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上場会見:ヴィス<5071>の中村社長、三つのデザインを一気通貫

25日、ヴィス<5071>が東証マザーズに上場した。初値は公開価格の820円を8.05%下回る754円を付け、714円で引けた。同社はオフィス空間やWEB、グラフィックのデザイを一貫して行うデザイナーズオフィス事業を手掛ける。中村勇人社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

2003年に町工場のリノベーションプロジェクトに携わったことがオフィス環境整備の原点だったと話す中村社長

2003年に町工場のリノベーションプロジェクトに携わったことがオフィス環境整備の原点だったと話す中村社長

―初値が公開価格を下回った
一言でいえば残念。類似というところでは、1週間前に上場したドラフトの傾向までは行かずとも下げたのは残念だった。事業にしっかり取り組み、安定した事業運営と成長を世の中に見てもらう必要がある。

金谷智浩常務:1日のなかでは、公募価格に近い値が付いていた。地道に進めていきたい。

―2社に1社がキャンセルするなか、上場を中止するつもりはなかったのか
中村社長:上場する目的がどこにあるかということが全てだった。一つ目の大きな目的としては、自分たちのマーケットを作りたい。オフィスをデザインすることで、そこで働く人たちの環境を改善することでエンゲージメントを高めることや、採用力を上げることは、企業にとっては生命線になっている。そう考えると、市場環境よりも、自分たちがこれからやっていかなければならない重責が優先すると判断して、この環境のなかでも出ていった。

もう一つは、IPOをすることで情報を開示する会社として自社の採用力を上げ、新卒学生や中途採用の求職者をしっかり掴みたい。タイミングが悪いことは分かっていたが、底から頑張っていこうと考えた。

金谷常務:そのような目的があり、また、ベンチャーキャピタルが入っていないことも(判断の背景に)あった。

矢原裕一郎取締役:資金調達も目的の一つだが、今は金利がかなり低く、TIBOR連動の1ヵ月で0.1%ほどで調達できるため、(主な)目的がその部分では異なる。

―新型コロナウイルスの感染拡大について、今後のオフィス需要をどう考えるか
中村社長:2月から3月にかけて受注が大きくストップしたり、延期はあまりない。先々を考えると影響はゼロではない。2008年のリーマンショックの時に経験したことだが、顧客が成長企業で、常に伸びている業界(の案件)を手掛けていることで事業が成り立っている。止まっているものもあるが、ほとんどは通常の状態で動いている。楽観はしていないが大きく悲観もしていない。

金谷常務:テレワークが劇的に進んだ。制度は整わないものの企業が導入し始めた。そのなかで模索している状態で、来年度はテレワークがより推進される社会になると思う。効率よく作業するという意味での「働く」ことと、仲間と何かを作るという意味での「働く」という側面のうち、何かを作り上げるための場所が必要になってくる。会社が、そのようなデザインのスペースを作っていくように思う。我々はそういう提案をすべきで、テレワークを否定せず、より効率よく仕事を進めるための本部のようなオフィスの在りかたについてアイデアを出しながら作っていきたい。

―リーマンショック以上の影響があるとされており、オフィスの縮小も事業となり得るのか
リーマンショックの前までは拡張や移転ばかりしていたが、ネガティブな移転の案件が生じた。広い場所から狭いオフィスへの移転の際に、社員のモチベーションが下がることを避けるためにオフィスをきちんと作るという依頼があった。現状回復についての受注もあった。今のところ、そのような話はリーマンの時よりもかなり遅いと感じている。リーマンの時は10月に一気に止まっていった。

金谷常務:リーマンの際には世界的に金融恐慌になり、外資系の会社が日本から撤退するか、日本の市場を縮小するか、アジアのなかで日本から中国に移転するなど動きが速かった。今回は特定業種の企業が苦しんでいるが、BtoBの企業は状況を見ながら持ちこたえている状態。我々の顧客は、世界に広く輸出する製造メーカーのような業種以外の企業が多く、まだ影響が少ない。

中村社長:現在の当社への影響は限定的だが楽観はしていない。幸いにして今年3月は単月で過去最高の売り上げを計上する予定でいる。来期の第1四半期に大きく仕事が止まることは今のところない。ただ、楽観せずに世の中の動きを注視したい。

―東京オリンピック・パラリンピック延期の影響はあるのか
まだ昨日今日の話であるため、降りてきている話はない。ただ、仮に開催された場合には、大きな影響はないと考えていた。新築ビルの工事は交通規制などで止まると思うが、我々の業務では新築ビルは多くない。また、当社は、社員がいない休日に仕事を依頼されることが多い。

金谷常務:(開催される場合)期間中は主要道路の封鎖などで工事ができないのではないかと考えていた。オリンピックが一旦延期されたため、現場としては通常通りの仕事ができると考えている。

―ドラフトなど同業他社と比較した時の強みは
中村社長:三つのデザインをワンストップで行うことが、事業の最大の特徴。当社は2004年から始め、5800件を手掛けているため、そのナレッジの蓄積がある。積み上げてきた案件の量がノウハウを生む点や人材も強みに当たる。

