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財務担当に聞く:高速道路機構、調達30兆円、長期・超長期・固定が基本

りんくうJCT(関西空港自動車道)

りんくうJCT(関西空港自動車道)

経理部資金課長 波多 勝氏

経理部資金課長
波多 勝氏

国債に先駆けて40年債の発行を始め、政府保証債、財投機関債で最大規模の発行体である日本高速道路保有・債務返済機構。経理部資金課長の波多勝氏と同課の榧野誠氏に話を聞いた。

■40年の先駆者

–資金調達の考え方について

日本道路公団民営化の議論の結果できた組織。高速道路を保有し、それを高速道路会社へ貸し付けるとともに、建設にかかった莫大な債務を早期かつ確実に返済して国民負担を軽減するのが使命。そのため、債務返済のために行う資金調達では、金利上昇のリスクを抑え、返済の確実性を高める観点から「長期・超長期・固定」を基本方針としている。

この方針のもとで、2005年10月の設立からこれまで総額30兆円を超える金額を調達している。その約8割が政府保証債で、約2割が財投機関債。調達年限の平均は2005年度に12.7年だったものが、2016年度には22.1年に伸びた。また、保有債務の平均残存年数は2005年度末の5.2年に対して2016年度は8.0年と、およそ10年をかけて3年程度伸ばしている。

キャプチャ1組織の立ち上げ後、直ちに資金調達の長期化に取り組んだことで、2兆円を超える規模だった年度があった一方、近年においては、2016年度が約1兆1000億円、2017年度が約1兆6000億円となるなど、各年度において必要な調達額が減っている。高速道路機構が始めた40年債のほか、超長期債のマーケットが広がってきたこともあって長期化をしやすくなっており、平均調達年限は今年度予算通りにいけば24年ぐらいまで伸びる見込み。

路線図また、年限の多様化に早くから取り組んでおり、設立して間もない2005年12月に日本国債に先駆け、財投機関債として40年債を発行した。その後、2016年10月には政保債でも同年限を発行している。国債は2年遅れた2007年11月が最初で、事業債は2016年2月にようやく事例が出てきた。我々が国債より先に発行できたのは、格付けが国債と同格であり、高速道路機構の事業スキームの安心性があった。40年後に誰が見ても高速道路事業というのは成り立っているだろうという信用力を持っていたからだと思う。

2010~2014年度に発行を中断しているが、これは当初は2053年に解散することになっていたため。その後の法律改正で2065年に延長されたことで、2015年度から復活している。

機構債の特色■利子一括は唯一の発行体

五色桜大橋(首都高速中央環状線)

五色桜大橋(首都高速中央環状線)

投資家層の拡大やコスト削減といった機構にとってメリットのある新たな手段があれば積極的に実現するという方針に基いて、昨年の1月には社債で初めて利子一括払い債を財投機関債で発行した。この際に興味を持つ地方公共団体や事業会社の発行体から問い合わせがあって説明したが、「自分たちの事業スキームでは発行は不可能」という結論になって、今のところ利子一括払い債は追随する発行体が存在しない。そうしたなか、高速道路機構はすでに7回で1500億円を発行して投資家も増えており、今の金利環境で適した商品であることを示している。ローンチ・スプレッドも2月の第192回債でタイト化に成功した。

利子一括債利子一括払い債は主務官庁(国土交通省)からも、前向きな評価を受けた。利子一括払い債の起債にあたっては、プレーン債と同時に実施することで、発行額の極大化をするように取り組んでいる。

大鳴門橋

大鳴門橋

–発行体のメリットはなにか

利払い資金の調達を、キャッシュフローに余裕がある年度に先延ばしにするというのが発行体にとってのメリット。債券を発行すると、通常の場合は 年2回の利子を支払うための資金を調達する必要が あるが、利子一括払い債は40年間利払いをせず、その分の資金調達が不要。

–財投機関債の主幹事方式を40年からほかの年限に広げる考えは

現行の法律においては、2065年に解散することになっており、いずれ40年債の発行ができなくなるタイミングがやってくる。そうなると、現行、他年限については、入札方式をとっているため、マーケットとの対話の窓口がなくなってしまう。機構としては、40年債に代わって30年債などを主幹事方式として、投資家との窓口を保つことも考えたい。

