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広島高速道路、発行増に向けスムーズ走行

 

ツーショット広島

右:総務部 部長 森永 勝 氏 /左:同 専門員 福永 淳一 氏

総額180億円の公社債発行を2月上旬に予定している広島高速道路公社。2017年6月に設立20年を迎えた。今年度から既発債の償還が始まり、第1回債(10年、100億円)の満期を2月28日に控えている。リファイナンス分を上乗せする必要が生じるため、今後は過去10年の起債に比べて公社債での調達額が100億円前後増える見通し。安定的な消化のため、投資家層の拡大に向けて投資家訪問を行い、クレジットの浸透と公社債投資の啓蒙に注力している。総務部の森永勝部長と専門員の福永淳一氏に取り組みを聞いた。

–広島高速道路公社について
地方道路公社法に基づいて、広島県と広島市が50%ずつ出資する形で1997年6月に設立。広島都市圏の交通体系の根幹となるネットワークを形成する指定都市高速道路の新設・改築・維持管理を行う。4路線・全長25kmを共用しており、駅北~中山間を結ぶ高速5号線(東部線・4km)が現在開通工事を行っている。

広島高速道路公社

広島広域都市圏の基幹道路を整備することで地域経済の発展に貢献しており、広島・四国地方最大の産業拠点を支える事業と言える。広島市を中心とした経済・生活面でのつながりが強い「広島広域都市圏」は、広島県三原市から山口県岩国市の地域を指し、産業団地や企業・研究機関などが集まっている。同圏における製品出荷額は約10兆3000億円と、中国・四国地方だけでなく九州地方まで含めてもトップ。

平和記念公園や厳島神社、「戦艦大和」の資料を展示した大和ミュージアムといった観光施設も併せ持つ。広島県を訪れる観光客の交通手段の6割が自動車。広島高速道路を利用すれば観光地間の移動時間を短縮でき、こうした面でも貢献している。また、直下型の地震などに対して、損傷を限定的にとどめ、速やかに機能を回復する性能を備えていることも特徴。既存の開通区間は震災発生時の緊急活動に活用する「第一次緊急輸送道路」に指定されている。

高速1号線(広島東IC付近)

高速1号線(広島東IC付近)

 

建設事業については、整備計画における事業費ベースで約93%、共用延長ベースでは約86%の事業が進捗。既に費用の回収段階に入っている。利用者数は緩やかな右肩上がりで伸び、広島高速3号線Ⅲ期の共用が2014年3月に始まったことを追い風に、2017年度末までに累計通行台数は3億台を達成する見込み。

金賞

開通20周年記念フォトコンテスト 金賞「夏本番Hiroshima」

 

 

 

–道路公社の位置付け
地方公共団体の出資を受けて設立した指定都市高速道路公社であり、全国では広島、名古屋、福岡北九州の3公社が存在する。事業計画や資金計画は地方道路公社法に基づいて認可・承認が行われ、整備計画や料金・料金徴収期間については道路整備特別措置法によって認可される。

銀賞仁保ジャンクション

同 銀賞「仁保ジャンクション」

 

 

 

 

 

 

 

 

–現行整備計画(2016年12月国土交通大臣許可)について
総延長29kmを総事業費4000億円かけて2020年度末までに建設する計画。1997年に整備を開始し、2016年度末までに執行した事業費は約3728億円(93%)。総事業費4000億円は、広島県・広島市による出資金が870億円(22%)で、国からの無利子貸付金が1270億円(32%)、県や市が地方債で調達した資金を貸し付ける特別転貸債が1130億円(28%)、銀行などからの民間等借入金が730億円(18%)という内訳になっている。

–建設中の広島高速5号線について
温品ジャンクションと広島駅北口をつなぐ全長4kmが対象区間。1.8kmのトンネル工事も含み、2020年度末の完成予定。総工費は83億円。定時制、高速性を確保するとともに、渋滞を解消するのが狙い。

–料金収入について
2017年4~9月の実績は、日平均通行台数が7万1219台(前年同期+3.6%)、日平均料金収入が3280万7000円(同+4.5%)。広島高速2号線と3号線Ⅱ期が2010年4月に、広島高速3号線Ⅲ期が2014年3月にそれぞれ開通し、新規路線の供用開始のタイミングに通行台数、料金収入ともに大きく増加している。

整備計画

通行台数

■財務状況
–公社の貸借対照表と損益計算書にみる償還準備金積み立て方式の仕組みについて
出資金と借入金で道路建設を行い、料金収入で借入金等を返済していく、有料道路制度を採用。この制度では将来の無料開放に備えるため、減価償却費を計上する代わりに料金収入から管理費、利息等の費用を差し引いた額を、償還準備金として積み立てる会計処理としている。

貸借対照表の勘定科目は、資産の部が事業費を投入した道路資産、負債の部が借入金等と償還準備金で構成されている(表参照)。損益計算書では費用の部が管理費と支払金利、利益に該当する償還準備金繰入で構成され、収益の部は料金収入となっている。貸借対照表上で、資産の部に計上される「道路資産」と負債の部に計上される「償還準備金」とを対比することで、借入金の償還状況を分かりやすく示している。償還準備金が積み上がるにつれ、借入金等の比率は圧縮されていき、最終的に道路資産と償還準備金の累積が同額となった後に、道路資産の引き渡しが行われる。償還準備積立金

