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財務担当に聞く:新関西国際空港、コンセッション経て債務削減に邁進

12月上旬に総額320億円の財投機関債を予定している新関西国際空港。2016年4月にコンセッションを終えてから初の起債となる。総務部経理グループ・グループリーダーの是川修治氏、サブリーダーの北村英一氏、同紀伊義文氏に話を聞いた。

新関西国際空港総務部経理グループ グループリーダー是川修治氏

新関西国際空港総務部経理グループ
グループリーダー是川修治氏

 

同総務部経理グループ サブリーダー北村英一氏

同総務部経理グループ
サブリーダー北村英一氏

同総務部経理グループ サブリーダー紀伊義文氏

同総務部経理グループ
サブリーダー紀伊義文氏

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■複数を管理する唯一の空港
–成り立ちについて
根拠法である「関西国際空港及び大阪国際空港の一体的かつ効率的な設置及び管理に関する法律」、通称・関空伊丹経営統合法に基づいて、国や地元が出資していた関西国際空港と国が直接管理していた大阪国際空港(伊丹空港)を2012年4月1日に統合して発足した。関空は開港時から負債が多く、政府から補給金が出ていた時代もあった。これを解消するため、(収支が)優良な伊丹空港と統合したうえで負債を返していくことになった。(債務返済のための)柱の二つ目はコンセッションで、統合後の準備期間を経て取り組んだ。

新関空は、国内では唯一の複数空港を管理する株式会社。政府との関係については、事業計画や債券発行、長期借入金に関して認可が必要で、政府保証債も発行しており、強い一体性がある。国100%出資会社で、財投機関債は一般担保付き、複数機関から格付け(AA-:R&I/AA:JCR/A1:ムーディーズ)を取得している。

大阪の北側に位置する伊丹空港は都心部からかなり近く、梅田から阪急電鉄とモノレールを乗り継いで30分程度。関空は梅田から1時間、難波からは40分程度の所要時間となっている。

■世界中どこへでも行ける滑走路
関空は4000メートル級の複数の滑走路を有し、完全24時間運用の空港。滑走路の距離が4000メートルあると世界中どこへでも飛んで行ける。沖合から5キロという海上空港のため、騒音に配慮する必要がない。長距離滑走路が2本あるとメンテナンスなども気にしないで運用できるメリットもあり、ここまで揃えて初めて24時間運用と言える。第2ターミナル右側部分は供用していないものの、ここは既に埋め立てている。今後拡張の計画などが持ち上がればこれを活用する。

伊丹は都市部に近い立地で、周囲が市街地。騒音問題にはきめ細かく対応しなければならないことから、運用時間は14時間に限定され、発着回数は1日370回が上限に設定されている。これ以上伸ばせない一方で、目一杯運用しているため、運用は安定している。

2016年度の関空の発着回数は17.8万回と過去最高。外国人旅客は2014年度から2015年度にかけて前年比157%増(1100万人)と伸び始めており、2016年度はさらに同113%増(1243万人)と過去最高を記録した。2017年度についても増える見込み。伊丹については発着枠が上限であり、横ばい。二つの空港を合わせた2016年度の旅客数は4082万人だった。キャプチャキャプチャ.LCC

■LCCが4割
伸びている背景にはローコストキャリア(LCC)の躍進がある。全体の国際線旅客便数の4割をLCCが占めている。一般的なフルサービスキャリアも便数が増えており、バランス良く伸びて行けばよい。

外国人の出入国者数のシェアでは、近距離の東アジアが成田国際空港よりも大きい。中国と韓国は日本国内全体でそれぞれ1000万人超となっており、そのうち中国人観光客が関空を利用する割合は30.1%。中国の人口規模からすると今後も伸びしろがあると考えられる。

東アジアからの出入国が多い理由は、首都圏の空港と比較して飛行時間が1時間くらい短いため。ソウルからだと国内線感覚で来ることができる。距離が短いため航空運賃も安くなる。大阪は今、外国人観光客が多く、なんば・道頓堀や京都・奈良の神社仏閣、ユニバーサルスタジオジャパンが人気スポット。団体旅行よりも、ちょっと来てちょっと帰るという個人客が友人同士で訪れているケースが多い。

訪日外国人旅行者数の政府目標は2020年に4000万人、2030年は6000万人。2016年は2403万人を超え、石井啓一国土交通大臣が2017年の訪日外国人が過去最高になったと4日に発表したばかりだ。

シェアアジア旅客

 

 

 

 

 

 

