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上場会見:フォーラムエンジニアリング<7088>の佐藤社長、エンジニア流動化に商機

9日、フォーラムエンジニアリング<7088>が東証1部に上場した。初値は公開価格の1310円を21.37%下回る1030円を付け、810円で引けた。同社は正社員の技術社員を、機械・電機系主要8業種の事業所に派遣。蓄積したデータを活かして、エンジニア人材の持つスキルに着目したAIダイレクトマッチングプラットフォーム「cognavi(コグナビ)」を開発・運用している。佐藤勉社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

コグナビは、企業と求職者(社員)のいずれもが気付いていなかったスキルのマッチングをもたらすと話す佐藤社長

コグナビは、企業と求職者(社員)のいずれもが気付いていなかったスキルのマッチングをもたらすと話す佐藤社長

―グローバルオファリングと株式売り出しをメインにした理由は
2年前に上場しようと考え、プレIPOロードショーで海外を訪ねた。クレディ・スイスの提案で香港のAIC(Asian Investment Conference)に参加した際に、当社のビジネスモデルに対する海外投資家の評価がかなり高かった。目論見書だけを読むと分かりにくいビジネスに見えるが、時代の転換点を迎えた新しいビジネスであるため、投資家の皆さんに分かってもらいたいという発想で訪問した。

翌年、米国でもプレIPOロードショーを開いた。米国の投資家はHRテックに興味があり、当社のビジネスモデルについて、閉鎖的な日本の人材市場のなかで非常に面白いという評判を得た。海外投資家に直接説明した方が分かりやすいビジネスモデルであると考え、グローバルオファリングを選択した。

キャッシュが潤沢にある会社であり、なぜ上場するのかという問いもあったが、一つにはオーナーが72歳を迎えた会社であり、そろそろリタイアモードだった背景がある。また、人材を扱うビジネスであるため、信用力を付けることが大切だと考え上場に至った。

―上場延期の考えはなかったか、またこのタイミングでの上場となった感想は
今日の時点では非常に厳しい状況での上場となった。タイミングとしては、人材ビジネスが2つの意味で転換点を迎えたと考えている。1つは、人口が減り始めた。もう1つは労働者派遣法が今年4月に大きく改正され、同一労働同一賃金の考え方が導入される。この2つで、マーケットが寡占化していくのではないか。類似の同業他社が全て上場しており、我々が一歩後れるのではないかという考えがあり、今期、株価に関係なく上場しようと決めた。

―初値が公開価格を下回ったが
2つのチームに分かれて、100件以上の海外投資家に説明し、非常に高い評価を得たが、値が付きにくいタイミングであると理解している。海外の投資家に我々のビジネスモデルを紹介し、一定の評価を得たことで上場する価値があったと捉えている。初値は厳しいが、このタイミングで出て良かった。

―新型コロナウイルス感染拡大の影響をどう捉えるか
従業員5000人弱を全国1400ヵ所に派遣しており、影響が出ると思った。顧客からは在宅勤務にできないかという話が数十件あり、承諾した。今のところ、稼働時間が下がったとか稼働人数が減った、(解約で)帰ってくる人が多くなったという影響は全くない。2020年3月期に限っては予定通りの業績を見込める。ただ、来期に関しては政府の発表の動向もあるが、今後どういう自粛ムードが続くかに関して少し影響が出ると考えている。今月末ぐらいまでは、どのような影響が出るか注意して見たい。

我々が派遣している社員は、(製造領域の)川上にいる設計者で男性がほとんどであるため、家庭の事情で辞めるケースがあまりない。また、郊外の工場に勤めていることから分散しており、新型コロナの影響を、東京のように受けているとは感じていない。派遣の依頼の減少や社員の引き揚げ依頼もない状況となっている。影響が出にくい職種と考えてもらえるとよい。

―2021年3月期について、リーマンショックの時のような業績の落ち込みはないのか
リーマンショックの時は、普通の職種が35%程度解約されたが、設計分野は20%程度で解約率は低かった。リーマンショック級の事態が生じれば話は別だが、今回の新型コロナでは、そこまでの影響は出ないと見ている。ただ、設計領域は、設計と品質管理、生産技術に分かれており、設計部隊が3割。品質管理も3割で、景気が悪くなり物が売れないと削減される傾向があるため影響を受ける可能性がある。生産技術は工場を動かす仕組みを作る人たちで、影響を受けない。

―新型コロナ問題のロードショーへの影響は
香港に関しては、野村証券と相談して、当初から訪問せず電話会議で対応した。A・Bグループに分かれて米国とアジア・欧州とに分かれて回ったが、シンガポールは入管が厳しく、その時点で電話会議に変更したケースが多かったと聞いている。日本国内でも電話会議が何件かあった。

