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上場会見:リビングプラットフォーム<7091>の金子代表、介護は安くて良いものを

17日、リビングプラットフォーム<7091>が東証マザーズに上場した。初値は公開価格の3900円を8.97%下回る3550円を付け、3030円で引けた。同社は介護や障害者支援、保育などをライフケア事業の単一セグメントとして手掛ける。金子洋文代表取締役が東京証券取引所で上場会見を行った。

成長の加速と業界の透明性向上を上場の目的と話す金子社長

成長の加速と業界の透明性向上を上場の目的と話す金子代表

―初値が公開価格を下回った
昨日リーマンショックを超えるVIX指数が計測されるようなマーケットでの公開となったことについて、投資家の期待に必ずしも沿える水準にはならなかった。一方で、流動性比率が低いため、短期的にアップダウンがあるなかで、ロードショーでも、少なくとも再来期(2022年3月期)まで待ってくれと言っており、この1~2年で利益を着実に伸ばして示していくことで貢献したい。

―「再来期まで待ってくれ」という言葉の内実について
既存事業をうまく運営しながら新規事業にアクセルを踏んでいく。例えば、トップラインを概算で20億円伸ばすのであれば、2019年3月期の売上高66億円に対して3割ほど。そこまで加速度を付けると利益が圧縮される。毎年15~20%ぐらい上げると、我々の想定する一定の利益水準に到達するはずで、それに2年ぐらい掛かる。それが損益計算書上の話。

開発を止めれば利益率はとても高くなるが、止めずに20%程度自社で開発する前提でも、想定する利益水準に到達する可能性が極めて高い。その水準が再来期にはある程度見える。今、組織体制の変更も含めて考えているため、株主総会のタイミングぐらいにまとめて報告しようと考えている。ロードショーで、セクター分けや詳細なKPIの設定を希望する声があり、それらも含めて検討している。

我々は、金融機関の融資を受けるなかでアクセルを踏んできた。金融緩和のなかで非常に追い風になっていたものの、金融情勢が不透明な状態にある。各金融機関のスコアリングの指標に自己資本比率の項目もあるため、一定の比率を保持したい。バランスシートも含めて、再来期ぐらいには一定のものを見せられるという意味で話した。

―自己資本比率の目安は
公表していないため、示唆すると明らかに10%は低い。一方で、ある程度成長させていくと、自社で不動産を保有することもあるし、セール&リースバックのように証券化・流動化で圧縮し、いくらでもコントロールできる。そうだとしても30%が安定水準とされるなかで、成長を加速するためのレバレッジが必要で、その中間ぐらいにいるべきと考えている。

―補助金がなくともビジネスが成り立つことを示していくと話したが、他社と何が違うのか
3事業ともそうだが、介護保険(の仕組み)では、例えば特別養護老人ホームは、主に社会福祉法人が主体として運営しており、東京都では一人に対して建築代金にイニシャルコスト1000万円の補助が出る。我々はそういったものがなくても現に運営している。徹底したオペレーション改善やコストコントロールに取り組んでいるからだ。

介護事業については「安くて良いものを」というコンセプトがあり、業界ではその価格帯は不可能とされていた水準でも利益率を高くできる。新規施設と既存施設の比率では、新規が非常に多く、今期はあまり利益を見込んでいない。だが、上場している他社と比較して相当に高い水準であるのは、稼働率を高くしてボリュームゾーンを狙いながら、コストコントロールによって利益率を高く保っていられる構造にしているためだ。

―コストコントロールとオペレーションは他社とどう違うのか
当社ではコストの55%ほどが人件費で、大きく人数と単価、サラリーの水準に分けられる。水準については3ヵ月ごとに改訂し、その地域の最高水準に収斂させている。一方、人数で人件費をコントロールしている。全ての事業所で看取りをできる質を保ちながら、少ない人数で非常に効率的にシフト組みをしている。

次に大きいのが不動産コスト。自社保有も賃貸もある。私自身2001年からヘルスケアアセットの投資家をしていたため、リートに関しては企画として多分日本で一番失敗しているが、当時その知見を求めていたJ-REITなどの設立者の方々とはその立ち上げ過程からの付き合いがあり、その他私募ファンドなどにもネットワークがある。また、物件はシンガポール・リート(S-REIT)にも入っているなど、当社のアセットを買う関係者がいるため、トータルでキャップレートが安くなっている。また、コンパクトな導線を意識した設計で総面積が小さくなるため、結果的に賃料など不動産コストが安くなる。

委託費として一番多いのは食事の提供だと思うが、我々は既に一定の規模があり、内製化していて、OSプラットフォームという食事の会社がある。そこでの給食事業で逸失利益がない。それらの積み重ねでコストをコントロールしている。