■国内初の空港コンセッション
–実施の背景について
関空は設立の際の埋立工事に1兆円を超える費用が掛かっている。このため着陸料を高く設定せざるを得ず、結果として競争力が低下した。この反省から伊丹との経営統合を行い、民間の知恵を活用するという観点に立って2016年4月から44年間の運営権を譲渡するコンセッション方式を採用した。オリックスとフランスの空港運営会社ヴァンシエアポートが中心となって設立した関西エアポートへ運営権を売却。我々はこの売却・運営権対価をもらい、既存債務を返済する。リスクが多い空港運営事業を運営権者へと移転し、新関空は安定的なスキームに変わっている。資産・用地や滑走路、ターミナルなどは引き続き保有し、運営権者による施設の運営が適切に行われているかのモニタリングを実施する。

償還原資の安定化が命題だった。国際情勢や景気によって需要が変動し、事業収入が減ることがある。設備投資はその年によってばらつきがあり、結果として償還原資も安定しない。波があったものを改善するための運営権売却だった。運営権の対価として定額を受け取り、そこから諸経費や利息、税金の支払いを行う。残りが償還原資になるのだが、金額が一定になるメリットがあり、これをもとに44年に渡って負債を返済していく。

IRのなかで投資家から一番質問が多かったのはコンセッション後についてだった。最後は「無借金の会社が残るだけでは」との見方があるようだ。設備投資も関西エアポートが行うため、施設が今の状態に保たれたまま、借金のみが減っていくので、新関空は上手くいけばお金だけが残る。コンセッション期間の44年が過ぎたあとについて、さらにコンセッション方式を続けるのか、再び運営権を取り戻すのかは決まっていない。かなり先になるうえ、何が起こるか分からないので未定になっている。

–コンセッション後の現金収支について
年度ごとの現金収支について、収入は運営権対価の372億円に利益が出ればその分のプラスアルファを得る。また空港までのアクセスとして鉄道事業も手掛けており、線路の一部をJR西日本と南海電気鉄道に貸し付けている。この収入が40数億円ある。支出に関しては、コンセッションに当たって差し入れられた履行保証金(1750億円)の返還分27億円の支払いがある。この制度設計を行った当時は足元のように業績が好調なことを想定していなかったので、履行保証金を早く返還して、経営を安定させるために当初5年は毎年度139億円を支払うことになっている。このほかに人件費や法人税などを差し引いた分が債務返済・利払財源になる。これが200~300億円程度で、利払いが今は100億円程度。これは将来的に少なくなっていくため、その分償還原資が増えていく仕組み。

■モニタリングを担当
新関空の総務部、審議役(モニタリング担当)、技術・安全部が会社として最後まで残る部分。国やJRなど外部からの出向者を中心に構成されており、計30人程度。コンセッション前に400数十人いた元の社員は、コンセッション後に関西エアポートへ転籍になっている。関西エアポートから5年間に限って受託しているのは伊丹空港施設オペレーション部と伊丹空港環境・地域振興部、関西空港運用部、受託業務担当統括部長の特定業務。こちらは140人程度で構成されている。

事業リスクを移転し、モニタリングを通じて空港運営状況を的確に把握している。国100%出資という現形態のまま存続し、国との距離感は変わらない。国の人事異動の一環で職員が派遣されるなど、以前よりも国寄りになっている面もある。

–2016年度実績について
2016年度の営業収益は運営権対価、固定資産税等の負担金の見合い分を関西エアポートからもらっている分が621億円、営業費用は418億円で半分の209億円は減価償却費に相当。営業利益は203億円、経常利益は120億円。法人税等の調整、土地保有会社の株主利益を差し引いて、純利益は3億円だった。

連結貸借対照表を見ると、資産は持ち続けるので固定資産は大きく変動しない。流動資産は2015年度末に2507億円だったものが2016年度末に744億円に減少。これはコンセッション前の履行保証金で積み上がった分を使って繰り上げ償還したため。これに伴って借入金や既発債といった固定負債は1兆1486億円から9509億円に圧縮している。

コンセッション効果

 

 

 

 

 

 

■債務残高は1兆円割れに
1994年の開港後、1995年の債務残高は1兆762億円と、既に1兆円を超えていた。ピークは2004年度末の1兆4525億円で、普通の会社では考えられない規模だった。以降は順調に返済が進み、2016年度は9305億円と1兆円を切っている。支払利息は当初500億円を超えており、債務残高のピーク時でも200億円以上利息を支払いながら返してきた。2016年度は96億円と100億円を割り込んでおり、改善が進んでいる。

有利子債務残高については、ピークは2003年度末の1兆2494億円だったが2016年度末は7339億円に減少。有利子借入に関しては履行保証金を利用して繰り上げ償還したため、2016年度は261億円と、2015年度末の1054億円から大きく減っている。

