日本証券業協会は17日、「社債券等の募集に係る需要情報及び販売先情報の提供に関する規則」を制定した。2021年1月1日に施行する。社債の募集・販売に際し、リテンション、POT方式に関わらず、需要情報と販売情報を発行体に対して主要投資家の実名を提供することが主な内容。
日証協は昨年12月に「社債等の発行手続に関するワーキング・グループ」を設置し、社債などの募集・引き受けを行う際の透明性向上策について検討してきた。新たな規則は17日に開催した自主規制会議で決議され、正式に決まった。需要情報と販売先情報を発行体に伝えるのは、正確な需要をもとに適正にプライシングし、その結果を検証可能なものとするため。発行体への情報提供を義務化することで重複需要の発生を防ぎ、価格透明性の高い運営を実現する。
販売前は、利率やスプレッドごとの顧客数・需要額を、販売後は顧客数と販売額を、いずれも主要投資家は実名で報告する。実名が必要となる投資家の範囲は、預金等取扱金融機関と金融商品取引業者、投資法人、保険会社、中央公的で、これらに該当しない者でも需要・販売額が10億円以上の投資家(外国法人含む)。適用される債券は主幹事方式で発行される社債などで、具体的には、事業法人債(新株予約権付社債を除く)、地方債、財投機関債、特定社債(生命保険の基金債など)、投資法人債、サムライ債、ソブリン債で、リテール債を除く。「主幹事方式」としているため、シ団引受(交渉・プレマーケティング)方式と入札方式は対象外。
サウンディングやヒアリングによって取得した情報は不確定情報として、「需要情報」に含めていない。具体的なレンジを提示するマーケティングで取得した情報でも投資家が「検討中」としている場合や投資家のコメントも含めない。
また、規則の考え方についてのQ&Aでは、報道機関への情報提供は、現状のとおり業態別のサマリーなどとし、投資家の実名が推知できるような情報は適切ではないとしているものの、実態と乖離した情報を伝達することや、意図的に一部の情報を隠匿して需要状況や販売結果について誤解を生じさせることがないように留意する必要があると言及している。
施行時期は2021年1月1日で、地方債は同4月1日、100億円以下の案件は同7月1日からとしている。
[キャピタルアイ・ニュース 菊地 健之]