―不動産の保有形態による違いはあるのか
基本的にアセットライトで事業を進めようとしており、キャップレートを含めて、どの水準が妥当な不動産価格か分からないが、今の日本の状況では売ってしまったほうが良い。ある程度サステイナブルな賃料以外は払うつもりがなく、キャピタルゲインを出そうと思えばいくらでも出せるが、各事業が20~30年先まで持続可能にならないと事業とはいえないと考えている。そのような形で売却することを打ち出している。その点でいえば、リートであろうが、公募であろうが私募であろうが、S-REITも入っているが、国内外問わず良い条件のところに売却する。

もう一つ理由があり、建築期間中はキャップレートで1%ほどが乗るとされており、例えば、開発期間はある程度自社で保有しながら完成した段階で売却する。この業界では北九州市にウチヤマホールディングスがあり、彼らもよくキャピタルゲインを出していると思うが、我々としては不動産を蓄えたらいつでも売れるため、(利益の不足を補うなど)使い方はいろいろある。

―2021年3月期以降の施設の増設について
中期経営計画では目安として、介護施設を年間10棟、障害者支援事業では6事業所。認可保育園は来年度に1棟だが、再来年度は許認可が取れ、少なくとも数棟ができると思う。許認可の取得を考えると、1~2年先を見据えて対応しており、その蓋然性が高い。

―設置から1年経過した老健施設の入居率は
既存施設92%ほど。今期はたくさんオープンしたため、新規・既存を含めて85%で、1年以内には落ち付く。1ユニット9人が暮らすグループホームという制度があるが、そういった小規模なものでは3~4ヵ月ほどになる。

―新規施設の黒字化について
諸条件によるが、稼働率7~8割で損益分岐点を迎え、グループホームでは2~3ヵ月ほど。大きさによるが有料老人ホームは半年~10ヵ月ほどで黒字化する。我々が標準としているのは60室ほどだが、直近では大型化しており、相模原市にオープンした87床の施設などでは、もう少し時間が掛かる。いずれにせよ1年以内には、事業計画では9割とみており、実際にはもっと高い。

―可能な出店エリアは
創業時から6地域と決めており、それ以外はやらない。札幌エリアや仙台エリア、1都3県の関東エリア、名古屋エリア、大阪・京都・神戸など近畿エリア、福岡エリアで、名古屋と福岡にはいずれ進出する。我々は公金を扱う認識があるため、全国津々浦々を公金で整備するべきではないと考える。存続できる自治体で、コンパクトシティの発想に基づいた駅に近い場所で効率の良い都市設計に貢献したい。

―条件に当てはまる物件案件はあるのか
価格帯についてもそうだが、創業時には不可能と言われた。活気のある自治体かつ駅近で、我々が出せる不動産コストは限定的で、どこに行っても不可能と言われたが実現して今に至る。皆が言うほど選択肢のない世界ではなかった。もっと言うと月額利用料は地方で10~12万円前後で、それも不可能と言われた。

投資家時代に、介護オペレーターの社長たちに提案したところ、不可能と言われた。私が創業してから札幌市で駅から徒歩5分ほどの場所に2棟目を作り、その話をしたところ「地方都市だからできる」と言われた。関東に進出した時には「郊外だからできる」と言われた。今は江戸川区や大田区で運営しており、納得してもらった。誰に言ってもそんな立地・価格でできるはずがないと言われた。

―なぜそれができたのか
地道に探していくと出物はある。きちんとしたルートできちんと探すことが重要で、無理だと思う固定観念で探してこなかった、交渉してこなかっただけではないか。また、レイアウトを工夫していて、それだけで総面積が1~2割減ると、土地に対して出せる金額が上がる。そのようなコストを安くする。

―M&Aの候補はあるのか
創業時と(公開の)基準期を合わせて5年ほど動かないため、2~3年でM&Aを進め、ある時は2年間で10回買収した。当時は仕組み化しておらず、個人のパイプラインだけで出物があった。一度買うと情報が情報を呼び、案件が入ってくる。より仕組み化したかったため、2年前に大和証券PIパートナーズや北陸銀行、七十七銀行に出資してもらった。出資前の持株比率は98%で、10億円以上のキャッシュがあり、資金が欲しかったわけではなかった。M&Aのパイプラインを構築するためで、いつ現出するか分からないが年単位で網を張って、それだけの案件が出てきた。

今回、新型コロナウイルスの影響が金融セクターに波及すると考えられ、格付けが3ヵ月に一度変わるところ、次々回の格付け時に不良債権化すると見込まれる。特にスモールキャップのディストレストに強みがあり競合せず、しかも、債務カットではなく対象の売上高を上げられる。そのような再生請負人はほとんどおらず、一人でもできる。

―今後のM&Aの基準は
赤字を黒字に、黒字をさらに黒字にしてきたという自信があり、M&Aマニュアルを作ってきた。「介護は安くていいものを」の定義の一つとして駅近を考えている。立地だけは変えられないため、1750ほどの自治体のうち、どこであれば持続可能かということも含め、どの土地に進出するか決めている。人件費や不動産価格、人口動態など複合的な要因があり、駅にある程度近いことが重要。オペレーションを決めるための不動産レイアウトなども定性情報となる。一方、定量情報としては、ある程度の回収見込みを加味し、のれん代の側面を考慮に入れながら、スクリーニングしていく。

