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上場会見:ステムリム(4599)の冨田会長、細胞治療の先を行く

9日、ステムリム(4599)が東証マザーズに上場した。初値は公開価格の1000円を7%下回る930円を付け、951円で引けた。様々な細胞に分化する「幹細胞」を、ケガや病気で傷ついた部位に集めて体の再生を促す「再生誘導医薬品」を研究する。冨田憲介会長と岡島正恒社長が東京証券取引所で上場会見を行った。

ステムリム 岡島社長(左)と冨田会長(右)

機関・個人投資家に活動を正確に伝えていくと話す岡島社長(左)と冨田会長(右)

―初値が公開価格を割り込んだ
岡島社長:公募割れは非常に残念で、身が引き締まる思いで受け止めている。患者や株主を含めたステークホルダーに、企業価値を高めていくことできっちりとした還元をしていきたい。仮条件が当初の目論見書価格レンジから外れ、その下限で決まった。

私が携わっていた経済産業省の「バイオベンチャーと機関投資家の対話促進研究会」の「伊藤レポート2.0(バイオメディカル)」にある通り、日本の赤字のバイオベンチャーに投資できる投資家層が少ないなかで、公開プロセスにおいて、機関投資家にある一定の金額を買ってもらわなくてはいけないということで、バイオベンチャーの価値を正当に評価できる機関投資家の数が少ない。存在したとしても中小型株のファンドマネージャーが多いため、大きな金額を買えないという事情も含めて、下限で決まった点については、公開プロセスを含めて厳しい状態にあったことは実感している。

―再生誘導医薬の考え方は
静脈に医薬品を投与することで、骨髄にSOS信号を出すことで「間葉系幹細胞」を血液中に出す。血流に乗り、損傷部位に集まることで人体を再生する。創業者の玉井克人教授が表皮水泡症の患者の皮膚に幹細胞が補充されるメカニズムを確認したことに始まる。幹細胞の送出に重要な働きをするHMGB1タンパクのうち、骨髄から幹細胞を導出する部分のみをペプチドとして化学合成することに成功した。2014年11月に塩野義製薬とライセンス契約を締結した。今年10月に投与後6ヵ月の観察期間が終了する。4月に脳梗塞を適応症とする第二相試験を始めた。

―細胞治療と何が違うか
他社の細胞治療では幹細胞を体外で培養する過程で、五つの能力のうち三つが失われるが、再生誘導医薬で骨髄から血中に出た幹細胞は五つの能力が全て残り、より大規模な組織損傷に対応できる。ぺプチドは体内で2~3分で分解され安全性も高い。品質管理の面では従来の医薬品と同様の品質管理が可能。コストについても自家移植では数百万~数千万円かかるところ、はるかに低いコストで細胞医薬品と同等以上の薬価も見込める。患者数が少ない領域でも利益を出せる。

―パイプラインについて
重要なアミノ酸の配列を把握しており、潰瘍性大腸炎やアトピー性皮膚炎への効果が認められるRIM3といったものもある。

―表皮水泡症を適応症とするパイプラインのスケジュールは
岡島社長:AMED(日本医療研究開発機構)の予算で行っている治験であり、第二相試験の結果については報告期限の2020年3月末までに発表する。2020年末の辺りで、商業化する塩野義製薬が承認申請まで持っていくと考える。

―心筋症の方のパイプラインのスケジュールは
冨田会長:豚の虚血性心筋症か拡張型心筋症で進めるのか検討している状態で、虚血性心筋症ではPMDA(医薬品医療機器総合機構)が豚の試験を要求する。豚の試験が始まって、早ければ秋頃までに結果が出るので、その時点で、どちらで行くのか決める。来年には医師主導治験か臨床で開始しようとしている。

―公開プロセスで証券会社と発行体いずれの意図が反映されたのか
冨田会長:我々と証券会社の意図は一致していた。売り出しを止めた理由は単純で、仮条件が決まった時に上限が1700円となったので、中期経営計画達成のために会社の資金が減ってしまったため、公募に振り替えた。

