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上場会見:STIフードHD<2932>の十見社長、技術と知財で差別化

25日、STIフードホールディングスが東証2部に新規上場した。初値は公開価格の1900円を9.47%上回る2080円を付け、2050円で引けた。同社は水産原料を使った総菜を製造・販売する。「セブンプレミアム」のホッケやサバの塩焼き、紅鮭やたらこなどおにぎりの具材を製造しており、セブン‐イレブン・ジャパン向けの売り上げが8割を超える。十見裕社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

家庭でするよりもおいしく調理し、かつ利便性を担保して消費者と魚の距離を近づけたいと話す十見社長

家庭でするよりもおいしく調理し、かつ利便性を担保して消費者と魚の距離を近づけたいと話す十見社長

―初値の受け止めについて
時価総額を110億円と評価してもらった。感謝すると同時に責任を感じている。株主が満足できる事業体制と業績の伸びを実現したい。

―競合との違いや強みは
ものづくりの技術力が他社との差別化や近い将来に海外マーケットで製造・販売する時に重要なカギとなる。今、焼き魚がコンビニエンスストアに並んでいることが当たり前に思われているが、4年前にはなかった。我々が単品の焼きサバを発売し、初めて3段階の焼成のガス置換パックを採用した。焼き魚の皮のパリパリ感を残しながらガス置換で空気を全部抜き出す。そこに窒素や魚に合わせて混合したガスを封入し、賞味期限を延ばす。水産加工業者はこのような技術を保有していないため、我々の強みになっている。

また、おにぎりの中身に、家では焼けないようなカリカリとした鮭やたらこをホットパックという特殊焼成機を連続して使う技術で調理する。おにぎりの具は低温殺菌することが多い。鮭を焼き、袋の中で低温殺菌すると、身からドリップが出ておいしい成分が流出する。同時に水分が付着して焼いた時の香ばしさがなくなる。

我々はホットパックで熱いままパックし、その具材をおにぎりに入れてコンビニの棚に並べても賞味期限を担保できる。この技術を持つ前は、おにぎりに使う鮭のフレークの販売は常に入札のようになっていた。技術の導入によって、一時は我々がセブン-イレブンの紅鮭のおにぎりの中身を全て納入していたが、1社で担うことにはリスクがあるため、今はライセンスで10%分を他社に作ってもらっている。技術でマーケットをコントロールできることは大きい。この技術は特許も取得しており、新技術と真似されないための知財管理で差別化を続けたい。

■大阪工場で生産増
―売場面積に対する生産能力の充足率は
昔は魚の総菜はほとんどコンビニでは売れなかったが、この数年で非常に増えている。10年前に2つだった工場が現在は10になった。それでも大阪・近畿地区の工場が少ないため、九州から近畿地区の一部へ、千葉県から北陸などに運び、輸送距離が長くなってきた。上場の調達資金で大阪工場を設立して、2021年12月期末までに稼働状態にする。それによって、今の需要に対する充足率はもう少し上がる。

一方、需要が伸びている。透明な小鉢のようなクリア容器に入った商品の製造を開始した。巣ごもりの時には、水産物と野菜の組み合わせがヘルシーで良いと評価されたが、このような商品はコロナ禍とは関係なく伸びていくため、ある程度のいたちごっこはやむを得ない。2020年12月期第3四半期末に稼働開始し、来期末にはフル稼働するように準備している。

―工場の稼働で、現状に比べ生産能力はどのぐらい増えるのか
現状のキャパシティが1日当たり54万食だ。ただし、一部で働き手の海外研修生が少ないため実稼働は日産約35万食となっている。大阪工場が稼働すると1日当たり77万食で、実稼働は47万食となり35%のアップが見込まれる。

―セブン‐イレブンの北米展開に関して引き合いがあったのか
セブン‐イレブンの焼き魚が、インバウンド観光客のなかで特に白人に人気があることはセブン‐イレブンにも我々にも予想外だった。北米の人たちはサバにレモンをかけて食べるようで、もう少し早くテスト販売をしたかったが、コロナ禍が終息した段階で、日本からの輸出でスタートしたい。北米ではサバの塩焼きは20ドルぐらいするので、競争力は十分にある。

―セブン-イレブン以外への展開余力は
一つひとつの製品へのこだわりが強いことにはシンパシーがあり、増産に向けて大阪工場への投資をするが、専用工場ではない。デリカテッセンはセブン-イレブン中心だが、カルディ向けの商品やキャットフードの製造なども手掛けている。缶詰、冷凍冷蔵商品などを作っている。

缶詰や冷凍食品のナショナルブランド製品やOEMの積極受注、海外販売などで業績を伸ばしたい。上場して成長の戸口に立つことで、そのスピードを上げたい。多方面に拡大する施策を進めている。

■SDGsと新技術
―冷凍・冷蔵倉庫に使われるガスの問題に関する備えは
SDGsの観点では、地球温暖化で魚の獲れる場所が変わってきている。海水温が2~3度変わると大きく環境が変化することを原材料調達の場面で強く感じている。このことから、フロンガスを少なくするために最長10年以内にそのような冷凍・冷蔵庫の使用をやめる。今回1ヵ所の工場で窒素ガスの設備とし、今後全ての設備を切り替えていく。

―ほかにSDGsの取り組みはあるか
フロンガスの使用を10年以内にゼロにしようということのほかに、海洋資源の管理がある。継続可能な資源から原材料を調達する。国際的な協定の下で認可されたMSC漁業認証資格を持った調達先のみから購入する。未来の海洋資源を残していきたい。事業によって貢献できる社会的な使命として取り組んでいる。

―人材不足に備えて工場の機械化や自動化を進めるのか
人手が必要な事業であるため、事業に対する大きな影響がある。焼き魚をメインに作っているため、夏になると工場では暖房と冷房を一緒にかけている状態で、室温が40度近くになる。業務を単純化できる部分は、慶應義塾大学系のベンチャー企業でAI関連のロボットアーム技術(触覚を扱うリアルハプティクス技術)を持つモーションリブと共同開発してロボット化を一歩一歩進める。総菜の製造に特化した形でスタートした。

―今期の業績見通しについて
下期については、9月以降新型コロナウイルスが蔓延するか否か、その影響が見えない。主力商材の紅鮭が春の段階で30%ぐらいに下がっている。また、外出自粛といった事態になると、確実に事業に影響する。上場期に予測に未達ということはあり得ないとして保守的に見ている。

―極洋が株式を売り出したが、将来的な株主構成をどう考えているのか
極洋とは非常に良好な関係であり、お互いやりやすい関係になった。有力な原料調達先であり協業したい。ただ、株主だから優先的に取引することは一切なく、透明性を担保して進めたい。持株比率は10%を切っており、我々の顧客であるセブン‐イレブン・ジャパンと同じ株数だ。キャメル珈琲も保有しているが、あとは機関・個人投資家に持ってもらいたい。

―配当政策は
株主には配当と成長に対する期待がある。食品メーカーとして30%程度の安定した配当性向を継続したい。プラスアルファについては成長で恩返しをしたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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