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上場会見:エブレン<6599>の上村社長、伝送回路・構造技術に強み

29日、エブレン<6599>が東証ジャスダックスタンダードに上場した。初値は付かず、公開価格の1350円の2.3倍となる3105円の買い気配で引けた。同社は産業用コンピュータに使用されるバックプレーンの専業メーカー。上村正人社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

製品の量産段階までは半年から2年ほどになることもあると話す上村社長

製品の量産段階までに半年から2年ほどを要し、その後は長期安定供給することになると話す上村社長

―初値が付かなかった
大変高く評価してもらっている。株価は市場が決め、時間を置けば適正な価格に決まると考えており、楽しみにしている。

―創業から50年近く経つが、このタイミングで上場する狙いや意味合いは
会社は一定の規模になると社会性が高くなる。個人の持ち物というより、たくさんの人に支えてもらえる形にすることが理想的で、上場することがよいと考えていた。

リーマンショックの頃に上場しようとしており、かなり具体的なところまで準備を進めたが断念した。その後、業績回復を最優先としていたが、上場への姿勢は変えなかった。

新型コロナウイルス感染症の拡大については想定していなかった。最終消費者と距離があるビジネスであり影響はなかったが、環境が悪いため上場はどうかという意見もあった。我々のような小さい会社にとっては、上場準備の仕切り直しをすることは、費用・時間的に大きな負担であるため、計画通り進めた。

―大手企業との取引につながる技術的な強みは
産業用コンピュータのなかにバックプレーンというものがある。電子機器はプリント基盤の上にICなどの素子を並べて電子回路を作る。産業用ではそれが複数枚にわたり、統合して全体でコンピュータとしての機能を達成する。産業用コンピュータはパーソナルコンピュータと異なり、用途が多岐にわたる。

一般のPCは空調がされている部屋で使う前提で、極端な温度や湿度があったり、強く振動する環境で使うことはない。対して、我々のコンピュータは列車に搭載することもある。新幹線などでは線路周りを安全確保のために常に監視するが、スペースの関係で空調もなく、振動や衝撃を受ける客席の床下に設置される。通信や医療など様々な場面でも使われ、電磁波で(医療)機器に影響を与えないように、あるいは高周波で動かすために発熱を一定以下に抑制可能な筐体を設計するなど、要求される仕様が一般のコンピュータと異なる。

40年間ひたすら、そうした要求に取り組んでおり、バックプレーンの伝送回路技術やコンピュータの構造技術に精通している。大手顧客は自社で作るよりも専門としている会社から完成しているものを納入すれば都合がよい。その実績が評価され、指名されてここまできた。

―具体的に描く中長期的な成長ビジョンは
顧客は、全体のシステムを取りまとめる立場にあるメーカーだが、Appleのように工場を持たないファブレスを志向し、部品を個別に購入して自社工場で組み立てることを避けたい傾向にある。

産業用装置や機械を作っている顧客も、自社工場で大掛かりに生産することを考えていない。なるべく完成度の高いものをそのまま使えることをよしとする傾向が非常に強まっている。したがって、我々のようなコンピュータを専門とするメーカーに対して、スイッチを入れれば使える物を要求するようになっており、このニーズに対応すべくユニット供給体制を強化する。

また、工業用コンピュータ関連製品を作る会社は日本だけでなく、台湾や欧米を含めてたくさんある。だが、顧客の要求仕様に基づき、長期安定供給を前提にした受託設計・生産のビジネスモデルを採る会社はあまりない。

いま、IoTやローカル5G、エッジコンピューティングといった技術を駆使したデジタルトランスフォーメーション(DX)の案件が増えつつある。これに対応するため、最適なコンピュータ・ハードウェア・プラットフォームを開発・提供できる体制を取りたい。

さらに、中国の蘇州市に100%子会社を持っており、調達で力を発揮している。中国や台湾を中心とした現地での技術力と価格競争力のある調達先を積極的に開拓する。それを我々が日本に輸入し、顧客に価格メリットを提供することで大変喜ばれている。この度合いを増やしていきたい。

