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上場会見:アピリッツ<4174>の和田社長、Webとゲームのコアは安定成長

25日、アピリッツが東証ジャスダック・スタンダードに上場した。初値は付かず、公開価格(1180円)の2.3倍となる2714円の買い気配で引けた。同社は、ECサイトなどBtoCのWebシステム開発に特化したWebソリューション事業とオンラインゲーム事業を手掛ける。オンラインゲーム事業では、安定事業である他社のゲーム開発受託、ゲームクリエイターの派遣に加えて自社ゲーム開発にチャレンジする。 和田順児社長が東京証券取引で上場会見を行った。

Webソリューション事業では顧客のサイトのユーザーが触れるフロント部分を手掛け、顧客の成長による機能の追加などで自社の業績も成長すると話す和田社長

Webソリューション事業では顧客のサイトのユーザーが触れるフロント部分を手掛け、顧客の成長による機能の追加などで自社の業績も成長すると話す和田社長

―初値が付かなかった
公募価格が比較的低めでスタートしており、バリュエーションそのものでは、初値が付かない状況でもおかしくはないと考える。

永山亨CFO:公募・売出株数に関しても、それほど多くないので、需要が上回ることは認識していた。バリュエーションが低めだったので、需給バランスで言えば、今回のようになることは少しは予想できた。ただ、ここまで(盛り上がる)とは思わなかった。

―Webソリューション事業に追い風が吹いており成長フェーズにあるが、ジャスダック市場を選んだ理由は
和田社長: 比較的歴史のある会社であり、ジャスダックが相応しいと思い選んだ。

―この時期に上場した狙いは
当社は上場に過去2回挑戦して今回3回目になる。上場できる時にしようと、このタイミングになった。

―1~2回目に上場を断念した事情は
私自身が4代目の社長で、会社の興りは、慶応義塾大学の学生が集まって起業した。当初はその学生たちが初代と2代目の社長だった。1回目は2代目の社長の時で、業績に翳りが出て諦めた。

2回目は2015年に挑戦した。私が社長だったが、当時ゲーム事業を始めて、自社ゲームで収益が出て、その収益で上場しようとした。だが、自社ゲームは(業績の)ボラティリティが高く、手掛けていたPC向けのブラウザゲームの収益が右肩上がりではなかった。このことから事業の収益構造の転換を行ってから再挑戦しようと断念した。今回は収益構造モデルができて安定的に成長し、今上場してもいきなり来年に業績が悪くなることは考えにくい状況になったと判断した。

永山CFO:上場審査の際には、東証の審査部や主幹事に予実の乖離を審査される。ボラティリティが高い事業の比率が大きいと、予実の乖離を正確に読むのが難しい。業績では上場できるが、上場後に予実乖離が投資家に誤解を与えないような予算立案・実行が難しいのではないかと一旦断念した。

事業モデルを転換し、オンラインゲーム事業とはいえ、3分の2は安定収益化した。予実の観点では、自社内でも(予算を)組成しやすく、投資家から見てもボラティリティが高過ぎて分からないものではなくなったタイミングだった。

―人材派遣事業の対象を拡大するというが、どのような事業イメージか
現行の人材派遣事業は、ゲームのクリエイター派遣だ。当社はWebソリューション事業も手掛けるため、Webデザイナーなどの派遣を広げたい。

永山CFO:ゲーム会社はボラティリティが高いため正社員を抱えたくない。人はいないがクリエイターは欲しい。そこに当社の社員を派遣しプロジェクトに参画させる。そうすることで我々には空き稼働が発生しない。それをWebソリューションでも展開して成長を見込む。

今後、ゲーム会社の人の入り繰りは正社員をどんどん増やすというものではないだろう。ゲーム市場の成長が鈍化しているとはいえパイが大きいため、安定的に伸ばせると見る。

和田社長:上場承認を受けてから上場までの間に、一般的に信用力が上がるので営業力が向上するという話を聞いたが、我々も劇的に引き合いが増えた。DXやコロナ後ということでデジタル人材が世の中に不足し、発注できる会社がないと痛感した。引き合いが多過ぎて我々だけで全部提供できない。