2016年事業年度は、収益が約117億円、管理費用や支払利息の総額が約55億円。利益に当たる償還準備金繰入が約61億円で、前年同期比5億円程度増えた。2016年度末時点での償還準備金の累計額は551億6700万円で、道路資産の18%に相当する。

償還率の推移をみると、新規路線の開通年度には道路資産の額が増えるため、一時的に落ち込む。直近では2010年度がそうで、前年度が16%だったのに対してこの年は9.6%。ただ、これ以降は順調に伸ばしている。

–2016年度末の未償還金残高は
足元の未償還金残高は3227億円で、内容は公的資金が2059億円、民間資金が1168億円。民間資金は市中銀行等借入金(53億円)と地方公共団体金融機構からの借入金(55億円)、市場公募債(1060億円)で構成されている。支払利息や管理費といった支出は料金収入で賄い、このほかに元金償還金を捻出するにあたっての不足分を市場公募債で手当てする。未償還資金

調達資金

■地方債と同じリスクウェート0%
広島高速道路が発行する公社債は、広島県・広島市による債務保証が付き、BIS規制上のリスクウェートはゼロ%。未償還金残高のうち公的資金が64%、民間資金は36%(未償還金残高のうち、公募債残高は33%)と、公的の割合が大きい。

広島高速道路債への投資意義は二つで、地域経済支援と地域間ネットワークの構築というもので行政支援の性質が強い。指定都市高速道路の整備によって、移動距離や時間の短縮、渋滞の軽減効果を通じて、広島都市圏における人や物の流れを活発化させ、地域産業の競争力に貢献する。また、(空港や港湾などに)交通の拠点を結んで高速道路に連結させ、アクセスの向上を図っている。

設立団体である広島県・広島市がそれぞれ元金と利息の2分の1の額を分担して保証する。期限を過ぎても元金・利息が支払われない場合、広島県・広島市が公社に代わって弁済を行う。「債務保証」であるため、債務者が履行しなかった債務のすべてに対して履行業務を負う。これらの点で「損失補償」付きの債券と異なる。損失補償は債務者が履行しなかった債務の一部でも可能で、債務不履行後、損失額が確定してからの補償になるためタイムラグが発生する。こちらのリスクウェートは20%。

–公社債発行の増加に向けた取り組みについて
今年度は10年債・80億円と20年債・100億円を2月上旬頃に起債予定。第1回債(100億円)の償還が今年度から始まり、今後も続く。元金償還に充当するために100億円前後だった従来の発行規模に、既発債の償還分がプラスされる。直近の償還のピークは2019年度で270億円を予定している。

円滑な調達に向けた取り組みを3年ほど前から検討しており、昨年2月の前回債(総額110億円、主幹事:三菱UFJMS/みずほ/大和)では、基軸の10年債(60億円、0.255%、国債+16.5bp/カーブ+16bp)と、初めての20年債(50億円、0.763%、+6.5bp/同+5.5bp)を選択して、試験的に2本立てとした。償還額の平準化のためには中期債よりも超長期債が適しており、なおかつ高速5号線を含めた最終的な引き渡しが完了する2049年度までに償還を迎える長さという観点から20年債とした。実績を作ったうえで、今年度も同じ年限の2本立て債を起債する。このために年間で27件の投資家を訪問して備えた。

–先行した20年物道路公社債(名古屋高速道路公社、2017年12月6日、国債+4.5bp/カーブ+3.5bp、主幹事:SMBC日興/野村/三菱UFJMS)では地方債フラットの国債カーブ+3.5bpを実現した。広島高速道路債ではどうなるか。

これまでは地方債プラスアルファがあったが、発行体としてはできる限りコストは抑えたい。一方で、地方債プラスアルファという点で投資家に訴求していた部分もある。リスクウェートはゼロ%であり、地方債と同等のプライシングには整合性があるものの、全体の発行量が少ないため、地方債対比で流動性が低いという問題点が投資家から指摘されている。

–IRでの投資家の声は
格付けについて、保証体のうち、広島県(A1:ムーディーズ)は格付けを取得しているが、広島市のほうで取得がないことを指摘する声が投資家の一部である。ただ、格付けを取っていなくても、広島市がこれまで円滑に地方債発行を行っていることを説明している。また、起債スケジュールを2月に固定しているが、このタイミングだと年度内の資金を使い切ってしまう投資家が存在する。時期を変えてほしいとの要望があるものの、元金償還が3月であり、これに合わせた直近の起債が効率的であるため、変更しにくい。

逆さ空橋

開通20周年記念フォトコンテスト 銀賞「逆さ空橋」

地方公社債というカテゴリーへの投資が規定で定められていないという投資家層に対しては、購入できるよう、IRなどを通して規定の変更を働きかけている。そのうえで、安全性の説明を行い、クレジットの理解浸透に努めている。

[聞き手:キャピタルアイ・ニュース 足立 祥子]


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