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上場会見:モダリス<4883>の森田CEO、対象疾患は7000種

3日、モダリス<4883>が東証マザーズに上場した。初値は公開価格の1200円の2.1倍の2520円を付け、2230円で引けた。同社は遺伝子を切らない「CRISPR-GNDM技術」を基盤に遺伝子治療薬を研究・開発する。他社との協業によるパイプラインは5本で、自社開発分は2本。森田晴彦代表取締役CEOが東京証券取引所で上場会見を行った。

森田CEOによると、遺伝子の機能の発現を調節するCRISPR(クリスパー)技術に基づく治療は、遺伝子の二重鎖を切断するゲノム編集技術に比べ、安全性が高い。

森田CEOによると、遺伝子の機能の発現を調節するCRISPR(クリスパー)技術に基づく治療は、遺伝子の二重鎖を切断するゲノム編集技術に比べ、安全性が高い。

―初値が公開価格を上回った
非常に高い評価をしてもらったと喜んでいる。一方で、株価は我々がコントロールできるものではないので驚いている。

―目論見書想定価格820円の評価は
企業価値がどれぐらいあるかについて、日本では遺伝子治療の会社はまだないものの、米国では先行事例がいくつかある。それらとの比較で、我々がどのぐらいの位置付けであれば良いかという希望を持っていたが、820円は、新型コロナウイルスの感染拡大のリスクなどでのディスカウントがあって、結果論では若干低めであっただろうと、値付けを見て感じている。

―ブックビルディング段階での海外と国内投資家への配分は
割合は開示していない。今回は臨時報告書方式で、規制上の理由で米国の投資家は参加できず、シンガポールや香港、英国を含むEUの投資家が札を投じている。投資家から非常に強い関心があり、海外からも適正に評価され、今日の株価形成につながったと考えている。

―上場の目的や狙いは
大きな希望はたくさんの疾患に対して治療薬を作ることで、資金を確保してどのような経済状況になっても、我々の力で開発できる財務的な安定性を実現したい。また、たくさんの疾患を相手にしていく時に、より多くのパートナー、社員を集めていく必要があり、パブリシティを獲得していくことが重要となる。

―海外では、CRISPR技術がiPSやRNAiなどより注目されていることにはどのような背景があるのか
欧米では、CRISPR技術が、iPSなどの技術と比較してより多く検索されている。日本では、山中伸弥先生がノーベル賞を受賞した背景があり、かなり局地的なトレンドがある。日本以外の国では圧倒的にCRISPR技術が注目を集めている。難易度など技術的な問題から、遺伝子治療がより早く実現するトレンドに乗るとのではないかと考える。再生医療は素晴らしい技術だが、いろいろな困難を考えると、時期的にはもう少し後にトレンドの山が来ると見ている。こういった動向を踏まえて遺伝子治療が先に注目を集めていると思う。

―自社開発と協業開発の割合について、また自社開発を加速させるうえでの提携の構想は
提携を増やしていきたい。それ以前にあるのは、遺伝子疾患は数千あって、我々だけでは到底カバーしきれない。我々の技術で、ほかの技術に対して優位性を持って取り組める疾患が100から数百あると考えているが、それでも1社で進めるには多すぎる。ただ、なるべく多くの治療薬を開発するためにパートナーの力を借りてターゲットの疾患を増やす必要がある。それが我々の一番の目標で、実現するために財務的な裏付けがどうあるべきかと考えると、一定の割合の協業パイプラインと自社パイプラインが適正な比率で存在していれば黒字化を維持しながら、資金の範囲でたくさんのパイプラインを実現できる。その割合を適正にコントロールしていきたい。

―協業モデルで得たキャッシュで自社パイプラインを充実させていくのか
基本的にはそのような想定でいる。

―協業と自社開発の適正な割合とは
追加の大型資金調達しないでも自社開発を賄える範囲での協業パイプラインがあり、今は5対2だが、それを維持できれば、黒字を確保しながらパイプラインを増やしていけると想定している。

―5対2がちょうど良いのか
サンプル数が少な過ぎるので分からない。試行錯誤しながら進めているが、今のところ比較的うまく回っている。

―協業先は国内の製薬会社だが、CRISPR-GNDM技術を海外の会社はどう評価しているのか
日本の会社が偶然2社並んでいるが、引き合いは海外の会社が多い。実際には、遺伝子治療に取り組んでいける体力がある製薬会社は日本でもかなり絞られ、上位5~6社より下になると参入が難しい。そういった背景から、今後は海外企業と提携していくと予想している。