―冨田会長の売り出しのタイミングは
売り出しのタイミングについては何も考えていない。特に計画もしていない。

―上場延期の選択はなかったのか
岡島社長:価格を決めるに当たって延期も含め、いろいろなシナリオを検討し続行を決断した。これまでに上場を延期して上場した会社がどれだけあるか、バイオベンチャーは投資家がどのように評価するか、どういうことが起きると評価が変わるかというと、治験に入っているパイプラインがどれだけあるかということになる。DCF法を用いてキャッシュフローから割り引いて計算するだろうが、この先DCFに影響を与える要素が短期間に進むかという要素を考慮した。

上場は資金調達以外にも、人材採用も含め様々な分野でプラスに働く。先送りのメリットとデメリットを比較し、当初想定した株価で上場できなくとも、今上場すべきという結論を出した。

―2人がステムリムへ参画した理由といつまで経営に携わるのか
冨田会長:この会社について2006年の創業以前から相談を受けていた。自分は引退したが、是非力を貸してほしいと言われた。私の性分で断ると悪いことをしたような気分になるので、2013年から手伝うことになった。調達額が当初の想定額の3分の1になったため、もうひと踏ん張りしなければいけない。どうしたら中期経営計画の通りに進められるか、知恵を使って考え計画通りに進めていくための作業に入っていかなければいけない。調達した資金で知恵を使えば当初の計画通り達成できると思っている。

機関投資家のフィードバックは事業の可能性について否定しているものはなかった。素晴らしい可能性はあるが、現時点でDCFなどの公式に当てはめると、この結果となった。

岡島社長:前職のメディシノバは、もともとオンコセラピーサイエンスの上場の時に証券会社で担当した縁で付き合いがあった。メディシノバでの役割を終わったとは思っていないが、次のステップに進みたいと考えたことと、再生誘導医薬のポテンシャルに惚れ込んだ。日本発の医薬品に世界で評価されている物は少ないため、ステムリムに入ることを決断した。世界に展開できるところまでは歯を食いしばって頑張りたい。

―当初の時価総額の算定根拠は
主幹事のSMBC日興と2つのアプローチで計算して、潜在株を含めて1400~2200億円のレンジだった。DCFで30年のキャッシュフローを作って十分に説明が付くアプローチと、サンバイオ、ヘリオス、ペプチドリームとの比較してIPOディスカウントで削る部分とポテンシャルの部分で評価をした。

―機関投資家が一定割合を買うというのは、誰かに言われたのか
十数年前と最近のIPOの価格決定プロセスで大きく変わったと思う部分は、個人投資家と機関投資家でシェアを決めて、例えばその配分については、機関投資家に売らなければいけないというものだ。当時のIPOでは、機関投資家の意見を集計して仮条件が決まっていたが、今は実需として、オファリング額の3割を機関投資家に売らなければいけない。

機関投資家にそれだけの額を売るためには、その倍ぐらいの需要を積み上げなければいけない。そのような認識は我々にはなかった。証券会社が個社ごとにそのようなルールを定めており、明文化されたものではないと理解している。

―調達資金の減額による開発への影響は
当初のシナリオ通りにはいかないが、達成したい目標へはいろいろな道筋があり、やり方を工夫しながら同じゴールにたどり着こうというとことにはブレがない。銀行の発想は貸した資金を確実に返してもらうものであり、赤字のバイオベンチャーがデットファイナンスをするのは基本的に筋違いと考えている。現時点でエクイティファイナンスは考えていない。

冨田会長:施設を賃貸するなど工夫すれば開発スケジュールが遅れることはない。二百数十億円という資金があればいいなとは思ったが、危機意識を持って経営するのがベンチャー企業と考えており、走りながら考えるようにしていけば、来年に三つぐらい臨床研究を始められる。ベンチャーはゼロから立ち上げるの基本で借金が増えるわけではない。工夫すれば何とかなると考えている。

―会社のポテンシャルについて
細胞治療は過渡的なものと捉えている。医薬品は有効性と安全性と品質が重要。細胞治療で規格を設定して同じ物を作るのは不可能。物質は同じ品質の物を作ることができる。細胞治療には研究としての意義があるが、その先を行っているのがこの会社であり、全世界でそのようなアプローチをする会社はない。

 

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[キャピタルアイ・ニュース 鈴木 洋平]


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