―回路設計を中心としたボードコンピュータの開発・製造にも事業を拡大させるとはどのようなことか。ハードウェア・プラットフォームの開発と関連するのか
CPUチップの開発は専門外で、顧客はそのようなチップを開発する。(コンピュータ)は半導体チップがあれば、それのみで回路が動くものではなく、周辺に部品を付けなければ作動しない。それをベースボード設計といい、今後その設計に積極的に取り組みたい。CPUチップそのものを開発していくのではなく、そうしたものを使うためのベースボードの回路を設計するレベルから適切な商品化をしていきたい。

―ラズベリーパイのようなシングルボードコンピュータを使うイメージか
産業用コンピュータは何枚ものボードに分かれたものを統合して一定規模以上のものを作ることが多いが、最近は一つのボードのなかにCPUやメモリを備えてコンピュータの機能を果たすものがある。これがエッジコンピューティングやIoTの端末側など小規模なデータ処理・収集のようなことに多用される時代が来るとみている。これらの用途に適切に対応でき、より使いやすいハードウェア・プラットフォームを開発していきたい。

―中長期的な経営上の目標は
今年は、米中貿易摩擦に起因する半導体の売り上げの変動が問題にされず順調に推移している。半導体製造検査装置の顧客が多いため、中期的には成長ドライバーは半導体関連となる。長期的には、個人的な見方だがスーパーコンピュータが面白いと思う。これからはスパコンが世界の課題を解決するキーのマシンとなる。生産技術や半導体を中心とする回路技術の進歩で理想とするようなものが一般企業で使えることも夢ではないと考えている。

―業績の数値目標はどうか
数値的な目標はない。ただ、3年の範囲では、売り上げで10%ほどの成長は可能であろうし、そのぐらいは実現しなければならない。経常利益率は10%ほどが適正と捉えている。我々のビジネスは、長期的に取引してもらえる顧客との関係が基盤であり、その観点から適正価格が戦略的に重要であると考えているためだ。

―市場の規模や競合状況は
どの程度の市場規模があり、ほかのメーカーがどの程度内製化しているか、我々のような専門メーカーの生産規模のデータはない。なぜなら、我々は中間製品を作っており、工業統計データがない。我々の分野に限定すると市場規模が分からない。産業・工業用に使えるコンピュータのユニットやモジュール、デバイスを作っているメーカーはたくさんある。ただ我々のように顧客の市場にあわせて受注設計・生産をする会社はあまりない。

また、ボードコンピュータメーカーもたくさんあり、画像に強い、通信に強いという特徴が必ずある。我々と競合するように見えるが、彼らが我々の部品を買って、自社のボードを導入してシステムを組み上げて顧客に出荷するといったように、ビジネスパートナーとなっているケースが多い。

―先般のNTTとNECの提携はビジネスに影響するのか
当社とのビジネスの面では関係がない。研究所で進めるような段階で、現状では我々のところに仕事が回ってくるレベルの話ではない。5Gの設備は、4Gなどの中継基地局と違い、ほとんどがコンパクトなアンテナであるため、我々が設計するような大きなものは使わない。ただし、中継局装置となると我々の出番であるため、5Gが発展していくと案件が発生する可能性はある。現段階では何もない。ただ、NTTとNECが本気で組むことは誠に良いことだと考えている。

―取引先を広げる方針は
この分野の製品は、社会性や公共性が高く保守的な部分がある。最終消費者と距離のある分野を手掛けており、うまいアイデアから一挙に売り上げが増えるという業種ではない。一旦指名を受けると長期の取り引きとなるため、地味ではあるが実績がとても重要だ。鉄道や通信、海底ケーブルなど(複数の分野)を手掛ける顧客は、同じ会社のなかでも事業部ごとに独立採算的な体制になっていることが多い。このことから「エブレンに仕様を出すとしっかりした製品を納品してくる」という評価が伝わると、(他の事業部から)途端に声が掛かる。広告宣伝に力を入れて能力をアピールするよりも、実績を積んで指名につなげることが効果的と考えている。

―配当政策は
いままでは、限られた株主構成の会社で、配当よりも内部体制の整備に重点を置いてきた。不特定多数の株主を考えたうえで配当政策をしっかりしなければいけないと考え、1株当たり10円だった配当を、6月には15円に引き上げた。次年度は18円程度を想定している。我々の規模では配当性向が適切なパラメーターとならないかもしれないが、今後は上場企業の平均配当性向30%を見据えていきたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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