―特にどこから引き合いが強いのか
クライアント企業というか普通の企業からの引き合いが強い。

永山CFO:具体的な名前は言えないが、コロナ禍で、リアルな商売をするアパレルや百貨店が、本気でデジタルにシフトしないと商売が成り立たない。いざ本気を出して取り組もうとすると社内に人材がいないし、ちょうど良い発注先もない。そこで我々に声が掛かる。そもそも政府が指針を出しており、何となくデジタル化しなければいけないと思っていたが、投資するきっかけがなかったところに、これだけ盛り上がっているので本気を出そうという企業からの声掛けが非常に活発になった。

―自社ゲームのどのような要素を訴求点としてゲームを開発するのか
和田社長:自社ゲームそのもので博打的に収益が上がったら良いというより、受託開発などの売り上げをきっちり伸ばしたい。自社ゲームを受託ゲームのための研究・開発と位置付け、ゲームエンジンとして再利用できるものを作ることを最大のミッションとする。

―ベンチマークにするゲーム会社はどこか
事業モデルとしてコーエーテクモホールディングスは理想と思える会社だ。ベンチマークとして今の我々の規模感で注目する会社は、バンクオブイノベーションなどだ。ただし、当社の主軸が自社ゲームで売り上げを上げる方向性ではなく、受託開発とクリエイター派遣で安定収益を稼ぎつつというものであり、見つけにくい。

それでもどこかと考えるとコーエーテクモHD(の事業モデル)は美しい。具体的には「無双シリーズ」が分かりやすい。自分たちでゲームエンジンを作り、いろいろな会社に提供するというのは我々が目指すべき1つの姿だと思う。

永山CFO:コアなユーザーが付いて、ゲームエンジンを使ってそれほどの工数を掛けずに、効率的に違う作品をリリースし、コア・ユーザーがそれにずっと付いてくる循環を形成することが理想だ。

―2019~2020年1月期には売上高が前期比で20%程度伸びているが、2021年1月期の業績予想は6%台の成長となっている。これは一過性のものなのか
和田社長:2021年1月期に売上高の成長が少し鈍化したように見える。ただ、実際には当社のコア収益の柱であるWebソリューションと、ゲーム事業のなかの受託開発と人材派遣事業は20%成長している。これらは引き続き成長できる。予測しにくいのは自社ゲームの売り上げで、年1本ぐらいに挑戦して業績を作る計画を立てている。2021年1月期は、自社ゲームが少し不作だったことから成長率が低くなった。コア収益については引き続き同じ成長率になっている。

永山CFO:それゆえ一過性だと捉えてもらえれば良い。

―さらなる成長を目指すうえでの経営上の課題は何か。また、どう解決するのか
和田社長:日本の市場環境でデジタルトランスフォーメーション(DX)、いわゆるデジタル人材は比較的取り合いになっている。人がいないとサービスが何もできない状態であり、採用と教育で価値の高いデジタル人材にする。それをしっかり遂行できるか今後考えなければならない。

永山CFO:経年で新卒や第2新卒に当たる若手を採用して成長させるモデルが、うまくいっている。これを追い風のなかでしっかり継続する。今後の成長ドライバーとして、採用と育成に加えて、どこかのタイミングでM&Aなどで人を大量に迎え、新技術を導入することで置いていかれないようにすることも検討している。

―資金使途の人件費は、Webソリューション事業の派遣に向けてのものか、内製化のためか
和田社長:内製するためのエンジニアに使う。

―市場再編後にどこへの上場を目指すのか。また、足元ではどのような準備をしているのか
環境が良い状況で事業をしており、引き続き売上高・規模ともに順調に成長できると考えている。遠くない将来に再編されたプライム市場への上場を検討したい。

永山CFO:足元では利益を順調に積み上げて、形式的な基準をクリアすることに力点を置く。上場準備でガバナンスやコンプライアンスが審査を通過しており、足元の準備として、その維持を継続する。

―株主還元の方向性は
ステークホルダーに還元する方向性だが、時期などは明確に定めていない。まずは上場してブランドが確立されたので、確実に業績を残し、内部留保で安定させながら、どこかのタイミングで配当などを検討する。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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