―現状10~15万円ほどの月額利用料を支払う層がボリュームゾーンだが、仮に年金受給額が下がる場合、長期的に事業へはどのような影響があるのか
まず、東京都内も含めてその価格帯でのサービス提供を考えており、地方都市ではボリュームゾーンは12~13万円ほどだ。札幌市では生活保護受給者の受給額が10~10万5000円ほどで、そこが一つの下限と捉えており、それでも成立するビジネスモデルを作ってきた。ほかの事業者よりも月額利用料の低下に対する耐性は強い。

―新型コロナウイルスの感染拡大の事業への影響は
保育事業は月極めであり影響はない。障害者事業は生活の場と就業支援があり、宿泊を伴う場については介護も同様だが、既存事業への影響は少ない。(他の)上場会社もそうだが、デイサービスでは、新型コロナがクラスターを形成しているため、壊滅的打撃を受けていると思う。我々は施設介護を中心としており、相対的には影響が少ないと考える。

また、施設事業について、既存事業所は3ヵ月~半年のスパンでは影響が限定的だが、新規事業所では入居者宅や病院訪問が制限されているため、その影響は若干ある可能性がある。

―津久井やまゆり園の事件についてどう考えるのか
我々は相模原市で最大の介護事業者で、同時に障害者事業も手掛ける立場にある。そのため、あの事件については地域も含めてさまざまなコミュニケーションを取った。そのなかで、障害を持つ人が精神的に不安定なことを皆が理解して進めている。我々は普段からのコミュニケーションが最も大事だと考えており、グループホームなど住む施設は、身近な親御さんではないが寮母さん(など施設担当者)とのコミュニケーションが重要だ。内情までは分からないが普段の人間関係が必要となる。

我々は常に行政とともに歩むため、いろいろな形で行政とコンタクトを取っている。不穏な動きがあれば、保護者も含め状況を報告するが、それがどこまでできていたか把握できていない状況にある。

いずれにせよ、コミュニケーションを進め、行政との関係強化や情報交換のなかで、あのような事は100%とは言わないまでも、かなり防ぎ得ると思う。また、我々はコンプライアンス体制を非常に重視している。

監査役監査があり内部監査があって、それとは別にコンプライアンス室による監査、加えて部門内監査、地域によっては行政OBにチェックしてもらう。複合的な取り組みで、本部の人間がいろいろな形でチェックすることも必要。横串の体制を重視している。

―世界進出について
コーポレートミッションとして持続可能な社会保障制度を作り、海外に輸出することが望みだが、そう簡単にはできず段階がある。ファーストステップは業務委託、次に投資をしない協業、マイナー出資という段階を踏もうと考えている。

もう一つ、我々の3事業は時間におけるポートフォリオを組んでいる。国によって発展段階が異なり、どの段階でも進出可能な事業ポートフォリオを組む前提条件で、業務委託の受託を受けることについても2~3年かかる。出資については3~4年ほどかかるのではないか。

―株主還元の方針は
基本的に希釈化させる必要はない。2年ほどで想定する自己資本比率に到達し、キャッシュはある程度溜まっていく。資金調達のための増資は必要ないと考えている。あるとすれば、戦略的提携、地域の有力企業との資本的な提携や大型買収がある。

2年前の経験はM&Aのパイプラインの確保に加え、LBOファイナンスの意味もあった。どのようにエクイティを希釈化させないようにするか。シニアのレバレッジはいくらでも付くため、LTVで50~60%ほどになったとして、一番重要なのはメザニン。どこから調達できるか、どれだけ選択肢を持つのかは重要で、そこが資本提携した一つの理由に当たる。

そうすると多分LTVで80~90%までデットファイナンスで付く。そのような仕組みができている。2年前に資本提携し出資してもらった時点では、すぐに何かすることはできなかった。各社に、この2年間、取締役会に毎回出席してもらって、どういった取り組みをしているか知ってもらったうえで、今日を迎えた。そのため、希釈化の必要性はさらに少なくなった。

付言すると、ロードショーで、投資家から希釈化は覚悟しているというコメントが寄せられたが、現時点でその意思は少ない。

また、やりたいことをするためにはある程度のシェアが必要で、この時点で70%を保有している。上場時に株式の3分の2を持つということは、多くの株主を軽視したいわけではない。どうしてもこのタイミングでこのようなことをしたいという力を持つためで、希釈化によって当初の目論見が崩れるため、おいそれと増資をしようとは考えていない。

配当や自社株買いについては、東証の審査上も一つの論点で、米国が配当性向40%、欧州では50%、北欧では70%ほどになるなか、成長のために配当をしばらくしないと言っていられる状態ではないと認識している。日本では30%が目安で、長期で成長するからと言って配当ゼロでいい世の中ではない。直近では配当可能原資がないため、それも含めて1~2年かかると思っている。

リビングプラットフォーム<7091>の情報はこちらでご覧いただけます。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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