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上場会見:Enjin<7370>の本田社長、中小・中堅、医院を深掘り

18日、Enjinが東証マザーズに上場した。初値は、公開価格(1380円)の1.56倍となる2150円を付け、2198円で引けた。同社は中小・中堅企業や医療機関を対象に、成果報酬型でパッケージ化したPRサービスを提供する。メディアマッチングの「メディチョク」と決裁者アポイントマッチングの「アポチョク」というプラットフォームサービスも運営する。本田幸大社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

本田社長は、全国にクライアントが分散し、コロナ禍の影響はなかったと話した
本田社長は、全国にクライアントが分散し、コロナ禍の影響はなかったと話した

―初値の受け止めは
しっかりと評価された。公募価格を上回る初値が付き、そこから上昇したので良かった。

―中小企業を対象とするマーケットはブルーオーシャンというが、競合が登場する可能性はあるのか。参入障壁や強みは
この15年で数多くの類似のサービスが立ち上がり続けているが、一定の規模の企業は1社もない。これからも競合が参入する余地は少ないと思う。なぜ参入できないかは当社の秘密でもあるので全て開示できないが、基本的には「考え方」が大きいのではないか。

我々は「社会の役に立つ立派な人間を輩出する」と考えているため、従業員一人ひとりが自分の売り上げを考える前に、クライアントが競合他社・他院より一歩でも先に行けるようになってほしいという思いで営業活動をしている。自分の売り上げだけが上がれば良いという価値観の社員は1人もいない。そのような考え方がクライアントにしっかりと伝わり共感を得ている。

―PR市場の成長のなかで、どう成長するのか
現状では、中小・中堅企業やクリニックのマーケットをより深掘りしたい。過去に獲得したクライアント約4500社に対して、メインターゲットは13万社強と考えている。これは資本金3000~5000万円の企業で、保守的に見ている。

クライアントに資本金1000万円の企業が多いため、潜在市場としては、帝国データバンクに登録している140万社の半分である70万社ほどがターゲットとなる。これに加えて、全国にあるクリニック18万院のうち8~9万院がターゲット。それに対して当社はまだ5000社程度しかクライアントがいないので、しっかり深掘りしていける。大手企業向けPRサービスは競合が多く利益率が低いレッドオーシャンだ。旧来型のコンサルフィーを収受する形での参入は考えていない。

―デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展でPRの質が変わったか
昔はテレビや新聞、ラジオ、雑誌しかなかったが、今はYouTubeやウェブなどいろいろな形のチャネルができており、時代に合わせて最適化する。大企業向けには通常の参入はしないが、メディチョクを大企業に使ってもらえるようにアプローチしている。

―PR以外の領域に進むのか
中小・中堅企業やクリニックの決裁者であるオーナー経営者や医院長とたくさんつながっている。常日頃コミュニケーションを取っており、その数が増えているが、今はPRでしか付き合いがない。例えば、コスト削減など役に立てる類似サービスがあり参入したい。東京と地方の情報の格差が激しいと考えており、それをなくしていけるサービスには参入余地があるのではないか。

―コスト削減サービスを提供すると求められる人員も変わるが、組織の陣容が変わるのか
すぐに参入する予定はなく、今は我々しかできないブルーオーシャンであるPRマーケットを深掘りする。将来的にはいろいろな人たちとの事業提携などで良いサービスを提供する必要性が出てくるので、その際に適宜考えていく。

―アポチョクの成長イメージは
コロナ禍で直接会えない現状で、中小企業の社長や医院長といったいわゆる富裕層に対してサービスを提案したい企業からのニーズが高まってきた。今までは料金をもらわずに、クライアント同士で紹介し合っていたが、マッチングがうまく進んでいった。たくさんの決裁者がつながっており、うまくマッチングできる仕組みをアポチョクで実現できないかとローンチした。

―富裕層向けの経済圏を形成する方向に向かうのか
クライアントに富裕層が多く増えているため、ジェントルクラブと呼んでいる富裕層のネットワークを構築できると見ている。地域と東京の情報格差が激しいため、良い情報を地方の中小・中堅企業とクリニックの医師や社長に届けたい。

―SDGsの観点でいろいろな施策を打っているが、KPIはあるか
離職率や給与水準で、企業間や世代間などで細かいKPIはあるが、その中央値を推定し、そこを超えていけるように設定している。当社で試してうまくいったものをクライアントに勧めている。効果が出てきたクライアントが増えてきたので、この方法もサービス化したい。

―最も効果があった施策は何か
親孝行休暇だと思う。

―どんなところで好評なのか
離職率が劇的に下がった。地方のメンバーも多いので、両親に喜んでもらいその応援があるなかで仕事をしてもらいたい思いがあった。コロナ禍前には内定者キャラバンとして内定者の両親にあいさつに行っており、その流れから親孝行休暇が生まれた。

子供がしっかり働いている姿を定期的な帰省で見てもらいたい。そのための費用を会社が負担する。目先の売り上げがどうかということはあるが、企業としてはSDGsの観点から必要があると考え実践している。

―株主還元について
少数株主保護の観点からいろいろな株主と密にコミュニケーションを取り、信頼関係を構築する。今は配当を予定していないが、成長していくにあたって適切に考えたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]