大滝仁実常務:オフィスに特化してデザインしている。デザインを得意としつつオフィスに特化することでノウハウの貯め方が違ってくる。

金谷常務:具体的には会社はデザインだけが欲しいわけではない。社長や総務担当者は、働く人たちがどれだけ心地よく働けるかを考える。デザインに加え、ソリューションの総合力、すなわち働くことの価値を高めることを総合的に提案している。

―案件ごとのリードタイムは
中村社長:一つの案件は平均3~4ヵ月で、大きな案件では1年掛かるものもある。

―コンペの勝率と競合は
大滝常務:昨年実績で59%ほどだ。

金谷常務:ヴィスを指名するケースもあり、総合的な受注率は72%となっている。

ドラフトや什器メーカーのオカムラ、イトーキ、コクヨのほか、最近では店舗ディスプレイを手掛ける乃村工芸社や丹青社も競合となる。

―人材教育に力を入れているというのは
中村社長:個性的な教育の仕組みを持っている。分かりやすいところでは、3年間の育成プログラムがある。新卒学生について、年間20回程度、発表も含めて教える機会を繰り返しながら、1年目は社会人として、2年目はビジネスパーソンとして、3年目はリーダーとして教育する基礎がある。仕組みの面で変わったところでは、今年4月入社の24人について、役員4人が1年間、週に1度毎回30分程度対話する「ひよこミーティング」を行っている。IPOをしている会社では一番役員に近い会社と自負している。

金谷常務:新入社員と経営者がじっくり話せる会社はないと思う。新卒の段階から経営的な考え方を持ってもらい、1日の行動目標や、それにどうコミットし達成するかで、成長を加速させる。比較的若いうちから成長に対して報酬を出す文化があり、若いうちから成果を出せる裏付けがある。

中村社長:キャリア採用では、入社すると3ヵ月毎日私と話す。会社を知ってもらうことや、自分たちがしていることをしっかり伝えていくことが人材をグリップすることに資すると考えている。いろいろな新しい社内制度を導入するIT企業が顧客に多いため、それらの会社での事例をフィードバックして社内の制度に活かしている。

―VISビル事業について
2010年に全社員の前で話した「今後10年間の取り組み」にIPOの構想とともに入っていた。実現不可能と思っていたが、大阪・心斎橋で良い物件が見付かったことから始まった。10年前はカフェをテナントに入れた賃貸ビルを持つ構想だった。昨今の働き方改革のなかで、いろいろな働き方をそのビルで実現する事業を考えた。効果は三つあり、さまざまな働き方のエッセンスを吸収して顧客にフィードバックすること。また、不動産業としての安定した賃貸収入の確保、新しい働き方を広報する側面がある。営業スタートは来年1月になる。

―不動産業へ進出するのか
不動産業をやりたいとは思っていない。当社の目的は、働く人を幸せにすることであり、不動産で困っている人に、自分たちのビジネスモデルの運営委託を受けるイメージに近い。

―ビル管理会社とつながるのか
古いビルをリノベーションしてデザインを全て手掛け、どのようなテナント構成が良いかを聞きながら、サービスオフィスや、家具付きのセットアップオフィスを作るといったことがあり得る。セットアップオフィスは家具までデザインして、少し高めの家賃を得ることができ、今後面白い展開ができると思う。WeWorkのようなシェアオフィスはサブリースだが、我々は心斎橋の自社ビルで進める。将来的にはビルオーナーにセットで提供していきたい。

―2010年当時の「10年後の構想」には、IPOやビル事業以外に何があったのか
オフィスとWEB、グラフィックの三つの事業をする。また、不動産と連携し、事業規模の拡大も含めて、今の社員数の5分の1ほどの時に大きな花火を上げて、順調に進めてきた。社員数以外については実現してきた。

―次の10年に向けての目標は
具体的な事はこれから考えようと経営陣で話しているところで、会社としては、これまでは、オフィスとWEB、グラフィックを合わせて「360°オフィスデザイン」と表現してきたが、これからは「カンパニーデザイン」として、オフィスデザインに関わるサービスを会社に関わるサービスとつなげたい。具体的な内容は差し控えるが、不動産業と近づく、あるいは、ICT企業とより緊密に連携を取るなど、自分たちの事業の周辺領域に取り組んでいく。

―業績の規模、社員数の目標について
年率10~15%の増収を視野に入れている。もっとできないのかという声もあるが、人を育てるのは時間がかかる仕事で、質を落としたくない。クォリティを保ちながら仕事を続けていくために、20~30人の間での増員が望ましい。10年後に250~300億円の売り上げ規模で成長していきたい。

―利益のイメージは
事業規模が大きくなっても粗利の確保はそれほど変わらない。一つひとつの物件を確実に締め、1対1の原則を大事にしている。売り上げが伸びれば今の利益を確保できる。3~5年でオフィスを拡張するタイミングに大きな投資があるが、それを含めても今の成長率を維持できる。VISビルは建築資金の償却が非常に長いため利益自体は出やすい。

矢原取締役:VISビルの減価償却は定額法で50年ほどであり、毎月110万円ぐらいとみている。検討段階だが、4~9階を貸し出し、1フロアで100万円ほどの家賃を見込める。構成上は本業と比べて低い。

―株主還元の方針は
中村社長:広く多くの株主に応援してもらいたい。現在、配当性向20%で実施している。これを継続しながら、成長を見守ってもらいたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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