経理部資金課 榧野 誠氏

経理部資金課
榧野 誠氏

■IR144件

安定的な資金調達には投資家との会話が欠かせないと考えており、IRには積極的に取り組んでいる。2013年度には7件しか行っていなかったの が昨年度は、40年利子一括払い債を世の中に出したこともあり、144件。11月には一月で30件以上を訪問している。

–どんな先を訪問しているのか

8割が地方で2割が中央。中央では生命保険など、地方では地方公共団体や宗教法人も対象にしている。昨年度の実施で驚いたのは地公体の姿勢で、以前は10年ぐらいまでしか購入できないと言っていたのがそれでは利回りが低いので、超長期を発行する我々に声がかかるようになった。利回りを確保するために年限を伸ばして20年、30年、40年への関心が高く、ぜひ話を聞きたいという要望を多くもらっている。利子一括払い債を発行するときは、生保が主体になると思っていたが、IR活動をしていると学校法人や宗教法人が興味を示していた。地公体もそうだが、実際に訪問してみないと分からない投資家であり、IRの重要性を改めて認識した。

未償還残高推移道路公団民営化の際の激しい議論や当時の莫大な債務を知っている投資家は、その後の状況を心配される声も聞くが、発足当時の債務は37兆円を超えていたが、2016年度末には27兆円台まで減っており、10年かけて10兆円近く確実に返済しているという、こうした事実を見てもらうと、民 営化された道路会社と我々のような債務返済に特化した法人ができたことの効果が大きいと信頼してもらえる。

安楽川橋(新名神自動車道)

安楽川橋(新名神自動車道)

金利環境もあって、全てがIRのおかげではないが、平均調達年限は2013年度がフローで11.8年だったのが、2017年度は21年を超えている。同じ期間で平均調達金利は0.87%が0.60%に下がった。

政保債は、毎月10年と20年を発行し、四半期に30年を2回、同じく40年を1回ということなので、投資家が政保高速道路機構債を買いたいとなると毎月3本は必ず出ていることになる。5月17日の30年債で回号は350を数えた。ちなみに政保債の主要な発行体である預金保険機構で同時期の回号は215だった。財投機関債は5月23日の30年債が第200回となっている。政保債と財投機関債の両方を発行している団体は少なく、政保債での20年、30年、40年は我々のみ。財投機関債は最近まで高速道路機構が唯一の40年債の発行体だった。

■政策の一体性

総資産は40兆円を超える規模だが大宗は高速道路。つまり国民の財産を資産として保有している。負債は、高速道路資産を建設するための債券、借入金となっているし、出資金の7割強を日本国政府、3割弱を関連する地方公共団体から受けている。貸し付け料収入から支払い利息や減価償却費を差し引いた額がプラスであり、欠損金を抱えることなく利益剰余金が貯まるような構造になっている。

高速道路の仕組み高速道路事業・有料道路制度がうまく機能しており、債務を全額償還した後に高速道路は本来の道路管理者である国に引き継いで国民の財産となり無料開放される。我々が一時的に預かっている形で、これも国民の財産ということ。そのため、資金調達の約8割に政府保証が付いている。財務省の財政審財投分科会の「財政融資改革の総点検フォローアップ」(2015年12月)においても「当分の間、資金調達に占める政府保証の比率は、現状程度で推移することもやむを得ない」と認められている。

岸和田大橋(阪神高速4号湾岸線)

岸和田大橋(阪神高速4号湾岸線)

残る2割の財投機関債は、事業や財務の透明性などで評価を受けながら発行している。R&Iで日本国債と同格のダブルAプラスは融資系のなかでも政府系金融機関しか認められていないが、高速道路機構は事業系でありながら唯一国債と同格を付与されている。

zaito■財政融資1兆5000億円

2018年度の財政投融資計画で、1兆5000億円の財政融資資金が入る。超長期(40年など)で固定の資金が入ることで金利負担が軽減して債務引受余力が増え、その分道路会社の投資余力が増大する。これによって、大都市圏の環状道路の整備や高速道路の耐震強化などが加速すると期待されている。40年債の発行を頑張っているといっても財投機関債で合わせて年度に3000億円ぐらいの規模。対して、財政投融資が単年度に1兆5000億円も入ってくる。40年物の資金調達をしないといけないリスクも減る。

アクアブリッジ(東京アクアライン 浮島JCT~木更津金田IC)

アクアブリッジ(東京アクアライン 浮島JCT~木更津金田IC)

[聞き手:キャピタルアイ・ニュース 菊地 健之]


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