–償還計画について
政保債は、一部を政保債で借り換えられるようになっている。それ以外の部分はその年度の収入で足りない分は借り換えをしていく。44年をかけて最後まで返済していく流れになっている。借りた時のタイミングなどによって年度ごとの償還額にばらつきがある。200~300億円ぐらいに均していくのが望ましい。借り換えをしなくて済むよう、毎年入ってくる収入でその年の借金を完済できるのが一番良い。10年では難しいが20年後ぐらいには毎年の借り換えの年限を調整して、最終的に20~30年後には債券を発行しないでもやっていければいいと考えている。

債務残高の推移有利子債務残高の推移

 

 

 

 

 

 

 

■2017年度の資金調達計画
10年の政保債を今年8月に発行(320億円)。財投機関債は2年と20年、30年の3本立て債で総額320億円を12月頃に起債する予定。政保債と財投機関債の償還予定が1300億円あるのだが、履行保証のキャッシュを使って償還できる分があるので、この残りを債券の発行で賄う。それで政保債と財投機関債の総額が600億円規模になっている。

 

既存債務の償還予定–年限選択の背景は
30年債は初めて。この年限を選択した理由の一つは、足元が低金利であるため。加えて、コンセッションが44年と長いので、これに合わせて長期で今のうちに固定する狙いがある。初めてゆえ、いきなり大きな規模はできないので、長く発行してきた実績のある20年債も選択。20年/30年債でどこまで取れるか分からないため、2年債も入れた。2019年度の償還が少額であり、償還バランスも考慮した選択。毎年継続して起債するほうが良いという判断もあり、この3年限とした。2018年度はかなりの償還がある。政保債の分は政保債で一部を調達できるが、今回の20年/30年の財投機関債の起債が来年度にもつながれば良いと考えている。

IRでは生保などを訪問した。毎年起債をしている発行体はクレジット審査が終わっているものの、新関空は2016年度に起債していないうえに30年債は初めてで、投資家にとって未知数の部分もある。一方、それまでの実績として、仕上がりのスプレッドが周辺銘柄対比でプラスアルファが乗るという観点で、前向きに検討してもらえるという話を聞いている。

国際情勢の悪化や疫病の流行などで、関西エアポートの経営が上手くいかなくなったときのリスクを懸念する声もあった。母体のオリックスの経営について、同様の指摘も。ただ、何かあった場合に備えてモニタリングを行っているため、改善に向けて手を打つし、アドバイスや指示も行う。それでもコンセッション契約を解除して、新関空に運営権を戻した場合でも債務も利払いも減っており、償還原資は十分確保できる。従前とは状況が異なっているという点で投資家には安心感を持ってもらえる。

補給金の代わりに伊丹の収益を得られるようになっており、これが統合前で100億円近くあった。伊丹はいわば恒久的な補給金のようなイメージ。利払いもピーク時からは半分以下に減少している。足元のような好調が続くかは別としても、少々のことで屋台骨は揺らがない。1兆円超の債務があった時代ですら、利払いが滞ることはなかったし、今は当時よりも身軽になっている。

LCCについては、最初に二期島に(ANAホールディングス傘下の)ピーチ専用の国際・国内線のターミナルを作ったことが一番の取っ掛かりになった。これが上手くいった結果、今では数えきれないほどのLCCが就航している。特に東アジアの旅客を取り込めている点は大きい。関西エアポートからは年度あたりの運営権対価372億円に加えて、2016年度は収益連動分として10億円弱上乗せして支払ってもらった。経営戦略は関西エアポートが舵を取るため、新関空はそれを尊重していくスタンスとしている。

–財投機関債の発行見通しについて
債務返済のための債券発行であり、キャッシュで返せる上限ぎりぎりを狙って足りない分を財投機関債の発行で賄うスタンス。昨年度は既発の償還資金の手当てに履行保証金を使ったため、起債しなかったが、今後は市場へ顔を出していくため継続的にやりたい。よくファンを作るというが、投資家にしたら毎年同じ時期に出てくるほうが買いやすいのは理解できる。

ほかの財投機関債を見ると、独立行政法人は国に近いと意識されるが、株式会社は離れているというイメージを持たれる。従前は事業債に近い形で認識されていたかもしれないが、コンセッションによって事業運営権を切り離し、再スタートを切ったことがどう評価されるか、楽しみにしている。半面、事業を持たず、負債の返済が主体である発行体は位置付けが難しいことも理解しており、どのような分類や扱いとなるか心配な面もある。起債は試行錯誤を重ねながらになるだろう。

新関西国際空港(出典:キャピタル・アイ)

新関西国際空港(出典:キャピタル・アイ)

図表等の出典:新関西国際空港IR資料(2017年11月)

[キャピタルアイ・ニュース 足立 祥子]


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