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上場会見:HPCシステムズ(6597)の小野社長、研究開発をワンストップで支援

26日、HPCシステムズ(6597)が東証マザーズに上場した。初値は公開価格の1990円を6.03%下回る1870円を付け、2010円で引けた。科学技術計算用コンピュータ事業(HPC事業)と、産業用コンピュータ事業(CTO事業)を展開する。小野鉄平社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

応用範囲の広いHPCシミュレーションについて説明する小野社長

応用範囲の広いHPCシミュレーションについて説明する小野社長

―初値が公開価格を下回った。
成長しながら、株式市場に貢献できるように努めていきたい。

―事業内容について
HPC(ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)事業は、大学や公的研究機関、企業の最先端研究開発向けに、高性能なコンピュータのソリューションを提供する。主に化学をシミュレーションで行う計算化学のソフトウェアを開発・提供する。

システムに関わるサービスと、計算化学のアプリケーションに関するサービスを提供している。これらを組み合わせてクラウドで提供し、相乗効果を発揮している。

CTO事業は、産業機器に組み込まれる特殊コンピュータを顧客の要望する仕様に合わせて、開発・販売・量産する。工場やファクトリー・オートメーション、交通インフラなどに提供する。

―HPCシミュレーションとは
気象や温暖化、津波の予測、創薬、半導体、電池材料、自動車・航空機の構造解析など、従来の、理論と実験に加え、未来を予測する技術として研究・開発に欠かせない基盤ツールとなっている。分子や原子の世界から橋、建物の振動・構造など幅広くシミュレーションできる。

最近はAIやビッグデータ解析領域にも当社の技術が拡大している。アルゴリズム開発には高性能なコンピュータでの高速処理が要求され、HPC事業と親和性が高い。

自動車企業上位7社の研究開発費は3兆円を超えており、研究の加速とコスト削減の両立が求められるなかシミュレーションの利用がものすごい勢いで進んでいる。電池材料の分子シミュレーションなどを手掛けている。

―事業の特徴は
基礎・応用研究や、企業の最先端研究開発から、コンピュータの開発・量産までワンストップで提供する。特にHPC事業では計算化学と高性能コンピュータを組み合わせた垂直統合型のビジネスモデルでサービスを提供できる。こうした体制をとっている会社は世界でもなかなかない。

顧客ニーズに応えていくためには優秀な技術人員が必要で、HPC事業の技術者は修士・博士学位保持者が68%を占める。コンピュータサイエンスのみならず幅広い領域のエンジニアを抱えている。

独立社外取締役の古屋和彦氏は、富士フイルムホールディングスの元取締役で計算化学に20年ほど取り組んでいる。社外取締役のTau Leng氏はHPC事業に30年間従事している。いずれもアドバイザーとして携わっている。

―成長戦略は
大きく分けて二つある。一つはAIや5G、エッジコンピューティング。AIの市場規模は2030年までに10倍近くになる。なかでも当社が特に強いシステムインテグレーションが伸びるため、技術力と経験を活かしてAI領域の事業を拡大する。

来年から始まる5Gで出てくる大量のデータを我々のコンピュータで高速に処理する。現状ではさまざまなIoTなどのデータを、クラウドやデータセンターで直接処理することは、データの集中やトラフィックの問題などがあるため、基地局のなかや(ユーザーに近い)エッジの現場で処理する、データセンターと基地局の間に設けたマイクロセンターで中間処理するという点に当社のビジネスチャンスがある。システムインテグレーションと産業用コンピュータビジネスで培った技術力・提案力を武器に「EdgeHPC」領域のビジネスを積極展開する。

また、ローカル5Gという、あるエリア内に限定して5Gの通信環境を構築する流れも出てくる。例えば従来は有線でつないでいた工場のなかだけに5G環境を構築する。あるいは農場でも、今後は特定のエリアを区切ってドローンを飛ばすなど多様な機器の導入があり得る。当社の産業用コンピュータの強みを打ち出して事業拡大につなげたい。