細野恭史常務:香港は(デモなどの影響で)訪問を控えることになっていた。ローンチした2月5日頃に、新型コロナの影響が出始め、後半には機関投資家と1on1の電話会議を行った。

―コグナビを事業の柱にしていきたいというが、事業の構成比はどう変わるか
コグナビの仕組みを利用するのは、従来我々の派遣サービスで付き合っている企業と捉えており、顧客基盤はある。足りない人材を集めていかなければならないため、来年度、春からテレビCMを打ち一気に集めていく計画がある。どのぐらいの人がどのぐらいのスピードで集まるかによってシナリオが変わるが、利益率が高いビジネスであるため、その面での貢献を期待したい。現状は派遣事業の割合が非常に高いため、2~3年すればパーセンテージで目立つようになるような伸びが見えるようにしたい。

―「コグナビ タレントマネジメント」はHRテック系の他社と組む可能性があるのか
佐藤社長:カオナビやタレントパレットなどがあるが、(当社は)仕組みが大きく違い、スキルのみでタレントマネジメントを構築している。

竹内政博常務:HRテック系、特にタレントマネジメントは大きく2つに分けられると考えている。片方はタレントパレットやカオナビのような、社内にある人事関係データを集めてオンライン上で処理し、ランキングを作り、あるいは個人と売り上げの関係を見たりする。もう1つはサクセスファクターズのようなERP系の、財務経理などのKPI系の情報と人事情報を合わせてタレントを管理する。

我々のタレントマネジメントはそのいずれとも異なり、唯一スキルに着目し、人とスキルの関係を管理して組織のパフォーマンスを上げる。

佐藤社長:技術者については、スキル以外で当てはめていない。通常、タレントマネジメントは各部署の人材充足率を見るが、我々は部署のスキル充足率というデータを出す。その部署にどのようなスキルを保有している人がいるかという発想でデータを見て、足りないスキルの人を社内で探し部署間で異動する。

メーカーが興味を持ち、昨年11月にローンチ後、3社でテスト導入している。1社は5000人規模の半導体メーカーで、タレントパレットやカオナビを使っているが、(コグナビは)エンジニアの異動に役に立つという。この2ヵ月間、実験的に2000人規模で使ってもらっている。

また、5万人規模のエンジニアが在籍する大手家電メーカーからカスタマイズできないかという話があったが、カスタマイズすると開発経費が掛かる。我々はプラットフォーマーになろうと考えており、サービスを限定してSaaS上でたくさんの顧客に使ってもらうために、一旦この話は白紙とした。それだけ面白い仕組みであることは確かで、人口が減るなか少ない人員で会社を回すには良い仕組みと考えている。

―M&Aに対するスタンスについて
同業他社はM&Aを盛んにしているようだが、(人材ビジネスは)M&Aで大きくなる職種ではないと考えている。新しいビジネスモデル(エンジニアのマッチングサービス)を作ったため、限定された(領域の)人材が毎年10%ずつ流動化する機会を捉えれば、M&Aせずとも成長できる。

また、労働者派遣法の改正で中小企業が経営を継続しにくくなる。大手のビッグファイブといわれる設計派遣会社が約4割のシェアを占めているが、残り6割が自然に廃業するか、先方の企業に直接雇用を依頼する流れになると見ている。アルトナーという会社が1000人弱だが、より小規模となると数十~数百人規模で、M&A対象となる規模の会社があまりなく、効率的でないため考えていない。

―海外での事業展開については
非常にドメスティックなマーケットで、地域ごとに異なるのが人材ビジネスと捉えている。日本の人口が減るため世界に出ていく会社もあるようだが、世界では各国の1位以外の会社を買うことになる。その国の法律に基づき人材事業を行い、形態が全く違うため、業績が下がってもそれを上げる手段がない。日本のやり方が世界に通じるとは考えておらず、足し算的な海外M&Aを積極的に行う予定はない。足し算的に世界中に規模を広げてもあまり意味のないビジネスではないか。

我々のビジネスは、スキルだけで画定された領域の60万人のマーケットに対応しているが、次の展開を考えた時に、スキルマッチングが可能なIT企業を見ている。IT人材は90万人存在し、今年6~7月に「コグナビ IT転職」というサイトを作って進出しようと考えている。

海外についてはまだ計画はないが、会社を買うのではなく、プラットフォームのモデルが通用する地域があれば、どこかでやってみようという考えはある。ただ、日本でもプラットフォーム事業の成功は来期以降なので、それを見て考えたい。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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