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上場会見:ENECHANGE<4169>の城口CEO、エネルギー業界を変革

23日、ENECHANGEが東証マザーズに上場した。初値は付かず、公開価格(600円)の2.3倍ほどとなる1380円の買い気配で引けた。同社は電力・ガスの料金比較サイトを運営するプラットフォーム事業と、電力・ガス会社向けのエネルギーデータ事業を2本柱とする。前者は家庭用の「エネチェンジ」と法人向けの「エネチェンジBiz」を、後者はスマートメーターのデータ解析やプラットフォーム上で蓄積したデータをクラウドで提供する。城口洋平CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

城口CEOは脱炭素社会実現のためのエネルギーテック企業の意義や可能性について説明した。

城口CEOは脱炭素社会実現のためのエネルギーテック企業の意義や可能性について説明した。

―なぜこのタイミングでの上場になったのか。未上場のまま資金調達して大きくなってから上場する経営判断もあり得たのではないか
上場のタイミングは、当初から狙っていた。今でもこのタイミングがベストだと考える。我々のように、大手電力・ガス会社と大きな取引をする会社にとって、未上場の赤字ベンチャーであることは取引先企業に信頼してもらえない。実際に取引上の制約も出た。BtoBのデータ事業をより伸ばすためには、信用力や透明性を上げることが必要だった。

2021~2024年にさらなる制度改革が予定され、電気自動車や蓄電池などいろいろな新しいトレンドが始まっている。ソフトウェアや人材投資を加速する必要性から資金調達手段の多様化として上場を選んだ。できるだけ公募価格や株価を高くしたかった。それ自体は証券会社が決めることで、一部折り合わなかった。公募株数を東証が規定する最小ロットの5万株で、事実上のダイレクトリスティングに切り替えて市場に上げてもらって、株式市場に当社の可能性を評価してもらいたいと考えた。

―エネルギーテック企業初の上場だが、証券市場の評価のギャップはあると思う。理解してもらうためには違う視点が必要か
電気を作る会社や売る会社とは売り上げの規模が2ケタ違う。我々のように電気を作りも売りもしないテック企業は粗利率100%の仕事をして、彼らは5%ぐらいの仕事をする。上場前の公募価格を決める証券会社のプライシングでは、そういった部分を含めて理解を得られなかった部分がある。

今後市場でどのような評価を得られるかに関しては、まだ値が付かないので何とも言えないが、エネルギー業界の枠組みだけでは見てもらいたくない。我々はエネルギーというオールドエコノミーを、技術を使う中立的なプラットフォーマーの立ち位置で業界を変革する会社だ。

勝手ながら私の考えを言えば、弁護士業界を同じような形で引き込んだのは弁護士ドットコムで、印刷のような古い業界を変えに行ったのはラクスル、医療業界に取り組んでいるのはエムスリーやメドレー、保険業界ではライフネット生命だ。ライフネット生命は類似企業はない。エネルギー業界に類似企業はないが、古い業界の非効率な商慣習や業界構造で、我々のようなテクノロジープレーヤーがいずれかの陣営に与することなく中立的な形で入ることで構造変革する余地は少なからずある。

脱炭素のように、東京電力や東京ガス、ENEOSのような会社がこれまでのビジネスを今後10年続けてはいけないという構造転換の最中に、我々のようなテクノロジープラットフォーマー企業の可能性は、他業界を見てもらうと今の公募価格よりは高く評価されるのではないか。事実として私も経営陣も誰も株式を売り出さなかった。

―2020年12期(予想)の売り上げが好調だった要因は
杉本拓也CFO:在宅などリモートワークの推進で、電気代の見直しがあり、当社への切り替え申し込みが順調に推移した。その影響で当初想定よりもエネルギープラットフォーム事業の売り上げが順調に推移した。

―一時的なものなのか、積み上げ型なので今後もこの数字を維持できるのか
申し込みは一時的な面もあるが、ストック型の収益であり、切り替えてもらったユーザーの売り上げへの寄与は、今後に順調に効いてくる。

城口CEO:今期は確かに良かったように見えるが、期初に立てた予算通りの売り上げとなった。コロナ禍での上方修正要因も多少あったが、2018年から2019年にかけて仕込んだ新しい事業の花が開いている。電気の制度改革が徐々に進み、今年の春に発送電が分離され電気の自由化の競争環境が整った。制度改正に伴って非連続に売り上げが伸びる事業形態で、今期は予定通りの数字で伸び、来期や再来期も同程度の成長を実現する見込みだ。

―3~5年後の売り上げや利益の目標はあるか
2025年から2020年代後半の間には売上高100億円を目標にしたい。それをもってプライム市場に上がる。同市場は利益が25億円ほど必要で、売上高100億円規模を目指す計画だ。

―BtoB向けとBtoC向けビジネスの売り上げの割合は変わるのか
TAMや市場規模を考えると、データ事業のほうが大きい。2025~2030年の売上高100億円を達成する頃には、データ事業のほうが大きくなるだろうが、制度改正が2024年まで続く。我々が本当に事業を進めるにはまだしばらくかかる。2020年代中盤までは両事業が半々、もしくは多少プラットフォーム事業の割合が大きい状態で成長する。5年後にデータ事業が並び、かつさらに大きくなる。