二つめは化学とソフトウェアとクラウド。科学技術の研究開発の世界では実験が9割を占める。いまは実験が計算に置き換えられ、また計算と実験を組み合わせる動きが起きている。創薬や化粧品、高機能材料を重点領域として、当社の強みである計算化学を実験の世界に打ち出していくことで事業を拡大する。

クラウドサービスについては、パブリッククラウドの高性能化が進んでいる。企業からもパブリッククラウドを使って研究・開発を加速させるニーズがある。当社はサイエンスクラウドサービスを提供する。

―クラウドサービスの自動車向けシミュレーションはどんなことをするのか
例えば、車が走行するときの、風切り音を減らす形状を決めるために、コンピュータの仮想環境のなかで風の抵抗をシミュレーションし設計に活かす。当社が持っているコンピュータを自動車会社にリモートで利用してもらう。オープンソースのソフトウェアをシステム上で動くように設定して顧客に使ってもらう。流体計算の際に出る膨大なデータは、後の研究・開発工程で必要になるため、提供している。

―どの事業がよく伸びると考えているのか
5Gが始まると、エッジでの処理が増えてくるため、CTO事業が伸びてくると考える。クラウドサービスも非常にニーズが旺盛で、大手製造業からの依頼も増加しており、業績の伸びに寄与すると捉えている。

―HPC事業とCTO事業は融合していくのか
もともとHPC事業には研究・開発を行う顧客が多く、CTO事業は自分たちの製品に組み込むため、製造現場に近いユーザーが多い。AIやディープラーニングの登場で同じ顧客から両事業について引き合いがある。例えば、製造現場で製品の良品・不良品を画像で判定する場合、ディープラーニングのアルゴリズムを使う。研究部門が開発したアルゴリズムを現場で使う場合、研究と製造現場の考え方が少し異なるため、そこをつないでいくことに当社の強みがある。いずれは両事業がつながると思う。その動きはものすごい勢いで始まっている。

―業績について
年々、増収増益を達成している。(当初受注を)予定しておらず継続性のない大型のスポット案件を差し引いても、売り上げは2ケタで成長している。利益も順調に推移している。

―KPIは
下川健司取締役:売上高成長率と営業利益成長率を重要な経営指標と位置付けている。内部では計画を作っているが、公表はしていない。

―計算化学に、ブラックボックス化しやすいAIなどをどう活かすのか
小野社長:計算化学のシミュレーションでは、出てきた結果を機械学習させて、そこから出てきた結果を再度シミュレーションさせるループができるようになってきた。我々はAIや機械学習のアルゴリズムを開発しているが、オープンソースのものもあるため、それらを活用しながら計算化学のソフトに組み込むことを考えている。

―上場の目的は
今後、海外に事業を展開していくうえで、上場したことによる信用を活かしていく。

―海外展開について
クラウドサービスをベースにして欧米での展開を考えている。独自開発の計算化学やマテリアルインフォマティクスのソフトだけではなく、海外パートナーのソフトもクラウドサービスに実装していく。計算化学の世界では、ハードとソフトの提供だけでなくコンサルテーションも必要になり、クラウドと掛け合わせて展開したい。

CTO事業の海外での需要は、国内製造業の東南アジア進出によって増えている。顧客の大手製造業者もベトナムに工場を作りニーズが高まっており、当社も展開していきたい。

―エンジニアの人材戦略について
事業の成長とともに採用を進めたい。事業の特徴として、顧客が大学の研究室であり、そこに優秀な学生がたくさんいる。優秀な人を採用することはさほど難しくないと考えている。

―提携の考え方は
過去から行っており、今後も積極的に提携し、AIベンチャーとも組んでいく。より強固に推し進めていく。

―配当政策は
事業を成長させていきながら、得た資金は会社の成長に使っていく。今後の配当は未定。

HPCシステムズ(6597)の情報はこちらでご覧いただけます。

[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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