今、日本の会社と協業している背景として、ローンチパートナーとしてアステラス製薬が最初に2017年に共同研究を行い、その実績が非常に良かったので拡大共同研究契約を締結した。成果が良かったからリピートしてもらったことで、見かけ上は日本の製薬企業が多い。だが、アステラス製薬もエーザイもボストンに研究拠点を持っており、日本の案件というよりは海外案件になっている。ほかにもボストンに拠点を持つ製薬会社と話しており、今後研究を発表する際には海外の会社の名前を聞くようになるだろう。

Joseph S. McCracken社外取締役が幅広いネットワークを持っており、そういった企業へのアクセスには全く困っていない。一緒に始めてもらえば、アステラス製薬の場合と同様に我々の技術の良さを理解して、プロジェクトを広げてもらえると思う。

―競合との差別化は
競合と棲み分けの話がある。Sangamoセラピューティクスにはジンクフィンガー(ZFN-TF)という技術があり、ゲノム編集を行う。一方で、遺伝子のスイッチを触るようなものも扱っていて、我々と競合にある。我々とSangamoが公開されているデータをもとに、直接競争する形で同じターゲットに技術を適用する試験をしている。我々の技術に圧倒的な力があり、優位性を持っている。

これは、ゲノム編集についても同様で、Editas Medicineやインテリア・セラピューティクス、CRISPRセラピューティクスもゲノム編集を手掛けている。Sangamoは1980年代後半に設立した会社で、今ようやく臨床フェーズ1~2に入り、不明確な結果しか出ていない。これに対し、2013年に設立されたCRISPRセラピューティクスがこれを追い抜き、はるかに明確な効果を出している。ZFN-TFに対してCRISPR技術の優位性がかなり高いと考えるため、同様に遺伝子制御についてもSangamoが行うものに対して、かなり優位性があるという我々のデータを裏付けている。

棲み分けと言ったのは、ゲノム編集と遺伝子制御は得意とする対象疾患が違い、重複があまりないからだ。例えば、我々のリードプログラム「MDL101」では、先天性の筋ジストロフィー(MDC1A)を対象とする。この疾患には、約3000のアミノ酸、9000ぐらいのDNAに規定される「LAMA2」という遺伝子が関わっているが、患者ごとに20~30ほど異なる箇所にエラーが生じる。これをゲノム編集で治そうとすると、ゲノム編集は非常に正確な方法であり、特定のエラー箇所についてはきれいに書き換えられるが、他の場所にエラーのある患者には治療薬が使えない。異なる30の治療薬がなければ、同じ疾患でも治すことができない。これに対し、我々は技術はLAMA2の姉妹遺伝子で筋肉細胞中でスイッチが切れている状態の「LAMA1」を発現させ、エラーが入っているLAMA2遺伝子を補完し治療する。

遺伝子治療の世界では、皆が集中的に狙うDMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)などもあるが、全体では7000の疾患があり、競合という世界ではない。やらなければいけない仕事はいくらでもある。各社が得意なところを個別に相手にして治療薬をなるべくたくさん作っていこうというのが遺伝子疾患の領域だ。

―設立4期目で黒字化可能なビジネスモデルの要点は
我々自身、こんなに早く黒字化を実現できるとは考えていなかった。公開前にベンチャーキャピタル(VC)などから41億円を調達したが、使わずに手元にある。もう少し開発を進めなければライセンス契約を実現できないと思っていたが、遺伝子治療の特性で動物のモデルでかなりしっかりした効果が出ると、その段階でリスクを低減できているということで、思いのほかパートナーと早く契約を締結できた。

これは、昨今(新型コロナウイルス感染症の治療薬とされる)レムデシビルの臨床試験が、米国で6000人を対象に行われているが、それでもあまり白黒がはっきりしない。一方で、ゲノム編集の治療薬を手掛けるCRISPRセラピューティクスが先月に3人のうち2人の臨床試験の報告をしており、この時点でかなりはっきりした結果が出ている。遺伝子治療では少ない例数で、あるいは、人に対してマウスやサルなど異種のサンプルで、十分な結果が得られるため、このビジネスモデルが成立する。

―臨床試験が始まるに当たり、どのようなリスクがあるか
有効性の面でリスクはないと考えている。動物モデルやヒトの細胞を使った試験を繰り返して、その間をブリッジング(代用・補完)しているため、ヒトに全く効かないことはおそらくない。リスクがあるとしたら安全面と用量についてだ。

