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ラボバンクの田中在日代表に聞く、「2つの選択肢を持つ」

ラボバンクは1月25日、総額720億円の2本立てMREL債(ブックランナー:大和/みずほ/MUFG/野村/SMBC日興)を起債し、2015年5月の2本立てシニア債(当時Aa2:ムーディーズ/A+:S&P、総額1165億円、5年:0.380%・L+5bp/10年:0.814%・+14bp、同:メリル/みずほ/野村/SMBC日興)以来3年8ヵ月ぶりに円債市場への復帰を果たした。久々のディールについて、在日代表兼長期資金調達部長の田中一秀氏に振り返ってもらった。

年限 発行額 償還日 表面利率 L対比
5 635 24/1/31 0.600% +55bp
10 85 29/1/31 0.858% +65bp

※発行額:億円

―起債に至った経緯について
結局はユーロ円債になったが、円で起債することは昨年夏頃から本店の関係者と話し始めていた。ベーシススワップがだいぶ回復し、数字的に行けそうだとなり、久々に円債市場で調達しようという話で関係者の間でおおむね合意していた。ただ、ベーシスが完全には回復していなかったため、少し待っていた。8月に中間決算を発表し、1ヵ月間のブラックアウト期間があることから、マーケットを見始めたのは10月頃からだった。

そうしたところ、夏と状況が変わっておらず、数字的に実現するかも含めて少し真剣に考えてみようとなった。スワップ後のEuriborベースでどれぐらいになるか、どれぐらいの額ができるか、どういう投資家が動いているかを調査した。複数のサムライ債やユーロ円債が出ていて、マーケットがそれほど悪くないことが分かり、日系5社にアイディアなどを週2回ほど報告してもらうようお願いした。

11~12月になったら数字的に実現しそうだったが、マーケットが荒れ、株と金利、為替が乱高下した。形式については、サムライ債またはユーロ円債というオプションを準備していた。12月頃のマーケットを見て、準備期間などを考えたらサムライ債は厳しかった。このため、1月に入ってユーロ円債を選択した。

我々の資金ニーズが多くないことからすると、最大でも1000億円の需要を取り込めればいいと見ていた。以前のように2000億円規模を狙うわけではないため、プライスを重視していた。ユーロ円債にすることで購入しない投資家が出ても(ベンチマークサイズが)問題なくできると見ていた。形式が決まり、あとはタイミング。「いろいろな銘柄が登場する年初から第2週(1月15日の週)は避けたほうがいい」というのが各社の提案で、競合を避ける第3週(同21日の週)に起債することに決めた。3年8ヵ月ぶりの円債にフォーカスしてもらおうと考えた。

インタビューに応じる田中在日代表兼長期資金調達部長(2019年2月27日)

インタビューに応じる田中在日代表兼長期資金調達部長(2019年2月27日)

―ディールの感想について
実現して本当によかった。久々にディールをコントロールした。マーケティングをし、投資家もちゃんと出てきてくれた。スプレッドの交渉プロセスなどをいい緊張感の中でできた。

円債市場で初のMREL債となったものの、参加する投資家層については、(2015年5月までの)サムライ債から大きな変化は見られなかった。ユーロ円債だからといって買えないという投資家は限定的で、ディールへの影響は出なかった。

―非居住者円債市場で感じた変化は
一番大きいのはPOT方式を導入したこと。この方式がマーケットでは普通になっているが、以前では考えられないことだった。どの投資家がどれだけの額のオーダーを入れているのかが分かり、フェアな水準で起債するという意味でもプライシング面への好影響が見られた。

―サムライ債へのこだわりはなくなったのか
これについての考えは変わった。ボラティリティが高い状況で、すぐに発行できるのがユーロ円債のメリットであり、実際にそれを感じた。1月のディールはユーロ円債ということで、ドキュメンテーションのやり取りもなく簡素にできた。煩雑なことがなく楽だった。

ユーロ円債を選んだもう一つの理由は発行コストだった。受託銀行や弁護士費用がいらないし、サムライ債では銀行内の関係者、なかでもリーガル部門が多くの時間を費やす必要があるが、ユーロ円債ではそれがないためスムーズに発行できる。

ただ、今後については、マーケットが安定し、ある程度の額を取りにいくとなればサムライ債のほうが有用であり、この形式を検討する。引き続きサムライ債とユーロ円債という2つのオプションを持って検討する。実質的にユーロ円債と変わらないプロボンドで起債することはない。

―2019年のグローバルでの資金調達計画は
シニア債と非優先シニア(SNP)債、カバードボンドで2018年と同じぐらいの120億ユーロ程度になる。そのうちSNPは30~50億ユーロ。2月12日の週には、12億ユーロの大型MREL債を起債している。

2019年度の円債市場では、500~1000億円のシニア債を発行するイメージを持っている。ボリュームよりもプライスが大事になる。資金調達ニーズからすると、以前のように春と秋に1回ずつではなく、年度1回になりそうだ。今後のユーロ市場がBrexitで荒れてくるとなると、円債にフォーカスする可能性はある。ユーロ市場で起債できない状況で、日本では資金調達ができたケースがいくつもある。

1月は主幹事5社体制だったが、これは3年8ヵ月ぶりゆえのこと。この間情報提供をしてもらっており、お礼という意味合いもあった。次回以降は3社体制にしたい。

■TLAC/MREL債は減る
―今年度の非居住者円債市場をどう見ているか
今年度はいいマーケットだった。金融庁のTLAC/MREL債の時限措置があって発行ラッシュになった。ただ、(時限措置の終了によって)4月以降は予想しにくい。各投資家がどれぐらい買えるのか分からない。発行できるかは、TLAC/MREL債に対する需要が実際にどれだけあるかによるだろう。

一つ言えるのは、TLAC/MREL債がスローダウンすることは間違いない。リスクウェートの扱いがどうなるか不透明になることで、発行体の円債離れが起きるかもしれない。一方、これによってベーシスが回復して、従来のシニア債が発行できるという状況になることが考えられる。サムライ債・ユーロ円債の購入ニーズ自体はある。国内SBより利回り・スプレッドが乗って投資家にとって妙味があるからだ。

―サムライ債はユーロ円債に押されている
サムライ債市場のプレゼンスが下がったのは、使い勝手の問題だ。ドキュメンテーションなどによって機動的な起債ができないし、コストもかかる。サムライ債にするか、ユーロ円債にするかについては、我々がそうであるように、その時に合うプロダクトを各発行体が選ぶことになるだろう。

[聞き手:キャピタルアイ・ニュース 比後 樹宏]


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