―M&Aを経営のツールとしてどう考えるか
IPOで公募調達はほとんどできていない。現在の株価や上場時の資金調達の観点では、十分に資金を獲得しておらず、現時点ではM&Aができる状況ではない。今後しっかり評価され株価が十分な水準に達したら、その選択肢が出る。現時点ではそれにふさわしい値が付いておらず、株価をしっかり付けていく。

―海外事業については
海外市場を攻めるよりは海外の企業と組んで日本のエネルギー市場の変革を加速させる視点で考える。日本のエネルギー市場は世界で最も大きい。これだけ大きな市場でナンバーワンかつオンリーワンの立ち位置にいる我々は徹底的に市場を掘り下げる。変革をすることが日本人・日本企業として脱炭素社会を日本に実現できなければ意味がない。期待される役割として日本に全集中するつもりでいる。

一方、エネルギーの変革は日本だけではなく、米国や欧州など先進国で同時に起こっているため、日本だけでガラパゴス的な事業展開をすると、効率的に進められない。欧州系の海外企業との提携や買収を見越して事業を展開する。

―海外の事業者が日本市場に参入することと、脱炭素社会の実現の関連性は
分かりやすい部分では、日本では電気自動車はほぼ走っていないが、米国のカリフォルニアや中国、欧州では電気自動車しか走らないような国もある。電気自動車がそれだけ走ると、それを前提としたソフトウェアや関連サービスが発展する。

脱炭素で日本よりも5年先を行く国やベンチャー企業、大手企業があるが、日本には独自の制度やルールがあり、そのまま当てはめても上手くいかない。我々はもともと英国のケンブリッジで創業した会社で、拠点がロンドンにある。ネットワークを活用して海外事業者と必要に応じ、適時に提携してEVの分野で、日本で3年後に必要になるシステムを独自開発するなど準備を進める。

―海外の事業者とは技術を持つ会社であり、直接発電に関係がない企業ということか
両方あると思う。我々が直接提携するのは、テクノロジーやサービス周りの会社だ。だが、海外の事業者も風力発電やEVに参入しており、そうしたプレーヤーも入ってくる。ただ、我々は発電所や電気自動車などを管理するソフトウェア企業で、ハードウェアを扱わないことが基本的な戦略だ。

―事業を拡大するうえで資金調達が必要だが、そのタイミングや可能性は
会社の信用力や格を上げて大手エネルギー企業との取引を増やすことに加えて、資本市場へのアクセスで資金調達手法を多様化する意図がある。現時点ではダイレクトリスティングという方法なので叶ってはいないが、市場から経営陣が持つ適切な水準で評価される場合には今回叶わなかったPOは選択肢の1つだ。株価がいつどう評価されるか次第なので何とも言えない。

黒字で運営でき、急いで調達しなければ会社経営が成り立たない状態ではない。利益体質になっており、自前のキャッシュフローで未来への投資を継続でき、タイミングを見計らう。

―エネルギーデータ事業で、スマートメーターのデータはマーケティングなどへの応用可能性はあるのか
もちろんある。電力データで各家庭のスマートメーターのデータが30分に1回記録されている。現在は電力会社しか使えないが、2022年4月にAPIが解放されて、さまざまな事業者が使えるようになる。

フィンテックをイメージすれば良いが、銀行情報はもともと銀行やクレジットカード会社しか使えなかった。それをマネーフォワードやフリーのような会社が使えるようになった。電気でも、それと同じことが1年と少し先に起こることが法律で決まっている。電力データのAPIが公開されると、電気の家計簿やマーケティングに使いたい。例えば、配達業者が荷物の配達先の住人の在宅時間を推定するために使いたい、EC事業者が顧客の属性推定するなど、いろいろな形で電力データの利用が見込まれる。我々も利活用サービスを予定している。

―上場が「ジャパンエナジーチャレンジ」に与える影響は
ENECHANGEが主催して、日本の電力やガス会社と欧米のエネルギーベンチャーのマッチング・アクセラレーションプログラムのジャパンエナジーチャレンジをこの3年間運営してきた。来年も再来年も継続する。

そうしたプログラムを通じて年間200社のエネルギーベンチャーと対話する。具体的には次世代蓄電池の会社や、EV充電のソフトウェアの会社、蓄電池制御の会社、風力発電設備をドローンでチェックして故障を検知する会社などがある。世界には日本では聞いたことがないような新しいエネルギーテック企業がある。

様々な会社との協業を議論しており、上場することで場合によっては資金力を活かして提携や買収もできる。彼らを通じて海外市場に参入することが考えられ、日本市場に独占的に紹介することもできる。

脱炭素については、日本は欧米に比べて5年ほど遅れている。一方で、日本も米国も欧州も2050年に脱炭素を目指す。デッドラインは同じだが、日本にはテスラもなければEVメーカーもない。海外企業との提携を推進しないと2050年の脱炭素社会実現に間に合わない。我々は最大限そのような取り組みをしたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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