薬企業ではない。医薬品事業全体の前半の創薬の部分を手掛けている。どれほど遅くともフェーズ2が終われば導出するし、一部はフェーズ1でも出したい。最終的にどうなるかといえば、T003は非常にいろいろな血液がんに対する期待をしているので、血液がんの1つにでも承認されたらブロックバスターになると思う。ただ、我々が販売するわけではないので、その何~何十%の収入を得るという風になる。ただ、T003が上市した時には、非常に大きなインパクトがある。

―T001の次のマイルストンはいつごろか
フェーズ3があるが、2022年に特許の有効期限が切れるのであまり時間がない。有効期限内での導出をしているので、特許が延長されない限り2022年で終わる。

―特許が切れた場合はどうするのか
当社ががロイヤリティやマイルストンを得る権利を失うだけで、中外製薬がこれをベースに次の薬剤を開発しているので開発を続けて薬になったら、我々には返ってこないが患者に薬が届けば良い。

―T004は臨床試験前だが、非臨床試験もまだ始まっていないのか
非臨床試験の定義がやや難しい。動物レベルの試験は終わっているがGLPの毒性試験は費用と時間がかかり、まだ進んでいない。標的が002と同様にカドフェリン3なので、富士フイルムは002の進捗を見てから次を判断するのではないか。

―今後T005以降のパイプラインを考え、取得難易度の高い抗体を作成するうえで、患者数などを含めたマーケットの兼ね合いをどう見るのか
高難易度の抗体が必要な病気は、今は患者がそれほど多くないかもしれないが、普通の病気がどんどん治ってきて、薬のない病気の患者は相対的には増える。昔は感染症で亡くなったが、それが治ると皆がんになる。今はがんで亡くなる人は半分いるが、だんだん治るようになってきた。それでも厳しいがんになると亡くなってしまう。

そのように、患者が多い病気の薬は先に開発されるが、そのおかげでだんだん寿命が伸びながら残りの病気になっていく。そういうことを考えると、例えば、「7回貫通膜」やいろいろなものに対する薬は、ほとんど取れていない。今はマーケットが小さくても、薬を作るのに5~7年かかるので、完成する頃には患者が多くなる。

―いつごろ、どのような疾患に対する抗体を取っていくのかもう少し具体的に聞きたい。他社の物を導入したり抗体以外のものを展開するのか。パイプラインは自分たちだけで作っていくのか
抗体以外は今のところ考えていない。何らかのシナジーがある時に技術なりパイプラインを他社から導入することはあり得なくはないが、今の計画のなかにはない。高難易度抗体は、7回貫通膜といった薬は1~2個しか承認されていない。それに関係する病気は中枢神経やがんなどたくさんあり、ほとんど手付かずだ。具体的な例は言えないがやることがたくさんある。当社のライブラリから取り尽くしたい。それにはエネルギーのある、ナレッジや発想の豊かな研究者が必要で、上場を1つの節目に知名度を上げ、良い研究者にたくさん集まってもらい牽引してもらいたい。

―最近の富士フイルムの動向を見ると、医薬品事業については創薬の自社開発がトーンダウンしているように見えるが影響は
富士フイルムを3年前に離れているので何とも言えないとこだが、ペルセウスが子会社でなくなった2018年3月時点の話では、これからどんどん開発費がかかり、いろいろな良いパイプラインが出た場合に、いろいろな大手製薬企業と組んだほうがいいので独立して成長するほうが、当社や世界の患者のためになり、富士フイルムの企業価値が上がると考えた。前回の第三者割当増資でも保有比率が薄まって今は36%だが、その後どうなるかは聞いていないし、次の経営者が決めるだろうが、自社開発はそれほどやっていないというふうに見ている。

―富士フイルムによる株式の売却リスクは
富士フイルムの自由意志で売却する可能性はある。売却しそうかどうかは教えてもらえないので分からないとしか言いようがない。

―将来的に製薬まで手掛ける意思はあるのか
たった今はない。製薬事業全体を見ると本当の臨床開発や薬事の話、製造・販売、MRを整備するのはとんでもない大きな仕事で人もたくさん必要になる。種類も全然違う。そのような人材を総合的に集められるのは、薬を販売する大手ファーマにしかできない。我々が得意なのは創薬の部分なので、臨床の前半ぐらいはやりたいと思っている。薬の価値を高めていきたいが、今は1番得意な部分だけを手掛けたい。

―赤字が続いているが、いつ頃の黒字転換を目指すのか
まだパイプラインが少ないので、マイルストンや契約一時金が入る時に一時的に黒字になることもあり、今後もそのようなことがあるかもしれない。安定的に黒字になるのは、今までのパイプラインが上市された時で、最も早いのはT002かT003かと思っている。今から数年先で、それができれば、会社がぐっと安定するだろう。

―株主還元は、安定して黒字化して以降か
そうだ。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]

関連記事