ヒトに使う際の用量を割り出す際、ヒトの細胞で行った試験と、マウスの細胞でしたものとの間のブリッジなどの計算などが、何らかの理由で狂った場合、ヒトで十分な効果を出す用量にならないことはあり得る。

安全面では、我々固有のものもあるが、これまでの遺伝子治療で問題となっているのはウイルスベクターそのものの安全性についてであり、リスクが少ないものを使いながら動物モデルで検討を重ねる必要がある。

―技術的な問題に直面した場合、基盤技術自体の拡大や変換はあり得るのか
技術的には、やろうと思えば明日からでもゲノム編集もできるが、知財的な我々のポジショニングがあるため、そう簡単ではない。逆に、他社も遺伝子制御をコンセプトに我々を模倣できるかもしれないが、非常に入り組んだ知財などを整理する必要があるため、この障壁は大きい。我々や、先にCRISPR技術で上場している米国の会社が大きく評価される背景の一部には、知財の整理をしていることがあると思う。今までの日本の製薬会社は、化合物が1つあったら、それを基に抗生物質や免疫拒絶の薬などを作ってきた。遺伝子治療はAppleがいろいろな部品を集めて製品を作るように、知財を集めてパッケージにすることが非常に重要で、日本はこの作業が得意ではなかった。これをやってきたことは非常に誇れる成果だ。

―2019年12月期の研究開発費は3億円だが、増加の見通しは
臨床試験、あるいは前臨床試験のINDの段階に入らない限りは、人件費に比例して自然に上昇していく。我々のモデルを継続していく限りは、研究開発費が突然増えることはなく、対象パイプラインを増やし、そのために人員を増やしたら研究開発費が上がっていく。

―自社パイプラインが臨床段階に入ると研究開発費が増えるのか
上がる。我々が自社で臨床開発を進めるか、その前の時点でパートナーと組んで臨床を任せるかは、状況を見ながら進めていく。リードプログラム101については、たくさんの会社から引き合いがあるため、適切な条件が整えば、自社開発を変更しリリースしていくことも視野に入っている。

―研究者の採用含む従業員数の増え方は
一定の人数で特定のパイプラインがライセンス契約に至るまで、ほぼ2年で仕上がる。パイプライン拡充のためには、新規採用分と前のプロジェクトが終わった人員を充てられるため、パイプライン増加に従い、劇的に増員する必要はない。ただし、臨床開発を自社でする場合、スキルセットの違う人たちを採らなければならないので、大きな研究開発費がかかる。

―日本に研究拠点を置くことは
全くない。バイオテックやITは柔軟性が必要な業種で、会社は常にピボットしながら正解に近づいていかなければならない。だが、日本の雇用制度は硬直的でピボットできない。米国の雇用制度の柔軟さが必要で、日本では研究開発をしていくことは難しい。

―日本以外の他国ではどうか
柔軟な雇用制度があれば良いが、欧州にもなかなかないため、米国が現実的な選択になる。そのようなことで、日本で採用する時に保守的になるため、長期的に在籍する人材しか採用できない。

―バイオベンチャーが早期にパイプラインをライセンスアウトする流れが世界的な流れだが、スリムなバイオベンチャーが上場することは続いていくか
トレンドは分からないが、米国でも10年ぐらい前のシリコンバレー型のバイオテック企業は臨床試験を後期まで進め、十分に価値を高めてから上場することが一般的だった。ここ10年ぐらいのボストン界隈でVCがバックに付いて運営する会社は、かなり早期に臨床前に上場していくモデルを採用していることは事実だ。だが、CRISPRセラピューティクスなどは上場のタイミングは早かったが、200人ほど採用しているため、決してスリムではない。それぞれ事業モデルがあり、背景の財務やVCのトレンドに適合しながら選択している。今後、経済状態がスローダウンするような場合には、異なるモデルに適応しなければならないため、永遠に続くとは考えにくい。

―企業関連の著名人のような個人が株主にいる理由は
上場バイオベンチャーの社長が多いが、バイオベンチャー業界に密なつながりがあり、私も創業以前からよく意見交換などをしていた経緯で声をかけた。その結果、創業当時のラウンドに参加してもらったことは、我々の事業計画に期待があったからで、非常に誇りに思っている。

―株主還元の方針は
研究開発に資金を振り向けることが企業価値を高めると考えており、当面の間は配当をする計画はない。そのほうが株主のためには効率が良いお金の使い方ではないだろうか。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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